魔王と歩む世界
十八話 英雄
小雨の降る朝、第二連合軍は王都スザンティスの中央にある慰霊碑の横に隣接されるように墓が建てられている。
「黙祷」
ルシア軍隊長の一言で全員が目を閉じる。
その黙祷は大昔の戦いで亡くなった方とある英雄に対してのものだった。
墓にはこう刻まれている。
ルーメニオン・アーク ここに眠る。
この世界の御話にこういう話がある。
大昔の王都。
それは魔法軍も存在しない時代、とあるオッドアイの魔物が街を火の海に変えた。
その魔物を打ち滅ぼし英雄の名こそが、ルーメニオン・アーク様なのだ。
ここはその、ルーメニオン・アーク様の墓地らしい。
だが、彼が生きた時間はそう長くはなかった。
どんな強力な魔法を持っいる魔法師でも、時間と病には勝てない。
享年四十二歳の若さで、英雄は亡くなった。
だがその短い生涯で多大な功績を残した。
現にこの魔法軍という制度を発足したのも、今の街を魔法の力で復元させたのも、ルーメニオン・アーク様に他ならない。
「ルーメニオン・アーク様は、どんな魔法をお使いになられていたんですか?」
「それが、わからないのだ」
ルシア軍隊長レベルでもわからない秘密事項もあるということだ。
確かに御話にも魔物を倒したのも、街を復元したもの、魔法の力の他にそのような力はないだろう。
「その人は僕たちアーク家の先祖様だよ」
そこには片手に傘、片手にスイートピーのような花の束を持った、テンザイナ・アークの姿があった。
「その人の魔法は空想魔法、頭の中で思い浮かべた空想を現実にできるんだ。それもリングを必要とせずにね」
「テンザイナさん、それって無敵じゃないです?」
「そりゃあ英雄だもの、それくらいの力は持っておいてもらわないとね」
テンザイナさんは墓に花束を供えた後、数秒間合掌してこの場を去っていった。
「私たちももう行こう。次の魔法軍が来てしまうからな」
この日は第一から第九まで全ての魔法軍の軍隊長が墓参りにくる。
同行は任意らしいが、第二魔法軍は全員参加が
「空想魔法か」
特質魔法にも力の強弱がある。
その中でも光魔法は汎用性に長けている魔法だ。
だが空想魔法となると格が違うだろう。
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