隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~
99話 家と場所
「これで全部か?」
「はい。これで全部です」
僕らはこの学園にある魔物の素材を保管するための巨大な倉庫で、変異種サイクロプス六匹と魔晶石一個を受け取った。これらは全て僕らが入学試験の時に手に入れた物だ。
これだけあれば色々と作りたかったものが作れるぞ。
「この機会に聞いておくが、他に欲しい素材はあるか? 金があればここで買取もできるぞ」
するとブレソウル先生が白い息を吐きながらそんなことを言ってきた。
この倉庫、魔物の素材を保管しているだけあってとても寒いのだ。クーラーの設定温度を氷点下にまで設定できるような魔道具がこの倉庫の中にたくさん設置されているためだ。
そんな倉庫の中にいる僕とネイは、腕をさすりながらここにある数多の素材をザッと一通り見た。
「……僕はありません。ネイは?」
「あたしも特にありません」
しかしめぼしい素材はあるものの、ここにはその魔物の血液が保管されていないため僕らが貰っても無用の長物となる。そのため先生の申し出はありがたいが、断らせてもらった。
「そうか。ならあとは俺が戸締まりをしておくから、二人は帰っていいぞ」
「「ありがとうございます」」
二人揃ってブレソウル先生に礼を言い、その巨大倉庫から出る。
「魔物の血液が無いから断ったのはわかるんだけど、ラインって鍛冶とかもできるって前に言ってたわよね? あそこにあった素材を使って武器とか防具は作らないの?」
するとネイが小声でそんなことを聞いてきた。小声なのは周りに僕らの話しを聞こえないようにするためだろう。その配慮はありがたい。
僕もネイに向かって小声で喋る。
「武器と防具は魔人の素材があるから、しばらくはそれでいこうと思っているんだ。ネイは何か欲しい物ってある? あれば作るよ?」
一応ネイには魔人の骨から作った短剣と僕と一緒の魔人の皮膚から作った防具を渡してある。だから特に今は必要ないと思って聞いたのだが、ネイは首を横に振った。
「今は無いわ。だけどラインの武器はどうするの? 誰かに見られないようにしながら隻眼の魔人になって地下迷宮で戦うわけにはいかないし、何も持っていないのも不自然じゃない?」
確かにその通りだ。いくら魔法だけで殆どの魔物を対処できるとは言え、何も持っていないのは不自然だ。
「たしかにネイの言う通りだね。何か適当な物を考えておくよ」
適当な物と自分で言ったものの、どうしようかな。せっかくならロマンを追い求めた武器を作ってみようかな。
頭の中で早速どのような武器を作ろうかとワクワクしながら考えていると、ネイが話題を変えてきた。
「それよりライン。住む家は決めた? あたしはまだなんだけど……」
そういえばもう既に僕達ゴールドクラスの住宅の受付は始まっているんだった。
「僕もまだ決めてないや。どうする? 冊子に載っている場所を片っ端から一緒に見に行く?」
どうせならネイと近い家に住みたいな。
そんなことを考えながら[ストレージ]からさっき教室でもらった冊子を取り出す。そこには学園から近い所から遠い所までいくつかの物件が載っているのだ。
それをパラパラと見ながら、なるべく二軒の家が近くにある物件を探す。
するとネイが僕のローブの袖をギュッと握ってきた。
「あの、さ。あたし達、一緒の家に住まない?」
顔を真っ赤に染めながら弱々しい声でそう言うネイ。
そんな顔をされたらなんだか僕も恥ずかしくなってくるじゃないか。もちろん答えはイエスだけど。
でも、きちんと考えてみるとネイの提案は悪くない気がする。
例えば僕が家を借りて、ネイが土地を借りるとすれば、僕らは家とどでかい庭を借りることができる。入学試験の成績を見ることができたり、学園側からの魔物の買取を拒否できるほどの特権がゴールドクラスには与えられているんだから、家じゃなくて土地を借りるくらいの融通は効くだろう。
そう考えると、やはり広大な庭付きの家を借りることができるのは結構魅力的なのでは? 庭や家の手入れは魔法があるから簡単にできるし、僕ら二人ならゴールドクラスからシルバークラスに落ちることは無い。何せ、入学試験の時点で三位の黄金マント君とは三倍以上も差がついているからね。かと言って油断はしないが。
ネイにイエスと返事をすると同時に、この考えをネイに伝えると彼女は目をキラキラとさせた。
「いいわね、それ! なら早速空いている土地の近くにある空き家を探しましょ!」
そう言って彼女も[ストレージ]からその冊子を取り出して早速パラパラとページを捲り始めた。
しかし……もし本当にこんな事が可能だとすれば、いや可能だろうけど、そんな広大な土地は何に使おうか。魔道具作りの為の土地として活用してもいいし、新しく植物や果物の栽培にチャレンジするのもいいかもしれない。
……そういえば実家で様々な事に興味を持って手を出してきたけど、食材とか料理の類にチャレンジしたことは無かったな。この世界の食べ物は美味しいけれど、それは『記憶』があるからこそ美味しいと感じる程度の物だ。前世の世界の食べ物と比べたら断然向こうの方が美味しい。
それなら僕が頑張ってネイに美味しい食事と言うものを食べさせてあげたいな。もちろん僕もハンバーグとかカレーとか食べたいが。
おぉ! そう考えるとなんだかワクワクしてきた!
