お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

練習後のお誘い





 朝、目を覚ましたまゆは大学に行く準備を始める。身支度を終えて朝食を食べるためにリビングに向かう。すると、両親からあることを告げられた。まゆはこの機会を上手く使いたいな…とダメ元でいろいろ考えてみるのだった。


 朝、起きると横に春香はいなかった。昨日、春香と一緒に寝る約束をしたが、速攻で寝落ちしたため、春香と一緒に寝たのか不明だった。
 とりあえず身支度をしてリビングに向かうとすでに身支度を終えていた春香がおはよう。と声をかけてくれた。僕が春香におはよう。と返すともうすぐ朝ごはんできるから座って待ってて。と春香が言ってくれるが、座って待つだけというのは申し訳ないので、食器を出したりする手伝いをした。
 そして朝食を済ませてから、大学に登校して、それぞれ授業の教室に向かった。
 その後、1限と2限の授業を受けた後、3限の授業がある教室で購買で買ってきたパンを食べて3限の授業を受ける。
 そして、3限の授業が終わった後、教室を出ると教室の前でまゆ先輩が待っていてくれた。
 「りょうちゃん、授業お疲れ様。さっそくピアノ練習しに行こうか」
 「はい。よろしくお願いします」
 4限の時間、僕はまゆ先輩とピアノの練習をする。この時間、まゆ先輩は空いているが春香は授業があるらしい。学部内でクラス分けして行われる授業のようで、春香は明日の1限に授業がないが、まゆ先輩は授業があるみたいだ。だから、火曜日の4限はまゆ先輩にピアノを教えてもらい、水曜日の1限は春香にピアノを教えてもらう。ということになったのだ。
 「じゃあ、行こうか」
 まゆ先輩はそう言い、僕と強引に手を繋いで歩き始める。キャンパス内なので、当然人目について恥ずかしい。だが、まゆ先輩の幸せそうな表情を見ると手を離すことなんてできなかった。

 「じゃあ、りょうちゃん、さっそく始めようか、まゆの横に座って」
 ピアノが2台置いてある部屋に入って荷物を置き、まゆ先輩はさっそく横幅が広いタイプのピアノ椅子に座った。横に座ってと言うが、流石に一つのピアノ椅子に2人で座ろうという無茶振りはしないよな…と思いまゆ先輩が使おうとしているピアノの横にあるピアノの前に置かれていたピアノ椅子をまゆ先輩の横に持っていって座った。するとまゆ先輩は少しだけ不満そうな顔をした。
 「とりあえず基礎から始めようか、昨日りっちゃんと少し練習したんだよね?」
 「はい。難しくて全然できなかったですけど…」
 「そうだね。慣れれば簡単にできるようになるからまずはたくさん弾いて慣れよう。音に合わせて指が自然に動くようにゆっくり練習しようね」
 まゆ先輩はぎこちなく右手を動かす僕を見て笑いながら言う。
 「そのまま引き続けて」
 まゆ先輩はそう言い片手で基礎練習用の楽譜を頑張って弾いていた僕に合わせて伴奏を弾き始める。まゆ先輩の伴奏に合わせて弾くととても弾きやすく感じた。
 「すごい!最後までできたじゃん」
 初心者向けの基礎練習用の曲を片手だけだが、何とか最後まで弾き終えた僕にまゆ先輩が嬉しそうな表情で言ってくれる。
 「まゆ先輩の伴奏のおかげですよ。めっちゃ弾きやすかったです」
 「今は2人しかいないんだよ」
 「あ…えっと…まゆの伴奏のおかげでめっちゃ弾きやすかったよ」
 「うん。とりあえず今日はまゆが伴奏つけてあげるから少しずつまゆの伴奏がなくても弾けるようにしようね」
 僕が言い直すとまゆ先輩は本当に嬉しそうに笑顔で言う。
 「まゆって呼んでくれたしちゃんと最後まで弾けたからこの前みたいにご褒美あげようか?」
 「え…」
 「冗談だよ。まゆのご褒美はそんなに安くないからね」
 まゆ先輩は笑いながら言い、揶揄うように僕の唇に指を置いた。僕はずっとドキドキしてまゆ先輩を見つめてしまっていた。
 「ドキドキしてる?まゆは今、すごくドキドキしてるよ。ちゃんとまゆのこと見ててくれてありがとう」
 まゆ先輩はそう言いながら僕の唇から指を離す。僕のドキドキは勢いを増してしまっていた。
 「さ、練習しよっか。もっと上手にできるようになったらちゃんとご褒美あげるよ」
 まゆ先輩は笑いながら言う。ご褒美と言う言葉をまゆ先輩から聞くたびにこの前の夜のことを思い出してまゆ先輩のことを意識してしまう…
 その後、まゆ先輩と一緒に基礎練習用の曲を何度も弾いた。まゆ先輩は楽しそうに伴奏をしてくれて片手だけだが、少しはできるようになった。
 
 「あ、そろそろサークルの時間だしサークル行こうか」
 ずっとピアノを弾き続けていて気づかなかったがすでに4限は終わっていた。4限が終わって少し経つとサークルが始まる時間なので僕とまゆ先輩は荷物を持ってホールに向かおうとする。
 「ねえ、りょうちゃん、今日だいぶ上手になったよね」
 「そうですか?まゆ先輩…まゆのおかげだよ」
 まゆ先輩と言いそうになったので僕はまゆと言い直すとまゆ先輩は微笑んでくれた。
 「ちゃんとまゆのことまゆって呼べるようにもなったし、りょうちゃんにはご褒美あげようかなぁ…」
 「え…」
 まゆ先輩が甘い声で、誘惑するように僕に言う。
 「今日、家にまゆ一人しかいないからピアノ弾けるようになったご褒美にまゆの家にお泊まりしない?」
 まゆ先輩が身体を僕に引っ付けて言う。まゆ先輩の顔が見えないがきっと真っ赤に染まっているだろう。だって、まゆ先輩の身体がすごく温かかったから…
 「お泊まりって…え……」
 「お母さんが急に夜勤入っちゃってさ、お父さんも夜勤の日だから、家にまゆ一人しかいないの…まゆ、一人だと寂しいし怖いからりょうちゃんが来てくれたら安心なんだけどなぁ…」
 まゆ先輩は抱きつきながら僕の顔を見る。上目遣いで、顔は真っ赤に染まり眼元は少しだけうるうるしている。かわいすぎる…
 「ねぇ…お願い…今日だけでいいから…」
 まゆ先輩が甘え声で追い討ちをかけてくる。かわいすぎる……ドキドキしながらも理性を保とうとしていたが、理性を保つのはとても難しかった。
 「えっと…春香も一緒なら……」
 「春香ちゃんとは2人で生活してるよね。1日だけでいいからまゆもりょうちゃんと2人きりでいたいなぁ…」
 


 断れるわけがなかった…
 まゆ先輩がかわいすぎるから…
 僕の心はずっとドキドキしていた。
 僕は、今日1日だけ、まゆ先輩と2人でいることになった。







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