お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

試験後





 「りょうちゃん助けて〜」

 勉強会の翌日、試験が終わった途端、陽菜が僕に駆け寄って来た。

 「陽菜、どうしたの?」
 「りっちゃんさんが怖い…」 
 「あぁ…頑張って……」
 「頑張れないよ。試験終わってりっちゃんさんに連絡しようと思ってスマホの画面開いたらこれだよ!」

 『試験終わったら図書館前、寄り道厳禁』

 何これ怖っ……まあ、でも、レポートやってなかった陽菜が悪い。今日はいちゃいちゃする余裕なくりっちゃんさんに見張られながら陽菜はレポートを頑張るんだろうな…が、頑張って。

 「りょうちゃんも一緒に来て!お願い!」
 「え、いやいや、無理だよ。僕、今日バイトだから今からまゆと待ち合わせてるし…」
 「じゃ、じゃあ春香ちゃん借りていい?」
 「やめた方がいいと思う……」

 鬼が2人に増えるだけだから…とは口が裂けても言えないが陽菜は察した表情をした後、青ざめて震えた。

 「諦めな」

 明日提出のレポート5つを今日までやっていなかった陽菜が悪い…僕もまだ1つ残っているけど、今日バイト終わった後まゆと一緒にレポートする予定だし十分間に合う。

 「りょうちゃんお願いだから助けてよー」
 「りっちゃんさんの待ち合わせ場所までついてくくらいしかできないよ…」
 「それでいいから…」
 
 まあ、りっちゃんさんにお礼言いたかったしちょうどいいか。と思い僕は陽菜と一緒に図書館に向かう。ピアノ練習室でピアノを弾いているまゆに連絡を入れて、まゆとの待ち合わせ場所を図書館前にしてもらう。

 「ねえ、りょうちゃん、今すっごく余計なことしなかった?」
 「え?」
 「ま、まゆ先輩と一緒に春香ちゃんいたりしないよね?」
 「あっ……」

 恐る恐る僕に尋ねる陽菜を見て思い出した。

 「あっ…って何!?ねえ!何!?」
 「頑張って」

 たぶん、この時間に春香とりっちゃんさんがなんとなくだけどこの後、春香とりっちゃんさんが一緒に行動する流れになる気がする。陽菜、ごめん。春香とりっちゃんさんが別行動になるように祈ってて……

 「陽菜、遅い…」
 「ご、ごめんなさい…」

 僕の背に隠れながら陽菜がりっちゃんさんに謝る。

 「りょうちゃん、試験どうだった?」
 「おかげさまでなんとかなりました。たぶん、単位取れるはずです。教えていただいてありがとうございました」
 「いえいえ〜ちゃんとできたならよかった。あ、ごめんね。今日はちょっと急いでるから、その子、引き取っていい?」
 「あ、はい。どうぞ……」

 僕の腕をギュッと握り締めながら震えている陽菜の手をりっちゃんさんが掴んで僕から陽菜を引き離そうとする。

 「こら、陽菜、大人しく来なさい!」
 「りっちゃんさんが優しくしてくれるなら喜んでついて行きます」
 「レポート1つも終わってない子に優しくするわけないでしょ!」

 駄々っ子のように抵抗する陽菜をりっちゃんさんは強引に引っ張るが、陽菜はまだ抵抗する。それが命取りだった。

 「陽菜ちゃん、まゆと春香ちゃんのりょうちゃんにちょっかい出さないで!」

 僕との待ち合わせに現れたまゆと…春香が陽菜を僕から引き離した。

 「まゆちゃん、今からバイト?」
 「そうだよ」
 「じゃあ、春香ちゃん借りていい?夜にはちゃんと返すから」
 「いいよー」
 「私をものみたいに扱うのやめてくれない?」
 「うち来たくない?」
 「行く…」

 あーあ。無駄な抵抗しないで最初からりっちゃんさんに大人しく連れてかれていればこうはならなかったのに…

 「り、りっちゃんさん…はるな、りっちゃんさんと2人きりがいいなぁ………」
 「今日、私は陽菜ちゃんといちゃいちゃするためにうちに呼ぶわけじゃないからね。わかってるよね?」
 「は、はい………」

 陽菜は、はい。と返事しながら助けを求めるように僕とまゆを見つめて来た。

 「は、陽菜ちゃん、頑張ってね」
 「陽菜、ファイト」

 止めようがないので僕とまゆは陽菜にそう言ってその場を立ち去ろうとする。

 「「じゃあ、バイト行くので…」」
 「はーい。頑張ってねー」
 「りょうちゃん、まゆちゃん、また後でね」
 「薄情者ーーー」

 3人に見送られながら僕とまゆは逃げるようにその場を立ち去りさっさとまゆの車に乗ってバイトに向かった。

 「陽菜ちゃん、大丈夫かな?」
 「殺されはしないよ…たぶん……」
 「そんな物騒な言い方しないでよ…ますます心配になるじゃん……」
 「あはは。ごめんごめん」

 車の中でまゆと笑いながらそんなやり取りをしたが、陽菜は大丈夫だろうか…春香とりっちゃんさんからの圧力…怖いだろうなぁ……

 陽菜の無事を祈りながら僕とまゆはバイトを頑張った。







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