お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

帰省シーズン





 夏休みもあっという間に過ぎ去り季節は8月中盤の長期休暇、ありがたいことに僕とまゆはバイトで連休をいただけて(その代わりに連休前後はバイト三昧だったのは言うまでもないだろう)4泊5日の帰省をすることになっていた。

 「りょうちゃん、忘れ物してないよね?」
 「まゆが1番心配なんだけど、まゆは大丈夫なの?」
 「大丈夫だもん。ちゃんと確認したから」

 まゆは帰省に必要な荷物を載せた車のトランクを閉めて若干ドヤ顔で僕に言う。かわいい。

 「まゆちゃん、リビングにスマホ忘れてたよ…」
 
 タイミングよく部屋の戸締りを終えた春香が車にやって来てまゆのスマホをまゆに見せる。

 「…………」

 まゆの顔が一気に真っ赤になる。めちゃくちゃかわいい。まゆの顔が真っ赤になるのを見て春香は?を浮かべていた。僕は必死に笑うのを堪える。

 「べ、別に忘れてたわけじゃないから。え、えっと…そう!春香ちゃんがきちんと忘れ物チェックしてくれてるのか確認するためにわざと、あえて、リビングに置いておいたの!」

 顔を真っ赤にしながらまゆは必死に弁明する。かわいすぎるよこの子…まゆの反応を見た春香はなんとなく状況を理解して「そうだったんだね。さすがまゆちゃん」と笑顔で優しい声でいいまゆにスマホを渡す。その様子を見て僕は笑いを堪えきれなかった。

 「ごめんなさい…まゆの注意不足でした……」
 「うん。ちゃんと謝れて偉いよ」

 僕がまゆの頭を撫でてあげるとまゆはえへへ。と嬉しそうにする。春香も頭を近づけてきたので春香の頭も撫でてあげる。アパートの前で何をしてるのだろう。と思うが、まあ、2人ともかわいいし幸せそうだからいいか。

 そんな感じのやり取りをした後、僕たちはまゆの車に乗る。ここから僕の実家まで、高速道路を使ったりしても5時間くらいはかかってしまうので、途中できちんと休憩をしてもらわないといけない。

 「まゆ、大変だけどごめんね。ありがとう」
 「いいよ。まゆ、運転好きだから」

 まゆは笑顔で答えてくれる。元々は電車で帰る予定だったが、混みそうだし、荷物も多いし電車だと大変だから車で行こう。とまゆが言ってくれたので、お言葉に甘えた。やっぱり、僕も免許取ろうかなぁ…と思っている今も、まゆは運転をしてくれている。本当にありがたい。

 途中、サービスエリアに寄ったり、まゆにお菓子を食べさせてあげたり、3人でお話をしながらゆっくり実家へと向かった。




 「陽菜、退院おめでとう」

 陽菜ちゃんが退院した日、私は陽菜ちゃんの病室に陽菜ちゃんを迎えに行った。その時、初めて陽菜ちゃんのお母さんにご挨拶をした。

 お母さんからは「陽菜のこと、よろしくお願いします」と言われ、私という存在は、あっさりと受け入れられた。陽菜ちゃんと手を繋いで病院内を歩き、陽菜ちゃんのお母さんの車に陽菜ちゃんと一緒に乗せてもらう。

 「そういえば、りっちゃんさんは帰省しないんですか?今って帰省シーズンですよね?春香ちゃんたちも今日から帰省するって言ってましたし…」
 「あーうん。まあ、そうだね。私も元々は帰る予定だったけど、今は陽菜と一緒にいたかったからさ。夏休み中に一度は帰らないといけない用事あるけど、別に帰省シーズンに合わせなくていいかなぁ…って、電車とかすっごく混んで大変だからさ、帰省シーズン落ち着いたらゆっくり帰省しようって思ってる」

 私が言うと陽菜ちゃんは顔を真っ赤にする。そう言えば、春香ちゃんも今日から帰省するって言っていたなぁ。陽菜ちゃんは入院したことを私以外誰にも伝えていない。春香ちゃんにもりょうちゃんにも、まゆちゃんにも、みーちゃんにも…誰にも言っていない。きっと、心配をかけたくないのだろう。1人であの狭い病室にいるのは退屈だろうに…私も、バイトがあるからなかなかお見舞いに行けなかった。きっと、私が行かない日は寂しかっただろう。だから、今日はずっと一緒にいてあげたい。今まで寂しかった分も今日はきちんと陽菜ちゃんと一緒にいてあげよう。

 「あらら〜2人とも本当にラブラブねぇ」

 かなり、若い感じの印象がある陽菜ちゃんのお母さんが運転をしながら後部座席でいちゃいちゃする私と陽菜ちゃんを見てニヤニヤしていた。お恥ずかしい……

 「陽菜もりっちゃんさんのご実家行ってみたいです」
 「えー、流石に遠出はダメでしょう…ダメですよね?」
 「あらあら、りっちゃんがいいって言うなら連れてってもらっても大丈夫ですよ。この子の場合、我慢させる方が体に悪いので…」

 お母さんの公認もらっちゃったよ。これ、陽菜ちゃんも今度一緒に帰省する流れじゃん。まあ、いいか…後でお母さんに彼女?が出来たから今度連れてくって報告しないとなぁ…






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