お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

3人で…





 「綺麗だね…りょうちゃん」
 海に到着し、近くの駐車場に車を止めて車から降りるとまゆ先輩が僕に言う。前にまゆ先輩と2人きりで海に来た時を思い出して僕はドキッとする。あれからまだ1週間くらいしか経っていないのにな…と、1週間前の出来事を懐かしく思っていた。
 「うん。綺麗だね」
 「砂浜歩きたいなぁ…」
 「うん。いいよ」
 僕はまゆ先輩に返事をして、右手を春香の左手と…左手をまゆ先輩の右手と繋いで砂浜を歩く。
 しばらく砂浜の上を歩いて砂浜に足跡を残す。前に来た時は2人分の足跡だったが、今回は3人分の足跡だ。
 「また、りょうちゃんと一緒に歩けて嬉しいな…今回は春香ちゃんも一緒だしね」
 まゆ先輩が本当に嬉しいそうな表情で言う。それを聞いた春香も嬉しそうな表情をする。きっと僕も春香やまゆ先輩みたいに嬉しそうな…幸せそうな表情をしているだろう。
 しばらく歩いて、僕たちは立ち止まった。海がすごく綺麗に見れる場所で3人で並んで海を見つめた。広大な海に夕焼けが吸い込まれるように見えた。真っ青な海はオレンジ色に染まっていき、それをすごく綺麗だと思った。
 「綺麗だね」
 「うん」
 「また見に来たいね」
 「うん」
 「また3人で来ようね」
 「「うん」」
 僕の呟きに春香とまゆ先輩は相槌を打ってくれる。3人で…か……自分はずるいなぁ…と思うがその感情は表に出さなかった。
 「りょうちゃん、気にしないでいいんだよ」
 「そうだよ。まゆは今が本当に幸せだから。春香ちゃんもそう思ってるはずだよ」
 僕の感情を察した春香とまゆ先輩は僕に言ってくれた。本当に2人は優しい……そんな2人が本当に大好きだ。2人の優しさを実感して僕は涙を溢しそうになってしまうが必死に抑え込む。
 「泣いていいんだよ」
 「まゆと春香ちゃんは見えてないから…」
 そう言い、春香とまゆ先輩は僕の腕を抱きしめて肩に頭を当てて僕の顔が見えないようにしてくれる。
 「ありがとう。もう大丈夫」
 少し泣いて心を落ち着けた僕は春香とまゆ先輩にお礼を言う。すると春香とまゆ先輩は僕の肩から頭を離して僕から少し離れる。
 「春香、まゆ、少しだけ僕の話を聞いてくれないかな?」
 僕の言葉を聞いて春香とまゆ先輩は何?と優しく尋ねてくれた。
 「春香、まゆ、2人のことが大好き。どっちの方が好きって選べないくらいに大好き。だから…僕と付き合ってください。めちゃくちゃだってわかってる。最低なことを言ってるのもわかってる。でも…本当に2人のことが大好き。絶対に2人とも幸せにする。お願いします。僕と付き合ってください」
 最低だな…と自分でも思う。今、僕は堂々と二股をしようとしてる。でも、最低でもいい。2人のことが大好きだから、2人と結ばれたい。絶対に2人を幸せにしたい。春香とまゆ先輩、2人とも僕にとって大切だから……
 「「ありがとう。幸せにしてね。そして、りょうちゃんも幸せになってね。3人で幸せになろう」」
 春香とまゆ先輩は同時に同じセリフで答える。完全にシンクロしていた。答えを合わせる様子はなかった。きっと…春香もまゆ先輩もこうなるってわかっていたのだろう…いつからだろう…いつから…僕が春香とまゆ先輩のどちらかを選べないとわかっていたのだろう…
 「りょうちゃん、今日買ったやつ、付けて…」
 「まゆにも…」
 春香とまゆ先輩は左手を僕に向けて伸ばす。本当に幸せそうな表情で、僕を見つめながら。
 僕は腕に掛けていた袋から、今日買った3つのリングが入っているケースを取り出す。
 まず、春香のリングを取り出して、春香の左手を手に取り春香の左手の薬指にリングを付ける。そしてそのまま春香を抱きしめて春香の唇を奪った。しばらく僕と春香の唇を触れ合わせてから春香から離れて、今度はまゆ先輩のリングを手に取る。そして、まゆ先輩の左手を手に取りまゆ先輩の左手の薬指にリングを付ける。そして、春香と同じようにまゆ先輩を抱きしめてまゆ先輩の唇を奪った。
 「絶対に2人とも幸せにするからね」
 まゆ先輩から離れた後、僕は春香とまゆ先輩に向けて言う。それを聞いた春香とまゆ先輩は本当に幸せそうな表情をしながら涙を溢した。
 そして春香が僕が砂浜の上に置いていた袋の中のケースからもう一つのリングを取り出した。そして、春香とまゆ先輩は2人でリングを持ち僕の左手を手に取って、2人で僕の左手の薬指にリングをつけてくれた。
 「「絶対にりょうちゃんを幸せにする。3人で幸せになろうね。約束だよ」」
 春香とまゆ先輩にそう言われて僕は涙を溢した。3人とも、幸せそうな表情で涙を溢していた。照れ隠しのように3人でひっついて、顔を見られないように3人で抱きしめ合った。
 泣きながら、春香とまゆ先輩、2人を必ず幸せにする。そして、僕も幸せになって3人で幸せになれるようにする…いや、絶対に幸せになる。と心に決めた。
 3人とも幸せを味わいながら涙を溢し続け、3人の涙が止まる頃にはオレンジ色だった海の色が深い青色に染まっていたのだった。






コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品