他には何か無いかな? 広大な土地を使ってできること……。いや、土地だけ借りるのも味気ないな。この学園区域は海に面していたはずだから折角なら海に面した土地を借りよう。それなら海の幸も取れる。山の幸も欲しいけど……それは諦めた方がいいな。この学園区域には山が無い。
そうと決まれば……って勝手に一人で突っ走るのはダメだな。ネイとも相談しよう。
そうしてネイと話し合うこと一分後。
「流石ライン! 天才ね! そうしましょう! 早速海に面した土地と家を探しにいくわよ!」
彼女は僕の考えに一切反論することなく賛成してくれた。
先程ネイに説明しながら、冊子に海に面した土地と家が載っていないか探したのだが、残念ながらそんな場所は載っていなかった。
なので僕らはこの学園区域の土地を管理している土地管理局に向かう。
「該当する場所が一件あります」
「「ホントですか!?」」
土地管理局に来た僕らは早速目的の土地を探してもらった。すると運が良いことに一件だけそのような土地があったらしい。早速その土地の場所を教えてもらい、ネイと向かう。
僕達は[ブースト]と靴の[走力強化]を使い、超特急でその場所に来た。
そこは海に面した崖がある広大な草原にポツンと一件の白い家が建っている場所。その家の周りには緑以外何もない。もう少し他の建物がいくつかあるか思っていたのだが、その予想に反して人工物は何一つなかった。
うーむ。まさに理想的な土地と家! と思ったのだが……。
「凄い遠くまで来たわね……」
「そうだね……」
そこは学園区域の端っこであり、サミット学園とは学園区域の真ん中を挟んで反対側にある場所であった。
「はい。これで全部です」
僕らはこの学園にある魔物の素材を保管するための巨大な倉庫で、変異種サイクロプス六匹と魔晶石一個を受け取った。これらは全て僕らが入学試験の時に手に入れた物だ。
これだけあれば色々と作りたかったものが作れるぞ。
「この機会に聞いておくが、他に欲しい素材はあるか? 金があればここで買取もできるぞ」
するとブレソウル先生が白い息を吐きながらそんなことを言ってきた。
この倉庫、魔物の素材を保管しているだけあってとても寒いのだ。クーラーの設定温度を氷点下にまで設定できるような魔道具がこの倉庫の中にたくさん設置されているためだ。
そんな倉庫の中にいる僕とネイは、腕をさすりながらここにある数多の素材をザッと一通り見た。
「……僕はありません。ネイは?」
「あたしも特にありません」
しかしめぼしい素材はあるものの、ここにはその魔物の血液が保管されていないため僕らが貰っても無用の長物となる。そのため先生の申し出はありがたいが、断らせてもらった。
「そうか。ならあとは俺が戸締まりをしておくから、二人は帰っていいぞ」
「「ありがとうございます」」
二人揃ってブレソウル先生に礼を言い、その巨大倉庫から出る。
「魔物の血液が無いから断ったのはわかるんだけど、ラインって鍛冶とかもできるって前に言ってたわよね? あそこにあった素材を使って武器とか防具は作らないの?」
するとネイが小声でそんなことを聞いてきた。小声なのは周りに僕らの話しを聞こえないようにするためだろう。その配慮はありがたい。
僕もネイに向かって小声で喋る。
「武器と防具は魔人の素材があるから、しばらくはそれでいこうと思っているんだ。ネイは何か欲しい物ってある? あれば作るよ?」
一応ネイには魔人の骨から作った短剣と僕と一緒の魔人の皮膚から作った防具を渡してある。だから特に今は必要ないと思って聞いたのだが、ネイは首を横に振った。
「今は無いわ。だけどラインの武器はどうするの? 誰かに見られないようにしながら隻眼の魔人になって地下迷宮で戦うわけにはいかないし、何も持っていないのも不自然じゃない?」
確かにその通りだ。いくら魔法だけで殆どの魔物を対処できるとは言え、何も持っていないのは不自然だ。
「たしかにネイの言う通りだね。何か適当な物を考えておくよ」
適当な物と自分で言ったものの、どうしようかな。せっかくならロマンを追い求めた武器を作ってみようかな。
頭の中で早速どのような武器を作ろうかとワクワクしながら考えていると、ネイが話題を変えてきた。
