魔王と歩む世界

太津川緑郎

二十一話 血塗られた巻物


 魔法軍な宿舎は、全て王都内のどこか建てられているが、その位置はバラバラだ。
 たとえば第一魔法軍であれば、ルーメニオン・アーク様の墓、つまりは王都の中心に建っている。

 第七魔法軍は、正門の管理を任された軍なので、自ずと宿舎の場所は正門近くに建っている。

「宿舎の形や内装は同じなんですね」

 そこはどこが優遇されている、ということはないみたいだ。
 僕とレグルスはギキョウ軍隊長の自室に招かれている。

「それでだが先ず、ルージュクイーンの事について話しておく、対象モンスターの星数は四だ」

 星四となると、完全敗北を喫したダークグリフォンと同等の力を持つモンスター。

「そのモンスターは、端麗な容姿で魔法師をおびき寄せ、接吻にて魔法師の体内の血を全て吸い取る。その血の中から容量だけを自分の体内に取り込み、残りを吐き出すんだ。今朝見たのはそれだ」

 わざわざ門の内側で血を吐いたのは、宣戦布告を国民に鮮明に記憶させるためというわけか。
 厄介な事に知能が付いているらしい。

「でも、ルージュクイーンがどこに潜伏しているかわかるんですか?」

「それはすでに判明しているんだ」

「では何故討伐隊を編成して、討伐に行かなかったんですか」

 実際潜伏先が割り出せているなら、どこぞの隊が討伐している事だろう。
 それを行っていないのは不自然だ。

「それがだな、人をターゲットにしたのはこれが初めてな事なんだ、いつもは同じモンスターをターゲットにしていたからな」

「何故ターゲットを人に変更したのでしょう?」

「モンスターの容量だけでは満足できなくなったんだろ、モンスターが持っている容量など人が持っている容量の十分の一程度だからな」

 門衛は基本的に二人体制らしい、平均値から割り出すと、ルージュクイーンが得た容量は、約一万ほど。
どのくらいで腹を待たせるのかは、わからないがまたそのうち来るだろう。

「待つんですか?」

「迎え撃つのではない! こちらから攻めいるのだ!」

「算段はあるんですか?」

 そう質問した途端に目を逸らし、レグルスの方を見た。
 助けと同調を求める目をしている。

「はぁ、算段はないんですね?」

「すまない! どこの魔法軍にも作戦参謀がいるのだろう? うちの軍はそれがいなくてな、元来第七魔法軍は正門の管理が大まかな仕事内容なのは知っているだろ? だから作戦参謀など必要とされていなかったんだ」

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