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隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

81話 壁と秘密

「そうだ。絶対に越えられない壁だ。それは一つのスライム紙に百を優に超える人数の魔力を込めてもオレンジ色から白色に変わらなかったことからそう言われている」






「そうなんですか……」






 それは初耳だ。まさかスライム紙にそんな秘密があったなんて思いもよらなかった。






「でも、それがどうしたんですか?」






 だけどそれを知ったところで僕の魔力量が尋常じゃないという話にはならない。






「つまりスライム紙の上限は白とされているが、実質的に上限はオレンジなんだよ。そっから上はねぇのと同じだ。だからな、えーっと……」






「十以上の数と言われると百も千も同じ、ということですよ」






 ギルドマスターが言葉を詰まると、ミアさんが分かりやすい例を上げて教えてくれた。
 なるほど。つまり十グラムしか測ることができない天秤でも、その天秤を使って十グラム以上となれば百グラムも千グラムもその差位がわからない、ということか。
 スライム紙で考えると、上限のオレンジ色が十だとすると、僕の魔力量が百でもサーシャの魔力量が千でもスライム紙では十、つまりオレンジ色までしか測れないということだ。






「おぅ、ミアの言う通りだ。だからな、オレンジの奴らは自分が垂れ流している魔力の量が青の魔力量なのかオレンジの魔力量なのか分からなくなる事が多いんだ。莫大な魔力を持つ故にそこらへんの感覚が鈍っちまうからな」






 なるほど。一度に100cc掬うことができるスプーンで、1cc掬おうとするとそれより多くなっちゃうといった話しか。
 うーむ。つまりあの時僕が放出した魔力は僕自身はちょこっと出したつもりだったけど、周りから見れば凄い量の魔力を出していたのか。まぁ魔力隠蔽していたおかげでそれを見られた人数が数人だったのは救いか。






「なるほど。僕の魔力量を見抜いたのは分かりました。でもそれだけで僕が隻眼の魔人と断定できないと思いますが」






「子供サイズの白目ありの魔人がいれば話しは違ったんだろうけどな」






 僕の言葉にギルドマスターが間髪入れずにそう答えて、確かにそうかと納得してしまった。






「……あれ? それだけの材料があれば僕が隻眼の魔人だと断定できたのでは?」






「まぁな。俺は十中八九坊主が隻眼の魔人だと思ってたよ。さっきのやりとりはその確認みたいなもんだな」






 どうやらギルドマスターは本当に僕が隻眼の魔人だと最初から見抜いていたらしい。
 でもさっきのやりとりが確認とはどういうことなんだ?






「で、さっきのやりとりのことなんだが……ミア、お前さんは一番初めの[ノーティン]でどこを狙われていると感じた?」






 僕の顔を見てギルドマスターがそう話しを切り出した。うむむ、この人本当に僕の心の内を読むのが上手いな。うん、きっと僕が分かりやすい訳ではあるまい。
 それにしても……気配を察知できないミアさんにそんなことを聞いても意味があるのだろうか?
 ギルドマスターに問いかけられたミアさんは顔を若干しかめながらも口を開いた。






「……私には胸から上が狙われているとしか」






「だろうな」






「え? ミアさんって人の気配がわかるんですか?」






 ミアさんの言葉に頷くギルドマスターと純粋な疑問を持つ僕。するとミアさんは当然といった顔をして口を開いた。






「もちろんわかりますよ。これでも元緑ランクの冒険者をしていましたから」






「うぇ!?」






 緑ランク……つまり今の青ランクの僕より一つ上のランクということだ。
 まさかただの受付嬢だと思っていた人が僕よりも上のランクの人だったなんて……。






「ちなみにだがミア。お前さんは[ノーティン]による二回目と三回目の気配は感じ取ることができたか?」






「いえ、できませんでした」






 ……あれ? そうなの? 僕はハッキリと感じ取れたけど……。
 そんな思いが顔に出ていたのか分からないが、ギルドマスターはつまり、と口にした。






「つまり坊主の実力は少なくと緑の上の黄色……いや、最後の気配にも気づいていたから赤と言ったところか」






「「えぇ!?」」






 再び僕とミアさんの驚く声が重なる。
 冒険者の赤ランクは普通の人が成ることができる最高位のランクと言われている。その先の白と銅は天才の領域。そのさらに上の銀は伝説。最終的には金の英雄がある。
 赤ランクの上にはこのたった四つのランクしかないのだ。
 そのことに対して流石に僕もそこまでの実力は無いと異議を唱えたかったが、今度はギルドマスターがすぐに言葉を続けたためにその言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。






「二回目の[ノーティン]までは気づくことができるとは思っていたが、まさか三回目の[ノーティン]まで気づくとは流石の俺も思わなかった。だからまぁ坊主はそれだけの実力を持っているということだ。魔人が倒せてもおかしくないだろ」






「……たしかに」






 ギルドマスターの言う通り赤ランク相当の実力を持っている子供で魔力量が尋常じゃない人間は僕ぐらいだろう。ネイは魔力量はあるけど、まだ気配の察知に関しては魔力探知に頼っているところがあるためこれに当てはまらない。






「ま、これらのことは秘密にしといてやるよ。わざわざ魔人の格好をしてまで俺の前に現れたんだ。よっぽどその実力を隠したいんだろ? ミアもこのことは他言無用にな」






「分かりました」






 するとギルドマスター自ら隻眼の魔人の件は他言しないと宣言した。そのことに訝しんでいるとギルドマスターは頬をポリポリとかきながら言いにくそうに口を開いた。






「あー、まぁ実力があればあるほど面倒事が降りかかってくるのは目に見えているからな。俺も若い頃は坊主みてぇによく実力を隠したりしてたんだ」






 なにやらギルドマスターは僕に共感しているような目を向けてそう言った。
 確かに僕が実力を隠している理由はそれだけど……。






「というか、ギルドマスターは何者なんですか? 自分で言うのもおかしいですけど、赤ランク相当の子供をそんな簡単に手玉に取れるなんてどれだけの実力があればできるんですか……?」






 そう。このギルドマスターは仮にも赤ランク相当の実力がある僕に対して軽々と大剣を目の前に突きつけたのだ。相当な実力者に違いあるまい。
 そう思って僕が質問するとギルドマスターの代わりにミアさんが答えてくれた。






「ギルドマスターは元銅ランク冒険者ですよ」






 開いた口が塞がらない。
 まさか目の前のおっさんが元銅ランク冒険者だったなんて……いや、でも[ノーティン]とかいう凄まじい固有魔法を使えるのだからあり得る、か。
 するとおっさん、もといギルドマスターはミアさんの言葉に対して迷惑そうな素振りをしてみせた。






「よせよ、それはもう十年以上前の話だ。それより坊主。お前さんが着ていた魔人の鎧。あれはどこで狩った魔人だ?」






 ギルドマスターの話しをもっと聞きたかったが、彼は心の底から嫌そうな素振りをしているので、無理矢理変えられた話題に乗っかることにする。これは隻眼の魔人のことを秘密にしてくれる例みたいなものだ。

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