彗麗~宮廷女官と妃、兼業中~

高緋ぴお

第一話

 彗麗はこの後宮で明蘭妃に仕えるただの女官だ。厄介ごとに関わるのを嫌う彗麗は、誰とも馴れ合わず過ごしている。
 
 だが、後宮は嫉妬や妬みが渦巻く女の園。従って、厄介ごとはいつもついて回る。
 
 彗麗が仕えている明蘭妃は、王の妃ではあるものの、地位はそこまで高くない。というのも、この国の王は大体が多くの妃を持つので、順列がどうしてもでてしまうのだ。まず一番に娶られた妃の位は高く、王妃と呼ばれる存在。次に娶られる妃は、ある程度地位が確立した父親を持つ娘で王子を産んだ、貴妃と呼ばれる存在。次にある程度の地位が確立している娘で、王子も王女もいない、妃。明蘭妃がこの妃に当たる。

「明蘭妃様は、どうしてお子に恵まれないのでしょう。私、悲しくて悔しくて仕方ありません。」
「それは、お渡りがないからに決まっているでしょう。ああ、私達女官の力不足に違いないわ。」

 女官は常に仕えている妃のことを第一に考え、自分のことのように悲しんだり自慢したり、いわばブランドのようである。
 馬鹿馬鹿しいな、と思う彗麗だが、明蘭妃には不思議と懐いていた。というのも、彗麗は明蘭妃に救われた恩がある。だから、明蘭妃にお渡りがないのは、彗麗でもなんとかしたいとは思っていた。しかし。

「彗麗。こっちへ。」
「どうされましたか、明蘭妃様。」
「あなたが一番信頼できる女官だから、言うわ。このことは、口外無用よ。」
「ええ。なんでしょうか?」
「私ね、王様以外の方を好きになってしまったの。」
「!?」

 それは、反逆罪ともとれる、驚きの内容であった。そしてこれから、彗麗は様々な厄介ごとに巻き込まれていく。

「推理」の人気作品

コメント

コメントを書く