お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

嫌な噂






 「「「お疲れ様です」」」
 僕と春香とまゆ先輩は挨拶をしながらホールの裏口からホールの舞台下手に入る。僕たちがホールの舞台下手に入ると舞台下手にいた人たちの視線が僕たちに集まった。舞台下手には僕以外の1年生とりっちゃんさんと及川さんがいて何かを話している様子だった。僕たちが入って来たのを見て1年生の中には鋭い目線を向けてくる者もいた。及川さんは慌てて1年生たちをホールの奥にある控え室に連れて行った。僕と春香とまゆ先輩はりっちゃんさんに連れられて1年生が入っていった控え室とは別の控え室に向かった。
 「りっちゃん、何かあったの?」
 控え室に入り椅子に座ったまゆ先輩がりっちゃんさんに尋ねるとりっちゃんさんはどう言えばいいのだろう…と悩んだ顔をする。
 「えっと、まず確認したいんだけど、春香ちゃんとまゆちゃんがりょうちゃんに告白したって本当?」
 何故そんな質問をするのだろう…と思いながら春香とまゆ先輩が頷いた。それを見てりっちゃんさんはそっか〜という反応をして更に質問を続ける。
 「春香ちゃん、昨日、拓磨と何かあった?」
 「「「え…」」」
 りっちゃんさんの質問に僕たち3人は凍りついた。ぶっちゃけもう聞きたくない名前だったがあいつが何かしたのだろうか…と僕が考えてる横で春香がりっちゃんさんに昨日起こった出来事を説明していた。
 「なるほどね。あいつまたそんなことしてたんだ…本当に許せないわ……」
 春香の話を聞いたりっちゃんさんは怒りを露わにする。そして、りっちゃんさんはつい先程のことを説明し始めた。
 「まず、私がホールに着いた時にはもう取り返しつかないことになってた。今日、2限の授業が終わって1年生のほとんどがホールで昼食を食べてたみたいなの。その時に拓磨がホールに来てあることないこと1年生たちに吹き込んでりょうちゃんの印象を最悪の状態にした…あいつ人を丸め込むことだけは上手いから1年生たちに上手いこと言ったんでしょうね…実際、1年生たちが話していたことに嘘じゃないこともあるから否定しにくいところもあるし…本当にやり方が汚い…とりあえず、1年生たちの中でりょうちゃんとまゆちゃんの印象はめちゃくちゃ悪い…」
 具体的にどのようなことを言われたのかをりっちゃんさんに尋ねると、春香とまゆ先輩に告白された僕は平気で2人と付き合って二股していることをバレないようにしているクソ野郎…まゆ先輩は春香が僕のことが好きと知りながら春香から僕を奪おうとしているやばいやつ…春香は僕に二股されて親友のまゆ先輩に裏切られている可哀想な女、という感じらしい…僕と春香が同居していることや、僕とまゆ先輩がピアノ練習室に2人でいたり、まゆ先輩の車で2人で通学したりまゆ先輩の家にお泊まりしたという話までされていたらしく、その話を聞いた1年生は完全に誤解したらしい。二股云々はともかく、実際にお泊まりやまゆ先輩の車で通学したり、手を繋いで学内を歩いたり、春香と同居したりしているのも事実なので否定しにくいのがタチ悪い…
 「まゆ、みんなに誤解だって説明してくる」
 「やめといた方がいいと思うよ…まゆちゃんが必死に誤解って説明するのは逆効果になるかもしれない…とりあえず、りょうちゃんが二股してるってことは嘘だと思ったから及川さんに相談して、今、及川さんが1年生たちから拓磨に何を言われたか聞いてもらってたところ…あいつがタチ悪いのは何も知らない1年生を狙ったところ…去年のことがあるから2・3・4年生にそんなことを言っても相手にしないだろうしね….本当にやり方が汚くてムカつくわ…」
 「私が説明しても無駄かな…」
 春香がりっちゃんさんに尋ねるととりあえずしばらく放置した方がいいかも…と言う。
 「2・3・4年生はそんな噂信じないし、及川さんが否定すれば2・3・4年生は噂が嘘っていうことはすぐに納得する。そもそも拓磨が信用されてないから春香ちゃんに関わる噂を拓磨が流してたって知ったら疑うはずだしね…だから、りょうちゃんと春香ちゃんとまゆちゃんは今は動かないで他の2・3・4年生が噂を否定して1年生の間で噂が否定されるまで待つのが1番だと思う….」
 「たしかにそうですね…今、僕たち3人が慌てて噂を否定するのはよくないかもしれないですね…あの人が1年生以外から信用されてないなら噂はすぐに収まるはずですし待つのが1番ですね…」
 りっちゃんさんの意見に僕は納得するが春香とまゆ先輩は納得していない様子だった。優しい2人のことだから僕のことを考えてくれているのだろう。噂が否定されるまでの間、1年生の輪に僕が入ることができないことが目に見えているからだ。
 「春香、まゆ、僕はしばらく放置って言うりっちゃんさんの案に賛成だけど2人はそれで良い?」
 僕に聞かれてまゆ先輩は他にどうしようもないから仕方なくと言うような形でうん。と短く答えた。
 「まゆ、ありがとう。しばらくまゆも悪く思われると思うけどごめんね」
 「まゆは大丈夫…まゆは大丈夫だから、りょうちゃん、辛かったらまゆに言ってね。同じ学年の人に冷たくされるの辛いと思うから…」
 やっぱりまゆ先輩は優しいな。と思いながらありがとう。とまゆ先輩に答える。
 「春香は?」
 「私は…許せない…りょうちゃんとまゆちゃんが悪いみたいに言われるのが…私のせいでりょうちゃんとまゆちゃんに迷惑かかるのが許せない……」
 春香は申し訳なさそうに僕とまゆ先輩に言った。僕と春香とりっちゃんさんは春香の言葉になんて返せばいいのかわからないのだった。








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