お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

妹の寝顔





 「まゆ、お帰りなさい」
 まゆがインターホンを鳴らして少しするとまゆのお母さんが扉を開けて出迎えてくれた。僕とまゆは玄関に入る。
 「うん。ただいま。ママ、お父さんいる?」
 「いるわよ。あの人、まゆのこと心配だからって昨日と今日、本屋さんに様子見に行っていたのよ。2日連続で出かけて2日連続で本屋さんの袋を持って帰って来たのを見て笑っちゃったわ」
 「そう…なんだ……」
 まゆはすごく複雑な表情をしていた。たぶん、まゆの心の中は今、いろいろな感情があってぐちゃぐちゃだろう。大丈夫だよ。と安心させるために僕はまゆと繋いでいた手を少しだけ強く握る。まゆは驚いたような表情を一瞬見せたが、すぐにいつものまゆに戻ってくれた。
 「まゆ、お父さんに話があるの。ママも…お父さんと一緒に聞いてもらっていいかな?」
 「もちろんよ。じゃあ、お父さん呼んでくるからまゆとりょうくんはリビングで待ってて」
 「わかった」
 まゆのお母さんはまゆのお父さんを呼びに行くために2階に上がって行った。僕はまゆと手を繋いでリビングに入る。
 「りょうちゃん、さっきはありがと。おかげで落ち着けたよ」
 「そっか、ならよかったよ。無理は…しないでね」
 「うん。もちろんだよ」
 まゆは笑顔で答える。少しするとまゆのお母さんがリビングに入って来て、立ってないで座ってて。と言うので僕とまゆはリビングのテーブルに設置されている椅子に並んで座った。まゆのお母さんがお茶を持ってきてくれて僕とまゆの前に置いて、僕とまゆと向き合う位置にお茶を2つ並べてまゆのお母さんはまゆの向かい側に座った。
 「お父さんもう少ししたら来るみたい。まゆとりょうくんバイト終わりよね?お腹空いてない?何か作ろうか?」
 「大丈夫。春香ちゃんが夜ご飯作ってくれてるから」
 「そう…ちゃんと幸せそうで安心したわ」
 「うん」
 少しの間、まゆとまゆのお母さんは2人で楽しそうに会話をしていた。まゆが家を出たのは数日前のはずなのに、まゆもまゆのお母さんも数年ぶりに再会した親子のように感じるようなやり取りをしていた。


 「春ちゃん、りょうちゃんとまゆちゃんまだ遅くなりそうだから先に寝てていいよ」
 夜ご飯を食べた春ちゃんと2人でお風呂に入り、23時前になると中学生の春ちゃんは眠くなる時間のようだ。私が春ちゃんに声をかけると春ちゃんは春香ちゃんが一人で可哀想だからまだ起きてる。と目を擦りながら言ってくれた。優しいなぁ…可哀想って言う一言は余計だけどね……
 「ありがとう。でもだめだよ。良い子は寝る時間だから寝ないとだよ。ほら、春ちゃんが寝るまで側にいてあげるから」
 「私、もう子どもじゃないから一人で寝れるもん」
 「じゃあ、一人で寝てきなさい。おやすみ」
 「やっぱり…春香ちゃんに側にいて欲しい…」
 はい。かわいい。最高…もう天使だよこのかわいさ。
 「しょうがないなぁ…じゃあ、春ちゃんが寝るまで側にいてあげるからもう寝るよ」
 「はーい」
 春ちゃんに歯を磨かせてから春ちゃんと私とまゆちゃんの部屋に入ってベッドの上の布団に春ちゃんを寝かしつける。春ちゃんが眠るベッドの横に小さな椅子を持ってベッドの横に座る。本当なら春ちゃんの横で寝てあげたいけど、今日はまだ寝れないから…このまま寝落ちできないからこれで許してね。
 私は春ちゃんとお話をしながら春ちゃんが眠るのを待つ。春ちゃんはベッドで横になると私の手を握る。こういう仕草一つ一つがなんとなくりょうちゃんに似ていてかわいいなぁ…って思ってしまう。春ちゃんが眠りについてからも春ちゃんの寝顔を見つめていた。


 「待たせてしまって申し訳ないです」
 そう言いながらまゆのお父さんはリビングに入ってくる。優しそうで礼儀正しく、大学生の娘がいるとは思えないくらい若々しい男性、それがまゆのお父さんの印象だった。
 「え、あなたわざわざスーツに着替えたの?」
 「え、だってまゆが彼氏連れて来たって言うからやっぱりちゃんとした格好しないとなって…」
 「だからってわざわざスーツに着替えなくても…来るの遅いなぁって…思っていたらこれだもの…」
 「いやいや、服装は大事だと思うよ。ていうかきみはパジャマって…せめて普段着に着替えるくらいしたらどうです?」
 「いやいや、この時間なんだからパジャマでも仕方ないでしょう」
 まゆのお父さんとお母さんは謎の言い争いを始めてしまった。しっかりしてそうでちょっと抜けてる感じがあるところ、まゆに似ているなぁ…まゆの両親を見て僕はそう感じた。
 「もう、ママもお父さんも早く座って、りょうちゃんの前で変なこと言わないでよ」
 「「ごめんなさい」」
 まゆの両親はまゆに謝ってから椅子に座り僕とまゆと向かい合う。
 





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