お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

秘められた想い




 「お邪魔します…」
 「はーい」
 同級生の女子の部屋に泊めさせてもらうなんて初めてだからめちゃくちゃ緊張しながら、ゆいちゃんの下宿先の部屋に入る。玄関から通路が伸びていて、通路の傍にはキッチンがあった。通路の先にある扉を開けて部屋に入る。ゆいちゃんの下宿先は部屋はこの部屋しかない。いや、きっとこれが普通なのだろう…
 奥にベッドがあり、真っ白の壁に茶色い床、床には緑色の丸いラグが敷かれていて、その上に白いミニテーブルが置かれている。そして、部屋の隅に小さめのソファーが置かれている。まだ、下宿を始めたばかりだから仕方ないと思うが、部屋の隅にはダンボールが3箱くらい未開封で積まれていた。
 「とりあえず、ソファー座ってて、私ちょっとシャワー浴びてくるけど、りょうちゃんはどうする?明日、帰ってからシャワー浴びる?それともうちのシャワー使う?」
 「うーん。歩いてちょっと汗かいちゃったから出来れば貸して欲しいな…」
 「りょーかい。じゃあ、私入った後に貸すね」
 「うん。ありがとう」
 ゆいちゃんはベッドの下のスペースの収納からパジャマなどの着替えを取り出して部屋を出てシャワーを浴びに向かった。ゆいちゃんが部屋を出て少しするとゆいちゃんがシャワーを浴びる音が聞こえてきてかなりドキドキした。
 「りょうちゃん、出たよ。あ、タオルお風呂場にあるやつ適当に使ってくれていいよ」
 「うん。ありがとう」
 シャワーを浴びてまだ、乾ききっていないゆいちゃんを見て僕はちょっとドキッとして目を逸らす。ゆいちゃんは短パンにTシャツというラフな格好で部屋に入ってきた。のはいいが…その…ゆいちゃんの胸が大きいのがよくわかってしまうので目のやり場に困ってしまった。
 僕は逃げるように部屋を出てシャワーを借りた。シャワーを浴びて、先程まで着ていた服をもう一度着て、部屋に戻る。
 「ゆいちゃん、シャワーありがとう」
 「いえいえ、あ、ドライヤー使う?」
 「あ、借りたい」
 「はーい」
 既に髪を乾かし終わっていたゆいちゃんはソファーを僕に譲りベッドに横になった。僕はソファーに座って近くにあったドライヤーで髪を乾かした。
 「りょうちゃん、ごめんね。この部屋ベッド以外に布団ないから…どうしよう…」
 「あ、僕ソファーか床使わせて貰えばいいよ」
 「そういう訳にはいかないよ。今日は私が悪いんだし、りょうちゃんの身体に負荷がかかる寝方はさせたくない。私がソファーで寝るからりょうちゃんベッド使って」
 「いやいや、そんな訳にいかないよ…」
 「じゃあ、もう、一緒にベッドで寝る?」
 「え…」
 「どうせいつも春香先輩やまゆ先輩と一緒に寝てるんでしょ?なら別にいいじゃん」
 ゆいちゃんは僕を引っ張って強引にベッドに寝かしつけた。そして、部屋の電気を消してゆいちゃんも僕の隣で横になる。
 真っ暗な部屋で同級生の女子と並んで寝ている状況で僕はすごくドキドキしていた。
 「りょうちゃん、もしかしてドキドキしてる?」
 「え…してないよ…」
 「そっかぁ…こうされてもドキドキしない?」
 ゆいちゃんはギュッと僕を抱きしめた。ゆいちゃんのでかい胸が当たる感触で僕はドキッとした。
 「ゆいちゃん、だめだよ。好きでもない相手にこんなことしちゃ…」
 僕はそう言いながらゆいちゃんに抱きつくのをやめさせた。そうすると、ゆいちゃんは不満そうな表情をした。
 「やっぱり覚えてないんだね」
 「え…」
 「もしかしたら覚えててくれてるかなぁって思ったのに…勝手に半年間片想いして、りょうちゃんと部活で再開できて、すごく嬉しくてでも、春香先輩やまゆ先輩と一緒にいて幸せそうなりょうちゃんを見て羨ましくて…私も…春香先輩やまゆ先輩みたいになれるかな…って思ったのに……ごめんね。勝手なこと言って…」
 「え…ちょっと…どういう……」
 ゆいちゃんが今にも泣きそうな表情で、震える声で僕に言うが、僕にはゆいちゃんが何を言っているのか理解が追いつかなかった。
 「ごめんね。終電の時間も…ほんとうは気づいてた。大学の近くじゃなくてわざわざこっちで食事したのも、カラオケに行ったのもりょうちゃんと少しでも長く一緒にいたかったから…私ずるいよね…ごめんなさい……」
 ゆいちゃんは泣きながら僕にそう言い、ベッドから起き上がって部屋を出て行ってしまった。ゆいちゃんが部屋を出てすぐに、再びドアが閉まる音がした。きっと玄関のドアだろう。
 状況が全く理解できていなかった僕だが、ゆいちゃんを放っておけなかった。だが、ゆいちゃんの部屋を勝手に留守にしていいのか…などと思ったが、もう既に夜遅いし何よりゆいちゃんのことが心配だった。
 僕は部屋を出て靴を履いて玄関のドアを開けてアパートの階段を降りる。アパートの外に出て、周囲にゆいちゃんがいないか探し回るのだった。






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