お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

これまでどおり




 「春香ちゃん、少し話せる?」

 僕と春香がまゆをサックスパートの練習部屋に送った後、低音が練習する予定の部屋に向かっているとりっちゃんさんが春香に声をかける。

 朝の練習が始まるまであと、5分弱その時間を守ることを条件に春香は了承してりっちゃんさんと共に廊下で立ち話をするみたいだ。春香に先に行っていて。と言われたので春香のことを心配しながら、僕は春香を残して先に練習部屋に向かった。



 「春香ちゃん…」

 りょうちゃんがいなくなり、春香ちゃんと2人きりになると春香ちゃんは黙って私を抱きしめた。私は春香ちゃんを優しく自分から離して春香ちゃんを連れて近くのソファーに並んで座る。

 「春香ちゃん、ごめんね。私、陽菜ちゃんと付き合うからさ…やっぱり今まで通りみたいな関わり方はできないかもしれないかな…」
 「いやだ…」
 「即答かぁ…」

 予想はしていたが、やっぱりこうなるか……嬉しいけど、めちゃくちゃ申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 「春香ちゃんにはりょうちゃんがいるでしょう?今まで私に甘えてきた分、りょうちゃんに甘えてあげな。りょうちゃん、きっと喜んでくれるよ」
 「りっちゃんがいい…私、りょうちゃんもまゆちゃんも大好きだけど。りっちゃんも大好きなの」

 春香ちゃんは泣きそうな表情で私を抱きしめる。私は無意識のうちに春香ちゃんを受け止めて、抱きしめていた。私も春香ちゃんから離れたくない。と言うように。

 「私も、春香ちゃんのこと、大好きだよ。大好き。大好き。めっちゃ好き」
 「………今まで通り、仲良くしてくれる?」

 春香ちゃんは泣きそうな表情で私に抱きついて私に尋ねる。春香ちゃんにこんな顔されたら…私、逆らえないよ。こんなのチートだよ。

 「うん。でも、私が一番大切にするのは陽菜ちゃん、そのことは理解してくれる?」
 「うん。わかった……」

 春香ちゃんが私をぎゅっと抱きしめてきたので、私は春香ちゃんに応えるように春香ちゃんをぎゅっと抱きしめる。



 「春香ちゃん、大丈夫ですか?なんか、朝から様子変だったので…」

 練習が始まる時間になり、慌てて春香ちゃんと練習部屋に向かい、楽器を出しながらスマホを確認すると、陽菜ちゃんからそのような文章が届いていた。

 「私、陽菜と付き合うから、春香ちゃんと今までみたいに関われないかな…って思っていて、ちょっとよそよそしい態度取ったりしてたら…」
 「陽菜のことは気にしないでいいですよ。春香ちゃんとは今まで通り仲良くしてあげてください。別にりっちゃんさんを束縛したりする気ないですし、あ、でも、お泊まりとかする時は陽菜に一言、言って欲しいです」
 「ありがとう。陽菜」

 私が陽菜ちゃんにお礼を伝えると、「じゃあ、練習に戻りますね」と連絡が届いたので、「また後でね。お互い頑張ろう!」と連絡を返しておいた。




 「春香、何かいいことあったの?」

 先程、りっちゃんさんと話してから春香の機嫌がよくなっていた。

 「うん。いいことあった」

 幸せそうな表情で言う春香は本当にかわいい。

 「そっか、よかったね」

 マウスピースを片手に持ちながら僕は片手で春香の頭を撫でてあげる。春香は幸せそうな表情で「もっと撫でて」と猫撫で声で言ってくれる。かわいすぎてドキドキする。でも、キリなくなりそうなのですぐに撫でるのをやめると、頬を膨らませてもっと撫でて!とアピールしている春香がかわいすぎた。

 まあ、そんな感じで合宿3日目の午前練習が始まる。
 午前練習は各自音出し、パート練習、セクション練習を順に行う。午前練習は本当にあっという間に終わってしまう。

 お昼の時間、朝はちょっと遠く感じた春香とりっちゃんさんの距離が今まで通りに感じられてちょっと安心した。春香とりっちゃんさん、陽菜が楽しそうに笑ってるのを見てほっこりする。

 「りょうちゃんにはまゆがいるから寂しくないからね」
 
 楽しそうに笑う春香をじっと見つめていたからか、僕が寂しさを感じていると思ったまゆが僕にそう声をかけてくれる。まゆの些細な優しさ、大好き。

 「別に寂しいわけじゃないよ。でも、ありがとう。嬉しいよ。大好き」
 「まゆも、りょうちゃんのこと大好き」
 「あー、まゆちゃんだけ大好きって言ってもらってずるい」
 
 僕とまゆのやり取りを聞いて春香が僕をじっと見つめる。

 「春香のことも大好きだよ」
 「ありがとう。私もりょうちゃんのこと大好き」

 と、バカップル全開のやり取りをお昼の時間に僕たちはしていた。





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