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隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

86話 魔力操作の技量と魔力量

 職員さんとの実戦形式の試験が終わり、僕らは次の会場へと向かう。次は運動場ではなくて屋内、それも第二体育館と書かれた場所だ。ちなみに第一体育館は昨日の筆記試験で使った講堂である。






「やっぱりここも広いな」






「そうね」






 第一体育館が電車の車庫程の大きさだとすると、第二体育館はそれの半分程の大きさといったところだろうか。それでも十分広いが。
 しかし僕らはもうこの感覚に慣れてしまったため特に呆然とすることは無く、スタスタと先導してくれている生徒の背中を追う。




 そうしてしばらく歩いているとようやく本日二回目の試験会場に着いた。
 そこにはダーツの的のような、幾つかの円が何重にも描かれた、傷だらけの大きな丸太が置かれてあった。あれが的か。




 二回目の実技試験はあの丸太に描かれている中心の円に向かって魔法を放つというものである。放つ魔法の大きさは具体的に決められており、学園が用意した透明な箱の中に入るサイズでなければならない。
 この試験は恐らく魔力操作の技量がどれだけあるのかを見るためのものだ。






「では最初の人、お願いします」






「はい」






 お、最初の子が前に出てきた。早速始めるみたいだ。さてさて普通の七歳児の実力を見せてもらうとするか。






「炎の性質を持つ小さき球よ、我が意に従い飛んでいけ! [ファイアーボール]!」






 何やら長々とした言葉を口にしながらその少年が放った[ファイアーボール]は、丸太に描かれている中心の円から少し離れた場所にポスッと着弾した。
 あれが噂の詠唱とやらか。わざわざ[ファイアーボール]一つ放つのにあれだけの時間をかけるとは時間がもったいない。魔法はイメージでなんとかなるんだから無詠唱で放てばいいのに。
 そんなことを思っているとその少年は小さくガッツポーズをして次の子に場所を空けた。いやいや流石に今のでガッツポーズはないでしょ。
 あ、次の子の試験が始まった。






「白に輝く小さき矢よ。我が意に従い敵を貫け! [ライトアロー]!」






 長々と詠唱を口にしたその受験生が放った[ライトアロー]は、先程の子と同じく中心の円から少し離れた場所にバスッと着弾した。そしてガッツポーズをする少年。
 いやいや、今のも詠唱いらないじゃん……ってもしかして無詠唱の方が主流じゃ無かったりする?
 耳を済ませばこの第二体育館のあちこちから詠唱をしていると思われる言葉が次々と聞こえてくる。もし魔法を放つ際に詠唱をすることが当たり前だとしたら……もしかしたらこの試験、案外チョロい?




 前の四人の試験が終わり、次はネイの番となった。前に進み出るネイの顔を見ればそこには緊張の色など見えない。恐らく彼女もこの試験のチョロさに気がついたのだろう。
 すると彼女は右手を上げて、その手のひらを丸太に向けた。そして魔力を使って強引に周囲の空気を圧縮していく。
 ……ネイさん? その魔法をここで使うのはちょっとやりすぎじゃないですか……?
 そんな僕の心境などお構いなしにネイは全力で魔法をぶっ放した。






「[風撃]!」






 ズドン! という音ともに彼女の放った[風撃]は一瞬で丸太の中心に描かれていた円に穴をあけた。しかし穴が開いていても貫通はしていない。どうやらネイなりに威力を抑えて[風撃]を使ったようだ。
 ネイが使った[風撃]の威力にホッとしていると、次は僕の番だということに気がついた。そろそろ呼ばれるはず……。




 しかしいくら待っても試験監督から呼ばれない。訝しんでそちらを見るとここまで先導してくれていた生徒や試験監督があんぐりと口を開けて呆然としていた。あ、同じ班の受験生達も同じ顔をしてる。そこまで驚くことかなぁ? まぁいいや。






「すいません。次、やってもいいですか?」






 このままではいつまでたっても僕の順番がまわってこなさそうなので、僕の方から試験監督に声をかける。






「……っは!? すいません、どうぞ!」






 すると試験監督は一度ハッとした後、僕のことをようやく呼んでくれた。やっと順番がまわってきた。
 とは言っても僕が放つ魔法は最初から決まっている。
 右手を開いて丸太に向けて、空気を圧縮する。そして小指の先程まで圧縮した空気弾を発射させる。






「[風撃]」






 ズバン! という音が第二体育館の中に響き渡った。
 僕が放った[風撃]は当然のように丸太に描かれている中心の円を打ち抜き、貫通させた。威力を調整したおかげで丸太だけ貫通し、その後ろの壁を貫通させなかった僕の技量を誉めてほしい。
 少し鼻高々にそんなことを思って周りをみると、ネイ以外みんな呆然としている。そしてネイは目をキラキラさせながら凄い! って言ってる。どうやら僕が放った[風撃]の絶妙な威力の調整はネイにしか分からなかったようだ。他の皆は相変わらず口を開けて呆然としている。






「次の試験会場に案内してください」






 ネイの下へ戻っても、案内役の生徒が呆然としていてなかなか進んでくれなかったのでそう声をかける。






「あ、あぁ。すまない」






 するとその案内役の生徒は我に返ったように返事し、案内役の務めを再び始めた。














 そしてやってきました第三体育館。ここもまた第二体育館と同じぐらいの広さがある。もはやこの学園の広大さに驚きを感じない。これが感覚が麻痺するってやつなのかな。






「これが今日の最後の試験ね」






「ん? あぁそういえばそうだったね」






 ネイが小声でポツリとそう呟いたのを聞き取った僕は、ここで行われる試験が今日の最後の試験だということを思い出す。
 最後の試験。それはどれだけの魔力量を保有しているのか調べるというものだ。
 その方法は簡単。横一メートル、縦十メートル程ある大きなスライム紙に魔力を流して、どれだけの長さを魔力によって変色させることができるか測る。これだけだ。






「はい、最初の子はこれを持って自分が限界だと感じるまで魔力を流してね」






 優しそうな女性の試験監督が最初の受験生にその大きなスライム紙の端を持たせる。
 そしてその受験生は一つ返事をした後、スライム紙に魔力を流し始めた。手元の部分から徐々に青色に染まっていくスライム紙。その変色域は手元が鮮やかな青に染まるにつれ、広範囲にどんどんとスライム紙を変色させていった。
 しかし最初はそれを変色させるスピードが早かったのだが、時間が経つにつれその速度も落ちていき、やがて止まった。だいたい二メートル強ぐらいが変色したな。






「はぁはぁはぁ……」






 すると受験生は床に膝をつき、荒い呼吸を繰り返しはじめた。どうやら魔力欠乏症が出掛かっているみたいだ。






「大丈夫? 歩ける?」






すると試験監督の横に立っていた生徒らしき人がその受験生に近づいてそう声をかけた。しかし受験生は相当苦しいらしく、首を僅かに横に振って返事をした。






「そう。それなら少し我慢してね」






 その生徒は優しくそう声をかけると、苦しそうにしている受験生をそっと担いで、どこかへと行ってしまった。おそらくベッドがある保健室かどこかに連れて行ったんだろう。
 今気づいたが、見れば試験監督の横に数人の生徒らしき人達が控えている。彼らはさっきの生徒と同じように魔力欠乏症になった受験生達をどこかへ連れて行く役を負っているのだろう。




 そうして他の受験生達の試験が終わり、とうとうネイの番がやってきた。

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