お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

親友として




 私は1日中ずっとモヤモヤしていた。
 私はどうすればいいのだろう。と1日中考えていた。
 今日1日ずっと、りょうちゃんからもまゆちゃんからも連絡がない。2人でお出かけ楽しんでるのだろうなと考えると心が苦しくなった。やはり、まゆちゃんに対してやきもちを焼いているのだろう。
 私はどうすればいいのだろう。悪い方向にばかり想像が進んでいく。もし、今日、りょうちゃんが帰ってきてまゆちゃんと付き合っていたらどうしようと…
 今日ではなくとも、将来的にりょうちゃんとまゆちゃんが付き合うことになったら私は2人とどのように関わるのだろう…と…
 もし、まゆちゃんがりょうちゃんのことを好きになったとしていたら私はまゆちゃんを応援できるのだろうか…と…
 私はまゆちゃんのことを親友だと思っている。そのまゆちゃんに好きな人ができたとなったら私は応援したい。でも、りょうちゃさんだけは渡したくない。ずっとずっと、大好きだったから…
 私はまゆちゃんの親友としてどうすればいいのだろう…
 私のこの勝手な考えがただの思い込みであるように願うことしか私にはできなかった。
 外はすでに薄暗くなっていた。まだ、りょうちゃんは帰ってきていない。
 「りょうちゃん…寂しいよ……早く帰ってきて……」
 「ただいま〜」
 私の声に答えるように玄関からりょうちゃんの声がした。私は慌てて笑顔を作ってりょうちゃんを出迎えた。

 「まゆ先輩、今日はありがとうございました」
 「いえいえ、まゆの方こそありがとうだよ。楽しかったよ。また今度出かけようね」
 まゆがそういうとりょうちゃんは笑顔ではい。と答えてくれた。私はりょうちゃんにじゃあね。と言い車を走らせる。りょうちゃんはずっとアパートの前で見送ってくれていた。
 りょうちゃんを送った後、私は車を走らせて帰宅する。車を駐車場に止めて家に入りまゆの部屋の扉を開けて部屋に入りベッドの上で横になる。心が痛い。りょうちゃんと手を離してからずっと心がズキズキと痛んでいた。
 私は鞄からスマホを取り出して今日撮った写真を確認する。お昼に一緒に撮った写真、りょうちゃんがクレーンゲームをやっている時にこそっと撮った写真、海辺にいるりょうちゃんの写真、そして海を背景に2人で撮った写真。それらを見つめた後、私は深いため息をする。
 これが恋というものなのだろう。
 いつからだろうか…昨日、ずっと春香ちゃんから話を聞いていたりょうちゃんに初めて会って、春香ちゃんが好きな子って実際はどんな子なんだろうと思って興味本位でLINEして、春香ちゃんの話をした流れから今日一緒に買い物に行って、2人で海に行って気がついたらまゆはりょうちゃんのことが好きになっていた。
 好きなったきっかけはなんだろう…春香ちゃんから聞いていた通り、りょうちゃんは優しくて気が利くすごくいい子だった。でも、それだけじゃない。りょうちゃんは一緒にいてすごく落ち着くのだ。一緒にいて楽しいのだ。この人とずっと一緒にいられたらまゆは幸せになれるんだろうな。と思ってしまったのだ。
 「春香ちゃんに申し訳ないな…りょうちゃんにも申し訳ないや…」
 春香ちゃんがりょうちゃんのことを好きなのは春香ちゃんからずっと聞いていたので知っていた。まゆは春香ちゃんの親友としてずっと応援していた。りょうちゃんの態度を見たりしているとりょうちゃんが春香ちゃんのことを好きなのもよくわかる。もし、まゆがこんな感情を抱いていなかったら早くくっついて幸せになれよ。と思っていただろう。
 だが、私は今、春香ちゃんに嫉妬をしている。好きな人に想ってもらえている春香ちゃんに対して嫉妬をしている自分に嫌気が差した。
 親友として春香ちゃんには幸せになってもらいたい。これはまゆの本心だ。
 だけど、まゆは初めて好きになれた人と幸せになりたかった。たぶん、勝ち目がないのはわかっている。でも、諦めたくないのだ。
 「だって、やっとずっと一緒にいたい。って思える人と出会えたんだもん」
 まゆは泣きながらそう呟いていた。まゆの手にはりょうちゃんの写真が写った画面が表示されているスマホがあった。その画面を見てまゆの瞳から大粒の涙が流れた。
 春香ちゃんには幸せになってもらいたいけどりょうちゃんは渡したくない。矛盾した感情がまゆの心の中でぶつかり合っていた。
 「諦めたくない…諦めたくないよぅ…」
 まゆは泣きながら布団に蹲り呟く。この感情だけは大切にしたかったのだ。やっと感じられた人を好きになるという感情だけは…
 どれだけ頑張ってもこの感情は消えないだろう。だから、まゆは頑張ることにした。勝ち目がないのはわかっている。でも、納得のいくまで頑張ってみようと思った。
 春香ちゃんには幸せになってもらいたい。だから、春香ちゃんがりょうちゃんと結ばれたらまゆは嬉しい。春香ちゃんの親友として祝福したい。でも、諦めたくない。だから、春香ちゃんとりょうちゃんが結ばれるまではまゆも精一杯頑張ろうと思った。







コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品