傷ついた翼

志月聖

4

二杯目のビールがテーブルに届けられると 急に真面目な顔をした。 

「お前にはなぁ、丸みってモンがねぇんだよ」 

真澄は飲みかけのグラスを下に置くと、自分の胸元に 一瞬視線を落とし鼻の頭に皺を寄せた。 

「どうせペッタンコですよ!」 
「ばぁか!そんな意味じゃねぇよ」 

お通しの塩辛に箸を伸ばしながら 
「何事にも一生懸命なのはいい事だがな・・ そう眉をきりりと吊り上げて肩肘張ってちゃ男は近づかねぇぞ。
ま、お前は男前過ぎんだよ。
もぉちっと、愛想振りまけよ」

 真澄が枝豆を指先で弾き出しながら露骨に 嫌な顔をすると宮沢はにやっと笑った。
 
「お前、このままじゃ行き遅れまっしぐらだぞ」 
…そうなったら省吾さんがもらってくださいよ・・

 喉まで出掛けた言葉を、ビールと一緒に流し込んだ。 

大学卒業後、真澄は迷うことなく『宮沢探偵事務所』を 就職先に決めた。

 真澄の口から再び小さなため息が漏れる。

 所長にとってわたしはどんな存在なんだろう? 

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