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隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

91話 サイクロプスと宝箱

 変異種。
 それは他の同じ種族の個体とは違った特徴を持って生まれてくる魔物のことだ。例えばそれは腕の本数であったり、目の色であったり、このサイクロプスのように肌の色であったり……と。
 このような変異種はもちろん頻繁に生まれてくるわけではない。稀だ。だがその危険度は普通のそれより一段階上がる。
 普通のサイクロプスの危険度は一人前冒険者が数人集まって狩ることができる緑ランク、それも緑ランクの上位だ。だがサイクロプスの変異種は一段階危険度があがるのでその危険度は黄色ランク。熟練の冒険者が狩るような魔物だ。
 そんな魔物とネイを戦わせるのは危険と判断したため僕が相手をしたのだが……[魔掌底]で膝をついてくれて助かった。おかげで変異種特有のある特徴を活かされること無く無事に狩ることができた。






「……この試験のポイントが書かれた欄には変異種のサイクロプスなんて書かれていないので、これは僕らが貰ってもいいですかね?」






 全ての受験生に配られている、倒した魔物から得られるポイントが書かれた紙を見てみると、そこにはサイクロプスの変異種が書かれていない。
 つまりこのサイクロプスは倒してもポイントが得られない、言い方を変えれば試験の対象外なので、試験監督にこれを貰えるか交渉してみる。
 しかし試験監督は難しい顔をして少しの間考えている様子を見せた。そして口を開く。






「……いや、それはダメだな。君らも知っている通りこの地下迷宮は本来国から特別に許可を得た人間しか入ることはできない。つまりそれはこの地下迷宮で狩った魔物の素材は許可を得た人間だけがそれらを使うのも売るのも自由にできると言うことだ」






 ……国から許可を貰っていない僕らはこの魔物を持ち帰る権利は無いと言うことか。半ば予想していたことだが、いざ直接そう言われるとショックだな……。
 しかしその後試験監督さんは、けど、と話しを続けた。






「もし君達がサミット学園に合格し、迷宮探索権を得た暁には、この変異種のサイクロプスを君達が自由に使えるように僕も上に掛け合ってあげるよ」






 ただし、このサイクロプスが腐るまでという期限付きだけどね。と試験監督さんは苦笑しながら言った。
 なんて良い人なんだ、この試験監督さんは……!






「ありがとうございます!」






 僕は、恐らくこの変異種サイクロプスは学園の物として回収され、永遠に僕の手に戻って来ることなど無いだろうと思っていた。
 だけど試験監督さんがまさかそこまですると言ってくれるとは思っていなかったので、僕は感極まり、腰を九十度になるまで勢い良く頭を下げて礼を言った。






 そんなやりとりをした後、僕らはサイクロプス狩りを再開する。




 そしてある時、サイクロプスの出現と同時にボス部屋の中に木製の箱が出現した。






「ライン! あれってもしかしたら宝箱じゃない!?」






 それを見つけたネイが真っ先に声を上げた。それも声のテンションを二段階くらい上げて。
 でもネイのテンションが上がるのは無理もない。何せネイが言った通りそれは宝箱だったのだから。






「[魔光線]。ほんとだ、あれは宝箱だね」






 [魔光線]で一瞬の内にサイクロプスを狩り、ネイが指差す方向を見てそう答える。あ、試験監督さん、サイクロプスの回収お願いします。
 その宝箱にネイと二人で駆け寄る。近くで見ればそれは、いかにも鍵穴のない宝箱です! といった雰囲気を出している。






「ネイ、このまま開けちゃダメだよ」






 宝箱の蓋を開けようとしていたネイの手をソッと取り、そう注意する。もしかしたらこの宝箱は罠が付いているかもしれないからね。




 地下迷宮で得られる宝箱は基本的に三種類に分けられる。
 まず一種類目は宝箱。
 これは文字通り普通の宝箱だ。中には金銀財宝か、マジックウェポンやマジックアーマーと呼ばれる魔道具とは異なる武具や防具か、はたまたその魔道具が入っている。この迷宮に出入りする探索者達は当たりと呼んでいる。
 そして二種類目は罠付き宝箱。
 これは箱の中に入っている豪華な品物の種類は変わらないものの、その箱には細工がしてあり、箱を開けた瞬間にその細工が起動する仕組みになっている。その細工とは飛んでくる矢であったり、麻痺や睡眠を引き起こすガスが噴出するものであったり、と様々だ。
 そして最後の三種類目は罠箱と呼ばれる物だ。
 これは文字通り中には罠しか入っていない箱だ。そのため探索者達からはハズレと呼ばれている。




 これら三種類の箱の外見は全て同じなため、開けてみるまで箱の中がどうなっているかは分からない。
 そのため僕は金銭的欲求に釣られて箱を開けようとしたネイの手を取り、その行動を止めさせる。






「……ハッ!? そういえばこれにはお宝が入ってない可能性があったわね。すっかり忘れていたわ……」






 すると金銭欲に染まっていた意識が現実に戻ってきたネイは、そう言って慌てて手を引っ込めた。
 貧乏育ちだからか、ネイは時々お金が絡むとどこか抜けてるな。
 あと、僕が止めた理由は罠が仕掛けられている可能性があるからだからね? 別にこの箱の中にお宝が入っていないかもしれないから止めたってわけじゃないからね?






「……この箱の中身が何であれポイントは変わらないみたいだけど、取りあえず開けてみる?」






 目がミラになっているネイを見て僕がそう提案すると彼女は首を激しく縦に振って同意してきた。
 これもまたこの試験で得た物なので変異種サイクロプスと同様に学園側に回収されるんだろうけど、ネイはそこらへん理解しているのだろうか。
 ……お金のことになるとネイはポンコツになるからしてなさそうだな。
 まぁ、いいか。これも学園に合格してから先生に掛け合ってみよう。






「じゃあ、これからこの箱を開けるからネイは離れていてね」






「うん!」






 元気よく返事するのはいいんだけど、三歩だけしか下がらないのはどうかと思うよ。いや、まぁ箱を遠ざければいい話なんだけどね。
 さて。この箱をどうやって開けるかだけど……[魔糸]を使って開けてみるか。






「[魔糸]」






 先端部分の性質を粘着質に変えて[魔糸]を箱の蓋部分にとりつける。そして箱の後ろ側に立ち、離れた場所から引っ張ってやれば……お、空きそうだ。それならこのままさらに引っ張って……。
 蓋がゆっくりと開いた瞬間、ビュン! という音と共に白い何かが箱の正面に向かって飛んでいった。






「……何だ?」






 蓋を完全に開け放ち、これ以上の仕掛けが無さそうだと判断してから、箱から飛び出てきた何かを見る。するとそれは矢だった。それもただの矢ではない。鏃にヌラヌラと怪しげに光を反射する液体が塗られている。これは……麻痺毒だ。それもパララダケの。






「わぁ!」






 そうやって僕が箱から飛び出てきた矢を観察していると、後ろからネイの驚く声が聞こえてきた。振り返ってそちらを見ると、彼女は目をミラにしたまま箱の中を凝視している。どうやらあの箱は罠付きだったが、宝箱だったようだ。






「ライン! 来てよ! これ凄いわよ!」






 ネイが興奮した様子でそう言ってくるので、はいはい、と頷きながらネイの下に行く。






「ライン、これって宝石よね!? あたし初めて見たわ!」






 ネイの背後からその宝箱の中をヒョイと覗くと、僕は固まってしまった。
 なぜならその箱に入っていたのはエメラルド色をした丸い宝石ものだったからだ。

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