5話

内臓のうち、肝臓を切り離し、寄生虫がいないか、また病気になってないか見てみるとつるんと綺麗な様だ。

腸は糞を搾り取り洗って皮に晒しておく。

心臓は切り開き、血が溜まっていないか確認する。固まった血がなかったのでそのままでいいだろう。ベア様なら心臓と肝臓はこのまま生で食べそうだ。

しかしこの心臓近くに付いていた宝石の様な結晶はなんだろうか？まさかこれが魔石！？なんてまさかな。でもツノの生えたウサギはいた事だし…。まあ綺麗だし取っておくか。

その他臓器は小さいし刻んで魚の餌にでもしよう。拠点から離れた位置に放置しよう。蛆が沸けばなおよし。

さて次は肉だ。横隔膜は取ったし部位解体すれば後は骨つきのままで良い。今日食べる分は肋骨周りと心臓と肝臓だけにする。残りは後日にしよう。

背骨を折り次に頭部を折る。そして肩も折り筋肉と筋を切れば大雑把だが、頭部、前肢、胸部、下半身に分けられる。

カッター万能説。

多少欠けたがこれだけ油まみれでもきれればいい。


これで頭部、前肢で1日、胸部、心臓肝臓で1日、下半身で1日〜2日は食料として保つか。

人里までこれで保つのだろうか。心配しても仕方ない。ある程度は食べて消費カロリーを摂取しないと動けなくなる。さらに食は気分を良くしてくれる。マイナス思考に陥りたくはない。仕方ない、とりあえず行けるところまでは行かなければ。

「よしっ！」

そう気合を入れて両手のひらで頬を叩く。

「とりあえず飯だ！そして仮眠しよう！」

そう決めて焚き火の準備を始める。

風が下流から吹いているため、まずは同じくらい大きな石を風が通る様に崖側と手前に置き、U字溝の様な場所を作る。その間に松ぼっくりを置き、その上に流木の枝を折ってカッターナイフでフェザースティックを作り積む。徐々に太めの枝を積んでいく。

そして食材を刺す用に削っていた枝に心臓、肝臓、肋骨部を刺し、大きな石同士の間に渡す。

ほかの肉も刺し崖の出っ張りにツルを渡しU字溝の上の方に吊るす。

後は火をつけるだけ。準備は万端整った！

ジッポから1本余計に作っておいたフェザースティックに火をつけ、そのフェザースティックから松ぼっくりに火を移す。松ぼっくりに火がつけば徐々に太い枝の方へ火が昇る。

やっぱり火はいい。焚き火を見ると安心する。気をつけないと危ないけれどないと不安だ。
煙が吊るした肉に当たる様少し位置を調節する。

後は火が絶えない様に少しずつ薪をくべればいい。そして徐々に石に渡したお肉を回していく。

燃える炎の温かさ。流木が燃える匂い。それとともに焼ける肉の香りが食欲を駆り立てる。

現代において肉は身近なものだがこの大自然の中ではなかなか手に入らない。その分ありがたみを感じる。

焦げない様に丁寧に直接火が当たらない様にゆっくりゆっくり回す。徐々に肉に火が通り、じわじわっと肉汁と脂が垂れてくる。

表面が少しずつ色を変え、パリッとした頃が食べごろだ。