「それよりライン。住む家は決めた? あたしはまだなんだけど……」
そういえばもう既に僕達ゴールドクラスの住宅の受付は始まっているんだった。
「僕もまだ決めてないや。どうする? 冊子に載っている場所を片っ端から一緒に見に行く?」
どうせならネイと近い家に住みたいな。
そんなことを考えながら[ストレージ]からさっき教室でもらった冊子を取り出す。そこには学園から近い所から遠い所までいくつかの物件が載っているのだ。
それをパラパラと見ながら、なるべく二軒の家が近くにある物件を探す。
するとネイが僕のローブの袖をギュッと握ってきた。
「あの、さ。あたし達、一緒の家に住まない?」
顔を真っ赤に染めながら弱々しい声でそう言うネイ。
そんな顔をされたらなんだか僕も恥ずかしくなってくるじゃないか。もちろん答えはイエスだけど。
でも、きちんと考えてみるとネイの提案は悪くない気がする。
例えば僕が家を借りて、ネイが土地を借りるとすれば、僕らは家とどでかい庭を借りることができる。入学試験の成績を見ることができたり、学園側からの魔物の買取を拒否できるほどの特権がゴールドクラスには与えられているんだから、家じゃなくて土地を借りるくらいの融通は効くだろう。
そう考えると、やはり広大な庭付きの家を借りることができるのは結構魅力的なのでは? 庭や家の手入れは魔法があるから簡単にできるし、僕ら二人ならゴールドクラスからシルバークラスに落ちることは無い。何せ、入学試験の時点で三位の黄金マント君とは三倍以上も差がついているからね。かと言って油断はしないが。
ネイにイエスと返事をすると同時に、この考えをネイに伝えると彼女は目をキラキラとさせた。
「いいわね、それ! なら早速空いている土地の近くにある空き家を探しましょ!」
そう言って彼女も[ストレージ]からその冊子を取り出して早速パラパラとページを捲り始めた。
しかし……もし本当にこんな事が可能だとすれば、いや可能だろうけど、そんな広大な土地は何に使おうか。魔道具作りの為の土地として活用してもいいし、新しく植物や果物の栽培にチャレンジするのもいいかもしれない。
……そういえば実家で様々な事に興味を持って手を出してきたけど、食材とか料理の類にチャレンジしたことは無かったな。この世界の食べ物は美味しいけれど、それは『記憶』があるからこそ美味しいと感じる程度の物だ。前世の世界の食べ物と比べたら断然向こうの方が美味しい。
それなら僕が頑張ってネイに美味しい食事と言うものを食べさせてあげたいな。もちろん僕もハンバーグとかカレーとか食べたいが。
おぉ! そう考えるとなんだかワクワクしてきた!
他には何か無いかな? 広大な土地を使ってできること……。いや、土地だけ借りるのも味気ないな。この学園区域は海に面していたはずだから折角なら海に面した土地を借りよう。それなら海の幸も取れる。山の幸も欲しいけど……それは諦めた方がいいな。この学園区域には山が無い。
そうと決まれば……って勝手に一人で突っ走るのはダメだな。ネイとも相談しよう。
そうしてネイと話し合うこと一分後。
「流石ライン! 天才ね! そうしましょう! 早速海に面した土地と家を探しにいくわよ!」
彼女は僕の考えに一切反論することなく賛成してくれた。
先程ネイに説明しながら、冊子に海に面した土地と家が載っていないか探したのだが、残念ながらそんな場所は載っていなかった。
なので僕らはこの学園区域の土地を管理している土地管理局に向かう。
「該当する場所が一件あります」
「「ホントですか!?」」
土地管理局に来た僕らは早速目的の土地を探してもらった。すると運が良いことに一件だけそのような土地があったらしい。早速その土地の場所を教えてもらい、ネイと向かう。
僕達は[ブースト]と靴の[走力強化]を使い、超特急でその場所に来た。
そこは海に面した崖がある広大な草原にポツンと一件の白い家が建っている場所。その家の周りには緑以外何もない。もう少し他の建物がいくつかあるか思っていたのだが、その予想に反して人工物は何一つなかった。
うーむ。まさに理想的な土地と家! と思ったのだが……。
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