お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

始めての朝



 「ん…りょうちゃん…おはよう…」
 朝の8時に春香のスマホのアラームが鳴りスマホのアラームを止めた春香が僕に言う。
 「おはよ」 
 「昨日はゆっくり寝れた?」
 春香が僕に尋ねるが僕は引きつった笑みを浮かべることしかできなかった。
 はっきり言って昨日の夜は全く眠れなかった。春香は僕の腕を抱き枕のように抱きしめていた。そのせいで春香の胸が僕の腕に当たりとても寝付けるような状況ではなかったのだ。
  「ねえ、りょうちゃんはさ、私のことどう想ってるの?」
 「え…」
 春香が僕に尋ねて僕は何て答えればいいのかわからなかった。答えは異性として好きが答えになるだろう。今、一緒の布団で二人で寝ている状況、そして僕との同居を受け入れてくれた状況、そして昨日の春香の態度を思い返すと春香が僕と同じ感情を抱いていると思っても間違いないのかもしれない。だが、もしそれが僕の勘違いでこの生活が崩れるきっかけとなってしまったら…と考えると怖かった。
  「どうしてそんなこと聞くの?」
  「えっと、その…だって…りょうちゃんの…あの…」
 春香は気まずそうに言う。なんとなく察しがついた僕は申し訳ない気持ちになったけど仕方なくないか…ずっと好きな人に腕を抱きしめられながら真横で寝られたらそういうこと考えちゃうよ…
 「え…いや、これは朝起きたばかりだから…」
 「あ、そうだよね。ごめんね。勘違いして…」
 「いや、わかってくれたなら大丈夫だよ。こっちこそごめんね」
 「うん。私、朝ごはんの準備してくるね」
 春香は慌てて立ち上がって部屋を出て慌ただしくリビングに向かっていった。
 僕は気持ちを落ち着かせてからパジャマを脱いで私服に着替える。そして洗面台で歯を磨いた。

 りょうちゃんに変なことを聞いてしまった私は慌てて部屋を飛び出した。
 それにしても私は何を言っているのだろう…朝食用に卵焼きを焼きながら先程のりょうちゃんとの会話を思い出す。思い出すだけで恥ずかしい…あの時、もしりょうちゃんが私のこと好きって言ってくれたら私もりょうちゃんのこと好きと言ってもしかしたらその後に変な展開になっていたかもしれない…
 起きたばかりのりょうちゃんを見て、私はりょうちゃんに異性として見られているのではないか?と思った。もしかしたらりょうちゃんも私のこと好きなのではないかという妄想を抱いて勢いのまま聞いてしまった。もしりょうちゃんが私のこと好きって言ってくれたとしてもいきなりそういう展開はちょっと無理かな…人見知りでそういうことに興味がなかった私はそういうことに対する知識が全くないのだ。どうせなら知識をちゃんと身につけてちゃんとりょうちゃんに満足してもらえるようになってからなどと考えてしまっていると卵焼きが焦げかかってしまった。
 私は慌てて卵焼きをまな板の上に載せた。何を考えているのだろう…と先程の考えを全て消し飛ばして朝食の準備に集中する。
 ちょうど朝食用準備を終えた頃にりょうちゃんがリビングにやって来た。
 私はりょうちゃんに先に食べてていいよと言い残して自分の部屋でパジャマから着替えて洗面台で歯磨きしてリビングに戻った。
 「あれ、りょうちゃんまだ朝食食べてなかったの?」
 「先に食べるなんて春香に申し訳ないよ」
 「そっか…待たせてごめんね」
 「全然大丈夫だよ。朝食用意してくれてありがとう」
 「うん。でもごめんね。卵焼きちょっと焦がしちゃっと…」
 「全然大丈夫だよ。少しくらい焦げてても美味しいだろうしさ、いただきます」
 りょうちゃんはそう言いながら卵焼きを口に運ぶ。卵焼きを食べたりょうちゃんは笑顔で美味しいと言ってくれた。
 朝食の卵焼きとほうれん草のお浸し、冷蔵庫にあった肉じゃが、味噌汁を全部美味しいと言って貰えて私はとても嬉しかった。
 朝食を食べ終わり私とりょうちゃんは二人で食器を片付けた。



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