お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

数週間後





 「あーもう。ゆいちゃんかわいいなぁ…」
 リビングのソファーでゆいちゃんを膝枕しながら頭を撫で回してまゆ先輩が呟く。ゆいちゃんはすごく気持ちよさそうな表情をしてもっとやって。とおねだりしていた。それを見たさきちゃんはかなり引いている。
 
 あの一件から数週間が経過した。あれから、ゆいちゃんはかなり元気を取り戻していた。あいつの処分は停学になったが、ゆいちゃんと春香への接触禁止を取り付けられた。安心はまだ、できない。だが、今のところは平穏な日々を過ごすことが出来ている。
 そして今日、ゴールデンウィークに突入した日、僕たちは旅行に出かけることになっていた。1泊2日の旅行で温泉に出かける約束をしていた。僕と春香のアパートに僕と春香、まゆ先輩、りっちゃんさん、ゆいちゃん、さきちゃんが集まりまゆ先輩が運転する車に乗せてもらう。いつものまゆ先輩の車だと全員乗ることができないが、今日のためにまゆ先輩のお父さんが使っている大きいサイズの車を借りて来てくれた。車の運転を常にまゆ先輩に任せることになり申し訳ないが、僕が助手席に乗ることを条件に快諾してくれた。
 僕が助手席に座り後ろに春香とりっちゃんさん、その後ろにゆいちゃんとさきちゃんが座る。
 みんなが座ったところでさっそく運転を始めて数時間、結構有名な温泉街に僕たちは到着した。温泉街に到着した僕たちは旅館の駐車場に車を停めて旅行のチェックインを済ませて部屋に案内してもらう。
 6人部屋の結構広めの部屋を借りて部屋の隅にそれぞれの荷物をまとめて置く。
 まゆ先輩が疲れた〜と言い座布団を2枚並べて横になる。運転お疲れ様。ありがとう。と声をかけながら僕はまゆ先輩の横に座ってまゆ先輩の頭を撫でる。とりあえず少しのんびりしてからちょっと観光したりするのがいいのかな…と僕が思っていると…
 「ねえねえ、さき、さっそく温泉で温泉卵作ろう」
 ゆいちゃんが朝から大切そうに持っていた小さな鞄から8個入りの卵パックを取り出す。無邪気か!
 「ちょいちょいだめだよ」
 本当に部屋を出て温泉で温泉卵を作ろうとしたゆいちゃんの腕を掴んで僕はゆいちゃんを止める。その様子をさきちゃんはめっちゃ笑いながら見つめていた。お願いだから笑ってないでゆいちゃんを止めてよ。絶対楽しそうだから放置しようとしたでしょ…
 「えーせっかく卵持ってきたのに…」
 「バカなの?ねえ、バカなの?ダメに決まってるじゃん」
 僕とゆいちゃんのやり取りを他の面々は笑いながら眺めている。お願いだからみんなもこのバカを止めてよ。
 「夕食まで時間あるけどどうする?」
 「うーん。どうしようね。まゆが結構疲れちゃってるみたいだから夕食の時間までは自由行動にする?」
 気づいたらまゆ先輩は眠ってしまっていた。よほど疲れたようだ。本当にお疲れ様。ありがとう。と思いながら僕が提案すると各々が観光したい場所を巡ることになった。夕食までは大体4時間、1時間前くらいにこの部屋で集合にして一旦解散する。
 解散するとゆいちゃんとさきちゃん、春香とりっちゃんさんはそれぞれ2人で出かけて行った。ゆいちゃんとさきちゃんはさきちゃんの提案で近くにある有名なスイーツを食べに行くみたいだ。春香とりっちゃんさんはさっそく温泉に入ってからちょっとお土産を見に行くらしい。僕は眠っているまゆ先輩の横でまゆ先輩が起きるのを待つことにした。


 一旦解散してから1時間半くらいが経つ。僕はずっと眠っているまゆ先輩を見つめていた。かわいいからいくらでも見ていられる。と思いながらまゆ先輩を見つめているとまゆ先輩がムズムズと動き始めた。
 「ん…あれ、まゆ、ちょっと寝てた?」
 「おはよう。うん。ちょっと寝ちゃってたね。運転してくれて疲れたのかな?ありがとう。今ね。みんなそれぞれ観光に行ってて夕食の時間で合流することになってるよ」
 「え、じゃあ、なんでりょうちゃんここにいるの?まゆのこと放っておいてくれてよかったのに…」
 「そんなことできるわけないじゃん」
 「もう…ありがとう。側にいてくれて……」
 まゆ先輩は顔を赤くしながら僕に言う。やばい。かわいい。かわいすぎる。
 「いいよ。夕食の時間までさ、まだ時間あるからちょっと一緒に出かけない?さっきさ、ゆいちゃんから送られてきたスイーツめっちゃ美味しそうだったから食べに行こうよ」
 「えー、もうすぐ夕食なのに太っちゃうよ…」
 「まゆは十分痩せてるから少しくらい太っても大丈夫だよ」
 僕はまゆ先輩のお腹を触りながら言う。めちゃくちゃ柔らかい。ていうか本当に細いな…細くて逆に心配になる。
 「ねぇ…どこ触ってるの…もう。じゃあ、そのお店行こう。案内して!」
 ちょっと不機嫌になったまゆ先輩にごめんね。と謝りながら僕とまゆ先輩は部屋を出た。ルームキーは僕と春香が持っていてゆいちゃんたちは持っていないので、時間に気をつけないと。と意識しながらまゆ先輩と手を繋いで旅館を出た。








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