転生バーテンは生き残る

海夏季コエル

11話黒い結晶

ムギュッ?

何だその音は!そしてどうして俺はひっくり返ってる?手元には確かにまだ片方の結晶柱がある

「おわっ!?」

バシャっ

水面から顔を出し先ほどの出来事を思い出す。そして手元を見つめる

「えっ?」

そこにあったのは確かに細い方の結晶柱…。

なのだが…その結晶中は握った部分が押しつぶされ、根元は飴を伸ばした様に伸びて途切れていた。

対する太い方も細い方とつながっていた部分が飴細工の様に伸びたままの形で固まり、水面から飛び出していた。

予想外の展開に思考が追いつかない。

「えーっと…いやまさかね。そんな…考えたら負けでしょ。いやそんなはずは。割れはするかもしれないとは思ったけどいやまさか伸びて切れるとは。」

そもそもどうして伸びたのか。いつでも触れば柔らかくなり伸びるのか。そんなことなら武器としては扱えない。せいぜい粘土か観賞用品にしかなり得ない。ナイフと鉈作りたかっただけなのにどうしてこうなった?他の人がやった場合はどうなのか。自分しかできない場合は知られない方がいいのか?。これならまさかの如意棒が作れる?いや、みたいだから伸びても縮みはしないのか。小さくもならないし。

訳がわからない。その一言に尽きた。

そもそも俺の知る結晶は硬いけど割れはする。でもこんなに伸びるものではない。ではここが異世界でそういう物体があるのか。はたまた新種の結晶を見つけてしまったのか。それとも俺にそんな能力があったのか。あったとすればどういうことができるのか。

考えに考えて考えた結果。考えることを放棄した。

つまり実験してみないことには始まらない。そもそも人体に影響があるのかないのかわからないがとりあえず今のところ害はない。

試しに形状を変えられるのなら変えてみて作ってみた後で使った時にクニャッとなるかどうか試してみよう。それにこれなら削ることもできるかもしれないし、何か作っているときに、刃の形を変えることもできるかもしれない。ここから脱出するのにも役立つかもしれない。そしてそれならできることの幅が広がる。

そう考えて男はます片刃のシンプルなナイフを作ることにした。
まず試さなければいけないことがある。
①どういう時に結晶を加工できるのか
②この結晶は切り離しても再びくっつくのか
③さらに切り離す時は伸ばすことなく切り離せるのか
④また変形させる時や変形後の硬度ははどうか
⑤手以外を使って加工できるのか

男は1つ1つ試していった。
①については、何となく力を込めて加工を意識し結晶を触ると加工できることが分かり、
⑤については、手で触っている時のみ他のものを使って加工できることがわかった。
②については、問題なく付着し、付着する部分は意識することで限定できることがわかった。
③については、手で触れている時にはカッターナイフでカットできることがわかり、カットした時に使用した物に結晶が付着することはなかった。
④については、変形時はやはり飴の様な延性や伸性を持っており触ると弾力はあるものの柔らかい。しかし力強く押しつぶすか伸ばすか曲げるかしないと変形せず、一方でカッターナイフで簡単に切ることもできた。また加工を意識しない場合、手で持って岩にぶつけても欠けることはないほどの硬度を持っていた。

そして試しに火に入れてみた。はじめは何もなかったが、揉み込んだ結晶からプスプスと音がする。
どうやら焼くと結晶からは空気が抜けていくようだ。焼くに連れ形状は少し収縮するがどうやら灰や炭は混ざらないようだ。
火から出すとまだ熱いが水に入れるとジュッという音と共にひび割れる。

「なるほど…これなら、ナイフを試作できるかもしれない。」

そう呟くと男はナイフ製作に注力するために一旦休憩を挟むことにした。

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