お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

3人で外食




 「いらっしゃいませ」
 りっちゃんさんの案内で到着したラーメン屋さんに入ると店員さんがテーブル席に案内してくれる。
 「ちょっと、春香ちゃん。こっちはダメだよ。ちゃんとりょうちゃんの隣に座りなさい」
 りっちゃんさんの横に座ろうとした春香をりっちゃんさんは強引に僕の横に座らせる。
 「さてと…何頼む?今日は入学祝いってことで先輩が奢ってあげるから好きなの選んでいいよ」
 りっちゃんさんがそう言いながら僕の前にメニューを広げてくれる。僕はりっちゃんさんおすすめの辛味噌ラーメンを注文した。りっちゃんさんも辛味噌ラーメンを頼み春香は卵とじ豚骨チャーシュー麺というすごいボリュームがありそうなものを注文していた。
 「では、改めて自己紹介させてもらうね。私は山森凛花、春香ちゃんと同じ2年生で春香ちゃんの友達です、みんなからはりっちゃんって呼ばれてます。吹奏楽部でバストロンボーン担当してるからりょうちゃんがチューバで入ったら低音仲間として頑張ろうね」
 「春香の友達…春香がいつもお世話になってます。本当か人見知りだから友達がいるか心配だったので…」
 「ちょっと、りょうちゃん!?」
 「あはは…まあ、春香ちゃん最初の頃は人見知りすごかったもんね…春香ちゃん、チューバの先輩と全く話せなくてさ、何か言われたら首を縦に振るか横に振るかしかしなくて困ってたの。しかも、練習時間も合奏とかパート練習以外の時間はホールの楽器庫に一人で閉じ籠って練習してたし…私たちが仲良くなったのも割と最近だしね」
 「ちょっと、りっちゃん、余計なこと言わないでよ…」
 りっちゃんさんの話を聞いていると春香は昔から変わってないなと思う。春香はパート練習とか合奏があまり好きではなく出来る限り一人で練習しようとするが、本当に練習熱心でずっと真剣に吹き続けてる。そんな努力家なところも変わってないみたいだ。
 その後、僕とりっちゃんさんは春香のことを話していた。春香は恥ずかしそうにもうやめてよーと呟いている。かわいい。
 「そういえば、りょうちゃんは吹奏楽部に入るのかな?」
 「はい。入らざるを得ないと思ってます」
 「まあ、そうだよね」
 りっちゃんさんは春香の方をチラッと見ながら頷く。
 「楽器はどうするのかな?チューバ続けるの?それとも別の楽器試してみる?」
 「りょうちゃんはチューバだよ」
 僕に返事をさせる間すら与えずに春香が答える。
 「はい。こうなると思ってチューバ実家から持ってきたので…」
 「覚悟は出来てたんだ。マイチューバっていいね」
 「はい。僕に拒否権や選択権はないんで…同じ低音族としてよろしくお願いします」
 「うん。よろしくね」
 僕とりっちゃんさんのやり取りを春香は満足そうな表情で伺っていた。
 そんなやり取りをしていると注文した料理が運ばれて来た。辛味噌ラーメンはちょっと辛めだったが本当に美味しかった。春香が頼んでいた卵とじ豚骨チャーシュー麺は名前だけでなく見た目のインパクトも凄かった。
 
注文した料理を食べ終わりお会計をお願いする。りっちゃんさんが奢るよ。と言ってくれたが申し訳ないので僕も春香も鞄から財布を取り出した。
 別会計はできないみたいなので一旦りっちゃんさんが代表してお会計をしてくれた。
 お会計が終わり店を出て僕と春香はりっちゃんさんにお金を渡そうとする。
 「あ、レシート貰うの忘れちゃった。正確な値段わかんないしな…申し訳ないからお金はいいよ」
 そう言いりっちゃんさんは僕と春香から絶対にお金を受け取ってくれなかった。始めからこうしようって決めてたんだろうな…奢り方がめちゃくちゃかっこいい気がする。
 僕と春香はりっちゃんさんにお礼を言い帰路に着く。りっちゃんさんも僕と春香のアパートの近くで下宿しているようなので途中まで一緒に帰ることになった。



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