お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

2人で帰宅





 合奏が終わった後、楽器を片付けていると春香はいろいろな人から話しかけられていた。大体が僕との関係についての話のように聞こえることがすごく気になったが…
 楽器を片付け終わると春香がホール内の楽器庫に案内してくれる。僕は入部が強制的に確定したため楽器庫に楽器を置いていっていいとのことだったのだ。
 僕と春香は楽器庫に楽器を片付けて2人で帰宅することにした。
 「春香ちゃん、今から帰るの?よかったら乗ってく?」
 僕と春香がホールの出口に向かっていると後ろから可愛らしい感じの女性が春香に話しかけてくる。
 「あ、まゆちゃん。お疲れ様。ごめんね。今日はりょうちゃんと一緒に帰るから…」
 「へー、この子が春香ちゃんの同棲相手なんだぁ」
 「ちょっとまゆちゃん…同棲じゃないから…誤解を招く言い方やめてよ」
 春香が顔を真っ赤にしながら言う。
 「ごめんごめん。えっと、りょうちゃんだよね。春香ちゃんから話聞いてるよ。私はまゆ、サックスパートでテナーサックスを担当してます。春香ちゃんとは仲良くさせてもらってるからりょうちゃんもよろしくね」
 「はじめまして、春香がお世話になってます」
 「ちょっと、りょうちゃん…そんなお母さんみたいなこと言わないでよ」
 春香がそう言うのを聞いてまゆ先輩は笑う。
 「お母さんって言うよりかは旦那さんだよね」
 「違うから!」
 まゆ先輩が春香をからかうと春香は全力で否定する。
 「ごめんね。そんなに怒らないでよ…」
 「別に怒ってはないけどさ…いろいろ誤解されそうだから気をつけてよ…」
 「誤解も何もいくら幼馴染みとはいえ男と同居してたらみんなそう思っちゃうと思うよ」
 「そうかもしれないけど…」
 どうやら僕と春香が同居してることは広まっているらしい…春香のためにも出来る限り隠そうと思ったのにな…
 「でも、春香ちゃんが男の人と同居する。って聞いた時はかなり驚いたけど、良い人そうで安心したよ。りょうちゃん、春香ちゃんのことよろしくお願いします」
 まゆ先輩はそう言いながら僕に頭を下げる。こんなことを言ってくださる友達が春香にいたことに感激しながら僕ははい。と言い頷いた。
 「じゃあ、2人の邪魔しちゃ悪いから私は先に帰るね。いくら同居したばかりだからって夜イチャイチャするのはほどほどにしときなよ」
 「そんなことしてないから!」
 僕たちをからかって逃げ去っていくまゆ先輩に聞こえるように春香が言う。後から聞いた話なのだが、まゆ先輩は車通学みたいで部活が終わった後はよく春香をアパートまで送ってくれていたらしい。今日もいつもみたいに一緒に帰ろうと話しかけてくださったようだ。
 まゆ先輩が逃げるように立ち去った後、僕と春香は2人でアパートまで歩く。
 周りはすでに暗く、田舎道のため灯りも少ない。春香が怖いからと言って僕と手を繋いでくれたことが嬉しかった。
 アパートまで手を繋いだまま2人で歩いたのだった。





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