転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

30話 冒険者組合

冒険者ギルドの裏手には解体所が併設されていた。そこは長年使われている外観とは裏腹に中央によく磨かれた金属製の台が置かれ、タイル張りの床も壁に掛けられた道具も清潔感が保たれている。部屋に入ると数人が待機しており、往年の1人の男が話しかけてきた。

「初めて見る顔だな。俺はケイン。皆は親方などと呼ぶが好きに呼んでくれ。それよりも久しぶりの生きたホーンボアだな。最近の若いもんはみんな殺しちまって持って来やがる。もったいねえ真似しやがって。流石だなガイツ。」

灰色の短髪と引き締まった体、澄んだ目をした男が言う。

「おやっさん。今日のはコイツが狩ったんだ。」

「初めまして。まだ冒険者でもない遭難者のカイトです。がいつさん達にアドバイスしてもらって強化魔法を掛けてもらってなんとかですし、1人では持ってこれませんでしたから」

「そいつぁー驚いた!すまなかったな。アドバイスがあったとしてもなかなか倒せるもんじゃねえ。てっきりガイツかルドルフ坊だと思っちまった。まあ仲間が居てこそを忘れないのは良いことだ。『朝焼けの月』の新人かい?」

「いや遭難者を見つけて連れて来る途中に試しにやらせてみたんだが、いい腕してるだろ?」

部屋の奥には密閉された部屋が隣接されている。話を聞くと、部屋全体が魔道具の作用により密閉すれば常に一定の温度が保たれる冷凍庫なのだと話してくれた。

天井に滑車でホーンボアを吊るし毛を剃って洗ってから首を落とし、血抜きし解体するらしい。

話の合間にそれぞれが奥の荷台に収穫を広げ、メルヴィルが用紙に鑑定結果を書き記し査定する。

「カイトくん、貴方もあるなら出して。いまのうちに鑑定しておくから。」

「はーい、わかりました。」

解体作業も気になるが、荷物を出せば見られるだろう。

手持ちの物は結局ウサギとヘビの魔石とヘビの皮。あとは食べられるかわからなくて放置して乾燥した木の葉や野草、キノコなんかか。木の実はほとんど食べてしまったし蛇肉の燻製は結局アリスにあげてしまった。恐らく明日にはもうないだろう。

物を台に広げ、鑑定結果を待つ間、ケイン親方の解体を見る。

血抜きが終わり後解体が始まった。流れるような手捌きでホーンボアが解体されていく。皮を剥ぎ終わると身を一度軽く水洗いされ、内臓をかき出し金属台に部位分けされていく。部位ごとに処理があるのだろう。処分される部分と残される部分は使えるかどうかだろうか。ほとんどの部分は残されて、腸管は洗浄と書かれた桶に入れられる。

腸管類は生活魔法だろうか、スタッフが呪文を唱え洗浄していく。

イノシシの肋骨は片方ずつに分かれて繋がっており、頸部近くだけ繋がっている。心臓を取り外す時、心膜の内側からゴロッと拳大の魔石が出てきた。

「お前ら欲しい部位はあるか?というか肉は売るのか?」

「全部食べる!」

親方の問いかけにアリスが間髪入れずに反応する。

「アリス、多分お前には聞いてない。俺はバラかな?」

「んー僕はいいかな。」

「俺は内臓も含めて色々べてみたいです!でも食べ切れませんよね。」

「ならこんなのはどうだ?」

いいことを考えついたとばかりに意気揚々とガイツが提案してきた。

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