魔王と歩む世界

太津川緑郎

十四話 討伐成功?


「グレネードマンモスだ!」

最後尾にいた、シナリー副軍隊長が、そう叫んだ。
おそらく、グレネードマンモスの爆弾での攻撃だろう。

「一旦陣形を固めろ! ルシア軍隊長と俺が先頭に立つ! お前らも隙を見て攻撃をしろ!」

シナリー副軍隊長が叫んだ頃には、近くにいたはずのルシア軍隊長はもう居なかった。

と思うと前から、グレネードマンモスの悲鳴と思われる、雄叫びが聞こえた。

その近くから、ものすごい数の爆音と雄叫びが聞こえてくる。
後ろの魔法師が戦っているのだろう。

「僕も行かないと!」

リングを起動させると、二つの魔法を発動させる。

「ライトソード! ライトアーマー!」
( ライトアーマーは、光の力で全身を覆い、攻撃から身を守る魔法だ)

「秘策その一! ライトウィング!」

自作魔法の一つで、光で翼を模した魔法。
空の飛行を可能とし、空からの攻撃を可能とした。

グレネードマンモスの大きさなら、少々視界が悪くとも攻撃を当てられる。

「秘策その二! ライトアーチャー!」

自作魔法の一つで、光で弓と矢を模した武器、遠距離への攻撃を可能とした。
だが矢一本ごとに、十の容量を使う。

「喰らえ!」

弓に矢をつかえ、グレーネードマンモスの方向に矢を向け、射る。
的中したのか、醜い雄叫びをあげる。

その隙を見て、ライトソードで目を潰す。
急に視界が暗くなったからなのか、体勢を崩して倒れる。
その際倒れた勢いで風に襲われる。

「うわっ!」

風で流され、地に落ちてしまう。

「今だ! 全員で攻撃を仕掛けろ!」

ルシア軍隊長の激励により、各々が魔法を発動し、攻撃を仕掛けた。

「僕も負けてられないな」

ライトソードをもう一つ発動し、二刀流で攻撃を仕掛ける。
全員の一斉攻撃が効いたのか、呻き声をあげ、動かなくなる。

「グレネードマンモス、討ち取ったぞ!」

ルシア軍隊長の、勝利の一言に、所々から歓喜の声が聞こえてくる。
誰も失わずに、星三モンスターを討伐したんだ。
初任務にしたら大成功だろう。

「生きてたか」

どうやらレグルスも無傷だったようだ。

傷を負った人の一時的な治療し行い、夜になるまでにこの雪原を後にしなければならない。
夜になると、さらに吹雪が強くなり、遭難する可能性があるからだ。

「よし、総員行きの配列を組み、ラージホースの元に帰る、では行くぞ――」

最後の言葉を聞くまでに、空を巨大な生物が飛んでいることに気づいた。

「みんな逃げろ!」

それは伝説の生物に似た、生物だった。
鷹の上半身に、虎の下半身を持つ伝説上の生物。

「ダークグリフォンだと!」

ルシア軍隊長ほどの魔法師でも、酷く怯えている様子だった。
だがそれも一瞬のこと、次の瞬間には的確な指示を出し、総員退避させていた。

「ルシア軍隊長は行かないんですか?」

「すまんな、ミノル。後のことは頼んだぞ!」

ルシア軍隊長は、一人で戦い他全員を逃がす算段らしい。

「そうはさせませんよ!」

「早く逃げろミノル! お前は我が軍の希望であり、誇りなのだ! お前を死なせたとなると、第二連合軍の一生の恥にもなりかねない!」

「それなら――」

僕は、ルシア軍隊長を皆の方に突き飛ばした。

「シナリー副軍隊長! 後のことは、よろしくお願いします!」

グリフォンもこの吹雪の中、まだ全員の位置は把握できていないだろう。

「すまん!」


一名を残して、他全員をラージホースの元へ逃がすことに成功した。

「これでよかった。だって僕死なないもんね!」

精一杯の強がりをグリフォンにぶつけると、その声に反応してこちらへ飛んでくる。

「こい!」

そう言ったものの、魔法を発動する前に自慢の足で、引っ掻かれた。
どんどん血が溢れてきくる、痛みも止まらない。

「あぁー!」

ようやく、ライトソードが発動すると、攻撃しようとするが、高く飛ばれてしまい攻撃が当たらない。

「クッソ!」

次にライトウィングを発動しようとすると、足の爪で首を引っ掻かれた。

それ以降のことは、覚えていない。
ただ、時間稼ぎにはなっただろう。
それだけで及第点だ。

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