お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

合流




 「まゆ、おはよう」
 「いいから、説明、何話してたの?」
 「どこから聞いてた?」
 「ゆいちゃんが好きって言ってたところ」

 まゆは涙目になりながら僕に尋ねる。不安にさせて申し訳ない…

 「ゆいちゃんがね。ある人からの告白を断ったって話、僕を諦めたくないから…その話の流れで告白された」
 「なるほどね」
 「不安にさせてごめんね。でも、僕はまゆと春香以外には振り向いたりしないから安心して…」

 僕はまゆの涙を拭ってあげる。

 「じゃあ、証明、して」
 「わかった」

 僕はまゆに好きだよ。と言ってまゆとキスをする。

 「うん。信じる。それにしてもゆいちゃんも困ったもんだよね…」
 「やっぱり僕がゆいちゃんと話したりするの嫌?」
 「嫌じゃないよ。まゆはりょうちゃんを束縛したりするつもりはないからさ。ゆいちゃんは普通にいい後輩だし、まゆのお気に入りの後輩でもあるからさ…でも、やっぱり不安にはなるんだよ。ゆいちゃんいい子だからりょうちゃん取られないかなって…だから、さっきみたいにちゃんと証明して欲しいの」
 「そっか…ごめんね。ありがとう」
 「いいよ。それより、まゆだけは不公平だよ」
 「そうだよ。りょうちゃん」

 まゆが笑顔で言うと僕の太腿の上で目をパチパチさせていた春香が同意した。

 「春香、おはよう」
 「うん。おはよう」

 おはよう。と言ってすぐに僕は春香ともキスをする。キスが終わると春香は「どういう状況?」と尋ねてきて僕とまゆは目を合わせて笑った。

 「朝からバカップルしてるねぇ」
 「え、みはね先輩!?」

 僕と春香とまゆのやり取りを見ながらニヤニヤした明るい感じの茶髪の女性、みはね先輩がスマホのカメラを向けながら「あとで文恵さんに送っておこう」と言うので僕とまゆは同時に「「やめて!」」と言い、まゆはみはね先輩からスマホを取り上げた。
 みはね先輩は僕のバイトの先輩でまゆと春香と同い年、元吹奏楽部のバリトンサックス担当で今は休部中…

 「みはね先輩、どうしてここに?」
 「ん?ああ、バリトンサックスの1年生の子に会いに来たの。まゆちゃんに頼まれてね。もしかしたら、コンクール出ることになるかもしれないから一応楽器も持って来たの。昨日、まゆちゃんとりょうちゃんの代わりにシフト入ってお疲れなのにさぁ…土日呼び出しで練習ってまゆちゃんも人使い荒いよねぇ」

 みはね先輩は笑いながらまゆに言う。まゆは申し訳なさそうにしながら、みはね先輩のスマホから先程みはね先輩が撮った写真を削除する。

 「ごめんね。今度何か奢るからさ、さすがにバリトンサックスなしでコンクールはきついからお願い」
 「まゆちゃんがバリサクやればいいじゃん」
 「まゆはテナーソロがあるから無理!ていうか今、サックスパート人数的に余裕ないからさ…お願い」
 
 まゆが頭を下げるとみはね先輩は「どうしようかなぁ」と僕を見つめる。僕が若干呆れながら「みはね先輩、お願いします」と、先輩という言葉を強調してお願いするとみはね先輩は「まあ、かわいい後輩のために一肌脱ぎますか」と笑いながら言う。ちょろくて扱いやすい先輩で本当に助かります。

 「春香ちゃん、久しぶり」
 「久しぶりだね。みはねちゃん随分りょうちゃんと仲良いんだね」

 僕の太腿に頭を置いて不機嫌そうにしている春香は若干嫌味っぽい口調でみはね先輩に言う。

 「まあ、りょうちゃんはかわいい後輩だからね。あ、安心して、恋愛対象としては興味ないから、春香ちゃんとまゆちゃんからりょうちゃんを奪うってことは絶対にないからさ」
 「ならいいけど…」

 春香とみはね先輩のやり取りを僕はあはは。と言いながら聞いていた。春香の頭をそっと撫でて春香のご機嫌取りを欠かさない。

 「まゆちゃんたちは今から朝ごはん?」
 「うん。もうすぐ朝ごはんの時間」
 「そっか…じゃあ、先に練習してようかな…かなりブランクあるし……あ、でもその前にあーちゃん先輩と及川さんに挨拶しときたいな。2人はどこにいるかわかる?」
 「うーん。まゆたちずっとここにいたかわからないけど、たぶん2人で練習計画の打ち合わせしてると思うよ。朝食の時には食堂に来るはずだからそこで声かけてみたら?」
 「あー、OKありがとう。そうするわ。サックスパートはどこで練習するの?」
 「講堂から2番目に近い部屋の予定、だけど…鍵開いてないと思う。りっちゃんが鍵管理してくれてるはずだけど…」
 「じゃあ、りっちゃんのところ行かないとか…」
 「うん」
 「あ、今日サックスパート誰がいるの?」
 「まゆと1年生の陽菜ちゃんと、みはねちゃん、午後からアルトの3人が合流する予定」
 「うわぁ…本当に人数やばいね…」
 「うん。みはねちゃんいないと本当に詰む」

 まゆは笑えないような表情でみはね先輩に言い、僕たちはみはね先輩と一緒にあーちゃん先輩と及川さん、りっちゃんさんを探しに向かうことにする。

 「みはね先輩、楽器もちますよ」
 「お、気が利く後輩だねぇ。じゃあ、任せた」

 僕はみはね先輩が重そうに持っていたバリトンサックスをみはね先輩から受け取り歩き出す。春香とまゆが手繋げないじゃん…と不満そうな表情をしていたことに気づいてしまった…と後々後悔したことは黙っておこう。







「お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く