お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

2人で寝る時間




 「りょうちゃん、好き、大好き」
 「うん。僕もまゆのこと大好きだよ」
 まゆ先輩の家で僕とまゆ先輩が2人きりになってからまゆ先輩はずっとこの調子だ。僕に好き。好き。とアピールをしてきて本当にかわいい。まるで、何かを求めているようにも感じるが気にしないことにする。
 「えへへ…ありがとう。まゆ、嬉しいなぁ…ねえ、りょうちゃん、今日はまゆと気持ちいいことしてくれる?」
 やっぱりか…とまゆ先輩の言葉を聞いて僕は思った。もうすっかり癖になってしまっているな…
 「今日はダメ…春香に怒られちゃうしね……」
 「えー」
 「そんな顔してもダメ…また今度3人でお泊まりする時ね…」
 不満そうに頬を膨らませるまゆ先輩の頬をギュッと押しながら僕は言う。まゆ先輩は口から勢いよく空気を吹き出して膨らませていた頬を元に戻す。かわいい……
 「じゃあ…まゆ、一人でするから…りょうちゃん、まゆの恥ずかしいところ見てて…」
 「ちょ…何言ってるの……ダメ…そんなことされたら我慢出来なくなる…」
 「我慢しなくていいんだよ」
 まゆ先輩は僕を誘惑するように耳元で囁いた。悪魔の囁きだ。誘いに乗ってはいけない……
 「ダメ…」
 「じゃあさ、一緒にお風呂入るのは?」
 「ダメ…」
 「まゆのこと嫌いになっちゃった?」
 「そんなわけないじゃん」
 まゆ先輩が寂しそうな表情で言うので僕は慌ててまゆ先輩の言葉を否定した。
 「じゃあ、まゆの身体が春香ちゃんと比べて魅力的じゃないから…」
 まゆ先輩は自身の胸に手を当てて悲しそうな表情で僕に言う。それはずるいよ………
 「そんなことないよ。まゆの身体は十分魅力的だよ」
 「じゃあ、なんでお風呂一緒に入ってくれないの?まゆとりょうちゃんは付き合ってて…まゆはりょうちゃんと一緒にお風呂入りたいって言ってるんだよ。りょうちゃんは嫌なの?まゆとお風呂入りたくないの?」
 絶対、わざとだと断言できるが、まゆ先輩は泣きそうな表情を作って僕にその表情を見せつけた。ずるい…それはチート……
 「入りたくないわけじゃない…けど…….」
 「じゃあ、一緒に入ってくれる……?」
 まゆ先輩は甘え声で尋ねてトドメを刺しに来た。はいはい。僕の負けです。
 「今日だけだよ」
 「やった!ありがとう!りょうちゃん大好き」
 満面の笑みでまゆ先輩は僕に言う。やっぱりさっきの悲しそうな表情は作りものか……ずるい…まゆ先輩や春香にあんな表情されたら僕が逆らえるわけないのに……
 その後、僕はまゆ先輩と一緒にお風呂に入った。お互いの身体を洗い合ってから一緒に湯船に浸かって幸せだった。お風呂から出た後、僕はドライヤーでまゆ先輩の髪の毛を乾かしてあげる。まゆ先輩はとてもご機嫌の様子だった。
 「りょうちゃん、今日も一緒に寝ていいよね」
 「うん。当たり前じゃん」
 僕はまゆ先輩にそう答えてまゆ先輩と一緒にまゆ先輩のベッドで横になった。まゆ先輩は部屋の明かりを消して、僕はまゆ先輩の方を、まゆ先輩は僕の方に身体を向けて、お互い同じタイミングで抱きしめ合った。意図したわけではない。なのに…完全に僕とまゆ先輩の行動が合致していた。
 「りょうちゃん、好き、好き、好き、好き、好き………大好き」
 「僕も、まゆのこと大好きだよ」
 まゆ先輩の想いに僕も応えたあと、僕とまゆ先輩はお互い、唇をくっつけようとした。
 「いたっ…」
 「う…まゆ、ごめん。大丈夫?」
 「うん。大丈夫。まゆの方こそごめんなさい」
 お互いの口が勢いよく衝突して、かなり痛かった。痛みが収まり、僕は気を取り直してそっとまゆ先輩の頭に手を伸ばして、ゆっくりとまゆ先輩の頭を近づけて唇と唇を触れ合わせた。しばらくして、唇と唇が離れて僕がまゆ先輩の頭から手を離して、再びまゆ先輩を抱きしめるとまゆ先輩は僕に同じことをしてくれた。僕の頭を小さくて柔らかい手で支えてそっと唇を引っ付けてくれた。それだけで本当に幸せな気持ちになれた。
 「りょうちゃん、今どんな顔してる?」
 お互いに抱きしめている状態でまゆ先輩が僕に尋ねた。
 「さあ…どんな表情だろう…」
 「えへへ…まゆはね。すごく幸せな表情してるよ!りょうちゃんは違うの?」
 「違わないよ。僕もすごく幸せだよ」
 「ありがとう。まゆのことこんなに幸せにしてくれて」
 「こちらこそありがとう。僕のこと幸せにしてくれて」
 「明日はちゃんと春香ちゃんを幸せにしてあげるんだよ」
 「うん。ありがとう」
 「ちゃんと春香ちゃんも幸せにしてあげないとまゆ、りょうちゃんのこと嫌いになるからね」
 「大丈夫。ちゃんと春香もまゆも幸せにするから…」
 「うん。明日は春香ちゃんの特別な日なんだから…明日はちゃんと春香ちゃんのことを特別に思ってあげてね。まゆは明日は我慢するから…あ、でも、ピアノの練習はちゃんとするからね。明日の部活終わった後はりょうちゃんは明日だけは春香ちゃんのことを一番に考えてあげること!わかった?」
 「うん。ありがとう。明日だけは春香のことを一番に考えさせてもらうね。明後日からはちゃんと春香もまゆも一番だから」
 「うん!よろしい。じゃあ、そろそろ寝ようか」
 「うん。おやすみ」
 「おやすみ」
 最後にもう一度口づけをして僕とまゆ先輩は眠りについた。明日は特別な日だ…だから、ちゃんと春香を幸せにしてあげようと思っていたが、現実はそう上手くはいかないのだった。






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