転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

51話

着替えると服を持って奥の個室へ通される。

「座って。着替えた服貸してくれる?」

「あ、はい。」

「んーやっぱり。見ない素材の服ね。透明なボタン1つとっても何が使われているのかしら?わからないわ宝石に似た何かと思ったけど違うみたい。特にこの伸びる素材。編み方もあるけれどこの伸縮性は服飾界の革命と言ってもいい。」

「そうでしょう?僕たちも初めは見慣れないものでしたから驚きましたが服飾関係の職業の方はやはり目がいい。」

「ルドルフ?もう話していい?」

「いいよ。ルーカスさんも悪いようにはしないだろうし。」

「もちろんよ。貴方の知識は莫大なお金を生むはず。うちも大きいわけじゃないし、出来ることには限りがあるもの。むしろ私に話していいのか心配になってきたわ。」

「メルヴィルさんの肝いりだし、そう簡単に真似できるわけではないので大丈夫だと思います。それに別にお金より着たい服を安く売ってくれれば十分ですし。」

「いえ、むしろこちらからうちの提供する服を着て出歩いてほしいわ。カイトくんは容姿もいいから宣伝にもなるでしょうし。」

「そんな事ないですよ。それに着せたいものと着たいものは違いますし。とりあえずは僕の着てた服の知識ですか。そんなに詳しいわけじゃないですが、いいですか?」

「もちろんよ。あとこの服はしばらく貸しておいてほしいわ。縫い方やデザインは参考になると思うから。」

「わかりました。」

「カイト、買い物と下見もあるから時間かけられないよ?」

「あ!そうだった!」

「それなら後日デザインとかを羊皮紙か何かに書いて渡してくれる?形だけなら今でもなんとかなるでしょうし、着ていた服も研究したいもの。話は後日でも聞けるんだから。」

「ありがとうございます。じゃあ今日は当面必要な服を買って帰りますね。」

「安くしとくわ♪」

そう言うとルーカスさんは要望通り下着3着に服を2着見繕ってくれた。

「今着てる服はそのままもらって。着てくれたら宣伝になるし、お詫びと服を見せてくれるお礼よ。買った方はちゃんと貰うわ。」

「そう言う事なら。ありがとうございます。」

「じゃあなるべく早めに次来てくれるのを待ってるわね♪」

「近いうちにデザイン描いて持ってきます。ではまた。」

店を出るとそれまで黙ってたガイツとアリスが口を開く。

「凄い人だったな。いろんな意味で。」

「女の人…じゃないんだよね?男の人でもないけれど。」

「あの人は体は男なんだけど心は女の子なんだよ。偏見はあるかもしれないけれど本人も悩んだ末にあのスタイルになったんじゃないかな?はじめは普通に話してたじゃん?」

「偏見はないけどびっくりした。ああいう人も居るんだな。」

話しながらも次に向かうはアリスおススメの革鞄屋さん。北通りから路地を通って東の工業街に抜ける途中にその店はあった。入り口は全開しており、狭い、いや細い店内の両側の壁に沢山のバッグが掛かっていた。奥に会計場所だろうか?カウンターがあり、アリスよりも少し幼いくらいの女の子が店番をしていた。

「あ!アリスだ!いらっしゃい!」

「ナーザ久しぶり。バッグ買いに来たよ。この人が。カイトっていうの。」

「よろしくね。俺は冒険者のカイトだ。」

「いらっしゃいませカイトさん。私はナーザです。ガイツさんとルドルフさんもお久しぶりです。」

「ナーザは孤児院を出て、住み込みでここで働いてる。裏に工房があるんだよ?」

どうやら店子の様に成人前から店が後見人になり住み込みで働き始め、ゆくゆくは鞄を作る修行をするらしい。

「まだ言葉遣いと店にある鞄の造りや良し悪しを勉強してるの。ギルさんは凄いんだよ!この前生地や革の仕入れにも連れて行ってもらったの!」

「よかったね。地道に頑張るのよ。」

アリスは優しい目を向けて言う。

「今日は仕事で使うバッグを買いに来たんだ。何かお勧めのものはあるかい?」

そう聞くとすぐに反応がある。

「冒険に行くなら丈夫な方がいいよね。それでいてなるべく重くなくて邪魔にならないものなら…。」

トコトコと店のなかを歩き1つのバッグを手に取る。

「これなんていかがでしょう?ピッグの革をなめした軽いバッグです。少し柔らかくて肌触りが良く同じ素材のショルダーストラップが繋がっています。もしくはこちら。フォレストウルフの革でできており、ウォーターバイソンのショルダーストラップ。こっちは長さ調節ができ、体にフィットさせられます。」

笑顔でナーザが勧めてくれた。

「んー動くことを考えるとフォレストウルフのほうかな?」

「ピッグの長さ調節できるものはないのかな?」

「ないです。手直しする場合は別料金がかかります。」

「おーいナーザお客か?」

話しているときに店の奥から40半ばか後半の空色の髪をした男性が顔を出す。

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