お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

妹と弟と勉強会






 「ねーりょうちゃん、春香ちゃん、助けて〜」

 お買い物を終えて家に帰って早々にまゆに泣きつかれた。

 「まゆちゃん、どうしたの?」
 「春ちゃんとりょうた君がいじめてくるの。勉強ハラスメントだよ。酷いよ」
 「ちょっ、人聞き悪いこと言わないでよ。まゆちゃんが私とりょうたが勉強してたら、お姉ちゃんが教えてあげる!って言ってきたからわからないこと聞いただけだよね?」

 玄関で僕と春香に泣きついてきたまゆに続いて春が玄関にやってきて僕と春香に事情を説明する。言っちゃいけないけど、まゆ、勉強はあまりあれだからなぁ…と、状況を理解した僕と春香はお買い物で買ってきたものをお母さんに渡して春の部屋に入る。

 「ね!りょうちゃん、春香ちゃん、酷いよね!?まゆにこんなに難しい問題なんて解けるわけないじゃん!」

 春の部屋に入り、テーブルに置かれた数学の参考書を指差してまゆが文句を言う。たしかに、かなり複雑ですごく難しそうだった。これ、中学生の問題なのか?ていうか、春でもわからない問題あるんだ。春、頭だけは無駄にいいし……

 「いやいや、まゆちゃんがなんでも聞いていいって言ったんじゃん」
 「たしかに言ったよ!言ったけど、少しは手加減してよ!まゆは高校時代白チャートですら理解に苦しんだんだよ!中学生の問題くらい分かる。って思ってだけどこんな難しいの無理だから!!」

 白かぁ…なかなかだなぁ……1番優しい参考書が白で普通が黄色、その上に赤とか青とかあるんだっけ?白チャートで理解に苦しむのに見栄張って勉強教えてあげる!とか言うからそうなるんだよ。と思いながら落ち込んだ表情をしているまゆの頭を撫でてあげるとすぐに笑顔になって抱きついてきた。なんか、子犬みたいでかわいい。

 「どこがわからないの?私が教えてあげるよ」
 「いや、春香ちゃんは…」
 「お姉ちゃんは大丈夫、りょうさん、お願いします」

 春香が2人に教えてあげようとすると春とりょうた君は震えながら慌てて僕に参考書を渡す。2人とも、春香のスパルタモードのスイッチが入るのを恐れているみたいだ。

 戦力外通告をされたまゆと恐れられ丁重にお断りされた春香は春の部屋の隅でボーっとこちらを眺めていた。そんな状況下で春とりょうた君に勉強を教えるのはめちゃくちゃ気まずい。

 「まゆのかわいい妹と弟がりょうちゃんに取られちゃうよぅ…」
 「私のかわいい妹と弟がりょうちゃんに取られちゃう…」

 そんなことをまゆと春香が呟くせいで集中できない。って言うか、春はまだ、まゆと春香の妹じゃないし、りょうた君はまだ、まゆの弟じゃないからね!?

 「春香ちゃんもまゆちゃんもうるさい!勉強の邪魔だから出てって!」

 と、春に怒られて春香とまゆは春の部屋から追い出されて、残された僕は昼まで春とりょうた君に勉強を教えていた。



 「あのぉ…そろそろ、ご機嫌なおしていただけないでしょうか?」

 勉強の邪魔になるから、と春に怒られて部屋を追い出されて、僕も春とりょうた君に勉強を教えていて2人にかまってあげなかったせいで、春香とまゆはお昼ごはんの時間も話してくれないくらい不機嫌になっていた。お昼ごはんが終わり、春香とまゆは僕のお母さんと一緒にお昼ごはんの後片付けなどをした後は僕の部屋に閉じこもってしまった。僕の部屋の前に何か置かれているのかわからないが、部屋の扉を押しても開く気配がない。

 なので、さっきから僕は自分の部屋の前でガチ土下座をして、その様子を扉にぶら下げたスマホのカメラ経由でリアルタイムの動画として春香とまゆに見せている謎の状況が出来上がっていた。先程、僕の横を通った春に、「尻に敷かれて情け無い男…」とめちゃくちゃバカにされた。そもそも誰のせいでこうなったと思ってるの?

 「ねー、せっかくりょうちゃんいないし、りょうちゃんのお部屋隅々までチェックしちゃおうよ」
 「いいね。そうしよう」

 カメラオン状態の電話越しにまゆがやばすぎる提案をするのが聞こえてきて僕は床に頭を全力で押し付けて謝罪する。それだけはまずいから…春香が一人暮らししてた年に寂しすぎてちょっとアレ系の同人誌とか買ったりしていたのがまだ残ってるからそれだけはやめて……

 と、僕がめちゃくちゃ慌てるのを面白がるように部屋の中からガサゴソと引き出しを開けたりする音が聴こえてくる。心臓に悪いから本当にやめてください。お願いします。何でも言うこと聞きますから。と僕はひたすら謝り続けて1時間後、ようやく部屋の扉を開けてくれたが、中に入ると絨毯の上に僕の同人誌コレクションが丁寧に並べてあった。

 僕だって男の子だもん…し、仕方ないでしょう……






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