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隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

77話 ギルドマスターと回復魔法

 試し撃ちで過剰な威力が出たそのレーザー攻撃に、その魔法を作った自分でも驚いた。






「でもこれだけの威力が出るなら大丈夫か」






 このレーザー攻撃であればあの宙に浮かんでいる黒ゴマ、もといコウモリもどきを一撃で仕留める事ができるだろう。名前は……これまた捻らずに適当でいいか。
 [視覚強化]を使い、今一度コウモリもどきの姿がハッキリと見えるようになるまで視覚を強化する。そしてそれが終わると僕は右手を上げてレーザーサイトを発現。多少狙いずらかったが、その赤い光はしっかりとコウモリもどきの眉間に現れた。これで準備は整った。
 後はさっきと同じように魔力を使って……






「[魔光線]……あ」






 僕が[魔光線]と言い切る前にそのコウモリもどきは落下運動を始めた。うーん……攻撃が速すぎて全く見えなかった。さすが光。
 おっと、こうして感心している場合じゃなかった。
 落下しているコウモリもどきを見ながら、その落下地点に向かって走る。
 ……間に合いそうにないな。






「ちょっとキツいけど、[ブースト]!」






 身体能力を[ブースト]を使うことで無理矢理上げる。
 軽い吐き気が襲ってきたが、実家にいるときにこの感覚は何度も体験した。だからこれくらいなら何ともない……と思っている。






「ここだな。オーライオーライ……っと」






 ともかく[ブースト]を使うことによってコウモリもどきの落下地点までやってきた僕は、野球選手がフライをキャッチするようにそのコウモリもどきを受け止めることに成功した。……う、吐き気が。我慢だ我慢。我慢するんだ、僕。
 吐き気を抑えながらたった今キャッチした手元のコウモリもどきを見る。それにはその顔の大きさから見れば十分にでかい穴が額に空いていた。
 うむ。最小限の攻撃で素材の殆どを無傷で手に入れる事ができた。
 実際に使ってみてなかなか使い勝手が良かったから、これからはこの魔法をメインで使おうかな。




 さて、と。
 魔人は倒したし、新種であろうコウモリもどきも狩れたから、スルーカメレオンの透明マントを使って王都に帰るとしますか。














「おