お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

いつものゲームと罰ゲーム






 「お母さん、まゆ今日春香ちゃんのアパートでお泊まりしてくるね」
 まゆはお母さんにそう言って慌てて自分の部屋に駆け込む。そして鞄に部屋着と明日の着替えなどを詰め込む。明日の着替えをどうするか少し悩んだがちょっと大人な感じの服にすることにした。そして、普段はしないが、明日少しお化粧しようかなと思いお化粧の道具も鞄にしまう。その際に、机に置いてあった鏡を見る。
 まゆは鏡に映る自分の顔を見て自分の唇に指を置く。先程、りょうちゃんと間接キス的なものをしてからずっとドキドキしていたが一人になって少し落ち着いて深呼吸して心をリセットする。
 まゆはみんなを待たせていることを思い出して急いで車に戻った。すごく幸せな気持ちでまゆはりょうちゃんの横に座り車の運転を始めた。


 「「お邪魔します」」
 まゆ先輩とりっちゃんさんは僕と春香のアパートに入りながら言う。僕たち4人はリビングに向かいまゆ先輩とりっちゃんさんは部屋の隅に鞄を置く。春香は4人分の飲み物を用意してソファーの前にあるテーブルに置く。その後、先にシャワーだけ浴びちゃおうと順番にシャワーを浴びた。最初に春香がシャワーを浴びて次にまゆ先輩、りっちゃんさん、僕という順番だった。僕がシャワーを浴びてパジャマに着替えてリビングに入るとすでにパジャマに着替えてドライヤーで髪を乾かし終わっている3人が楽しそうに話をしていた。

 ソファーには春香とりっちゃんさんが座っていたので、僕はソファーの正面に置いてある座布団の上に座った。横にはまゆ先輩が座っている。そして、まゆ先輩は眼鏡をかけていた。普段はコンタクトらしいが、入浴後は基本的に眼鏡らしい。見慣れないまゆ先輩の眼鏡姿はとてもよき。だった。まゆ先輩の横に座り春香とりっちゃんさんと向かい合うように座る。
 「じゃあ、さっそくゲームする?」
 まゆ先輩が言うと春香とりっちゃんさんは賛成と言いスマホを手放す。3人がよく遊んでいたゲームはワードウルフらしい。それを聞いて僕はワードウルフって3人でできるの?という疑問を抱いたが、お題の設定をしてくれるアプリがあるみたいなので3人でもできていたらしい。せっかくだから今回はアプリを使わずに自分たちでお題を考えよう!ということになった。

 ワードウルフのルールはゲームの司会進行を務めるマスターが多数派と少数派の2つのお題を設定し、それぞれに2つのうち片方のお題を教える。(この際に誰が少数派で誰が多数派かは教えないし、自分のお題が少数派か多数派かもわからない)
 今回の場合、多数派は2人少数派は1人となる。プレイヤー3人はお題に関する話を制限時間内に行い、制限時間終了後に誰が少数派かを多数決で決める。多数決で少数派を当てることができれば多数派の勝ちで少数派を当てることができなければ多数派の勝ち。また、多数決で少数派が当てられた場合、少数派が多数派のお題を当てることができれば少数派の逆転勝利となる。

 ルールはこんな感じなのでさっそく試しにやってみよう。となった。マスターはローテーションで行い、勝てば1ポイント貰える。マスターを1人1回ずつやった段階で市場ポイントが多い人は1番ポイントが少ない人に罰ゲームを命令できるというルールがりっちゃんさんの提案により実装された。



 まず、最初のゲーム、マスターはりっちゃんさんが務める。りっちゃんさんは少し考えた後、スマホに文字を入力し、あみだくじアプリで誰が多数派で誰が少数派かをプレイヤーに見られないように決定する。そして、LINEでそれぞれにお題を伝える。僕と春香、まゆ先輩は自分のお題を確認してさっそく話し合いスタートだ。
 「えっと、りょうちゃんと春香ちゃんはこれ好きかな?」
 まゆ先輩が僕と春香に尋ねる。僕と春香はそれぞれ好きと、まゆ先輩の質問に答えた。
 「今日食べたけど美味しかったよね」
 「うん。そうだね」
 「うん。めっちゃ美味しかった」
 春香の言葉に僕とまゆ先輩が返事をする。この時点で話が食い違っている様子はないがもしかしたら少数派が嘘をついて話を合わせているだけかもしれない。
 「これって何色でしたっけ?」
 「「赤色だよ」」
 春香とまゆ先輩が同時に答える。その答えに対して僕は赤色ですよね。と返事をして話し合いを続ける。
 その後の話し合いは魚介だよね?とかそういった類の話をするが、誰が少数派か見抜けるような材料は出てこなかった。
 そして、話し合いの時間が終わり投票に入る。
 「投票の結果、りょうちゃんが少数派という疑惑が生まれました。ちなみになんでそう思ったか聞いていいかな?」
 春香とまゆ先輩2人とも僕に入れたらしい、2人が判断した理由は僕が色についての質問をした時2人はほぼ同時に同じ答えをだしたからお互いが少数派ではないのではないかと思ったらしい。
 「じゃあ、りょうちゃんのお題を発表してね」
 「はい。僕のお題はサーモンです」
 「はい。少数派はりょうちゃんでした」
 僕は観念して、自分のお題を告げる。色についての質問をされた段階で僕は自分が少数派であると悟ったので、少数派だと気づかれないように立ち回っていたが失敗だった。だが、僕はまだ余裕があった。
 「じゃあ、りょうちゃん、多数派のお題はわかるかな?」
 「はい。多数派のお題はマグロ、ですよね?」
 僕は自信満々に答えた。最初の方に春香が言った今日食べたよね。という発言を覚えていたためこれ以外ないと思っていたからだ。
 「残念、多数派のお題は中トロでした」
 りっちゃんさんはまんまと引っかかったなとでも言うような表情で僕に答える。このゲームは春香とまゆ先輩の勝ちになり春香とまゆ先輩に1ポイント加算された。
 自信満々に答えたのに見事に予想を外した僕は少しショックだった。
 
 そして次のマスターは春香の番だ。
 春香はお題を考えて、あみだくじで多数派、少数派の決定を行いそれぞれにお題を送信した。
 そして話し合いが始まる。

 「私はこれ好きだけど2人ともこれ好き?」
 最初に問いを発したのはりっちゃんだった。りっちゃんの問いにりょうちゃんは好きです。と答えてまゆちゃんはちょっと苦手かなと答える。
 「一応確認ですけど食べ物ですよね?」
 りょうちゃんの問いに対してりっちゃんとまゆちゃんはそうだよ。と答える。
 「じゃあ、お二人はどうやって食べるのが好きですか?僕はやっぱり無難に揚げる系が好きです」
 「私は生かな」
 「まゆはあまり好きじゃないけど強いて言えば生が一番食べやすいかな」
 「ちなみにまゆちゃんは揚げる系で食べたことある?」
 「ないよ」
 「私もないや」
 この時点でまゆちゃんとりっちゃんはりょうちゃんが自分と違うお題でりょうちゃんが少数派だと気づいたみたいだ。そして、りょうちゃんも自分が少数派と自覚したみたいだ。2人はそれ以降りょうちゃんに合わせて話をするだけだった。りょうちゃんに余計な情報を渡さないようにしていたみたいだ。マスターの立場から見ているとりょうちゃんの自爆は本当に面白かった。
 話し合いの時間が終わり投票の時間、りょうちゃんはめちゃくちゃ悩んでいたがまゆちゃんとりっちゃんは迷わずりょうちゃんに票を入れていた。
 「投票の結果少数派はりょうちゃんでした。りょうちゃん、自分のお題発表して」
 「エビです」
 「エビのりょうちゃんは少数派でした。多数派のお題はわかるかな?」
 「わからないです」
 当然だ。情報が生で食べれることと食べ物ということしかわからないのだから…
 「多数派のお題はカニでした」
 「普通に考えて、カニを揚げる系の料理で食べることが無難って言う人早々いないよね」
 りっちゃんがそう言いながら笑うとまゆちゃんも頷きながら笑った。
 りょうちゃんは2連敗をして、まゆちゃんとりっちゃんにポイントが加算された。

 そして次はりょうちゃんがマスターだ。
 りょうちゃんはお題を考えてあみだくじをしてお題を送信する。
 お題を見た瞬間、3人はそれぞれ自分が少数派なのでは?と考えた。
 だが、深いところを聞いたらおそらく相手に自分のお題がバレてしまう可能性が高く。共通した情報を話し合っているだけで話し合いの時間は終わってしまった。
 投票の結果、春香が少数派となり春香がお題を発表する。春香のお題はピザまん。
 「春香は多数派なので少数派のまゆ先輩の勝利となります」
 ちなみにまゆ先輩のお題はあんまん。
 お互い、肉まんが多数派で自分が少数派なのでは?という考えになっていたみたいだった。

 次はまゆがマスターだ。
 まゆは3ポイント獲得したのでまゆが命令権を持つのは確定だ。現在、りっちゃんと春香ちゃんが1ポイント、りょうちゃんが0ポイントなので、りょうちゃんがビリになるのは確定済み。まゆは罰ゲームでりょうちゃんに何してもらおうか…と考えながらお題を決めた。
 お題を決めて話し合いが終わるのをまゆはそわそわしながら待っていた。その間ずっとりょうちゃんに何をしてもらうかを考える。そうしていると話し合いは終わり春香ちゃんとりっちゃんが勝ち、りょうちゃんは負けた。

 「じゃあ、罰ゲームね。まゆちゃんはりょうちゃんに一つだけ命令して」
 りっちゃんさんがまゆ先輩に言うとまゆ先輩は少しもじもじしながら小さな声で命令を口にした。
 「まゆがいいって言うまでまゆを抱きしめて」
 え…と僕が戸惑っているとまゆ先輩が早く!と催促してくる。戸惑いながら僕はまゆ先輩を軽く抱きしめるとまゆ先輩は僕にピッタリと引っ付いて抱きしめ返してきた。何これ…罰ゲームじゃなくてご褒美じゃん………りっちゃんさんがニヤニヤしてこっちを見ている横で春香が少し不機嫌そうにしているのが少し怖かった………
 そして何より、僕の腕の中ですごく幸せそうな表情をしているまゆ先輩を見て僕はすごくドキドキした。そして、まゆ先輩はやっぱり僕のこと好きなのかな?と思うようになってしまった。






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