お互いに好きだけど好きと言えない幼馴染の同居生活

りゅう

やらかし。


「あ、もうこんな時間、私お風呂にお湯入れてくるね」
春香はそう言って慌てて立ち上がった。時刻はまだ八時半、普通の大学生ならまだ全然起きている時間だ。だが、しっかりとしている春香は昔から十時過ぎには眠りにつく生活をしている。たまに寝れなくて日付けが変わっても起きている時があるが基本的に早い時間に眠りにつくのだ。
ていうか今思ったんだけどお風呂、どうすんの…春香が入った後に僕が入るのはあれだし僕が入った後に春香が入るのもマズイ気がする。だからといってどちらかが入った後またお湯を入れなおすのもなんかアレな気がする。
「あ、僕はシャワーだけでいいから」
悩んだ結果これが最適解だと僕は思った。
「何言ってんの。ダメ、ちゃんとお風呂入りなさい。りょうちゃん先に入っていいから…私、りょうちゃんの後でも別に気にしないし…なんなら昔みたいに一緒に入る……?」
「な、にゃ、な、何言ってんの!?」
「ふふふ、冗談だよ。相変わらずかわいいね。りょうちゃんは…」
春香は悪戯っ子のような表情をしながらリビングを出た。たぶん僕の顔は真っ赤になっているだろう。そういえば昔一度だけ春香と一緒にお風呂に入ったことがある。小学校低学年の頃だったはずだ。当時から僕は春香のことが好きだったが小学校低学年の僕には妙な知識がなかったので春香と一緒にお風呂に入ってもなんとも思わなかった。
僕がそんな昔のことを思い出していると春香がリビングに戻ってくる。
「たぶん、あと少しでお湯溜まるから先に入って…りょうちゃんがお風呂入ってる間に私、自分の洗濯もの洗濯しちゃうから…あ、あと…服とかはベランダに干すけど下着とかは私の部屋で乾かすから私の部屋には絶対に入らないで……あ、あと洗濯だけは自分でしてね」
春香は恥ずかしそうに僕に言う。いや、言われなくても洗濯くらい自分でしますとも。
春香に「わかった」と返事をして僕は風呂場に向かう。風呂場で服を脱ぎ一日の疲れを癒すために体を流して体を洗い、湯船に浸かる。

りょうちゃんがお風呂に入っている間、私はさっさと自分の洗濯物を洗濯機の中に入れた。洗濯をしている間に先程のチーズケーキを置いていた皿やマグカップなどを洗う。
やることが一通り終わった私は先程洗わずにソファーの前にある机の上に残しておいた私のマグカップを手に取る。そしてドルチェグストでコーヒーを淹れてスマホをいじりながらゆっくりと飲む。
「あ、りょうちゃんタオル持ってったかな?」
ふと心配になった私は部屋の隅の引き出しに入っているタオルを持って風呂場に向かった。そして風呂場の扉を開けてりょうちゃんに「タオル置いておくね」と言ってリビングに戻る。しばらくするとりょうちゃんがお風呂から出てリビングに戻って来た。私はりょうちゃんと交代で風呂場に向かう。そして服を脱ぎ下着だけの姿になって下着を外そうとした時、りょうちゃんがタオルを忘れていったことに気づく。私はタオルを手に取り風呂場の扉を開けてリビングに向かう。
「りょうちゃん、タオル忘れて……」
リビングの扉を開けた私を見てりょうちゃんはなんとも言えない表情をしている。顔を真っ赤にさせてこっちを見ないように目をキョロキョロさせているが私の方を見てしまっているような感じだった。
「あ……っっ……」
りょうちゃんがそういう反応をした理由が私にも理解できた。気がついた頃には顔は真っ赤になり目に涙が溜まっていた。恥ずかしさのあまり死にそうだった。
「りょうちゃん、忘れて…見なかったことにして…」
私は慌ててリビングを後にして風呂場に向かった。やらかした。下着姿でりょうちゃんの前に立つなんて…
あぁ、初日からやらかした。最悪の夜だ。と思いながら私はお風呂に入った。


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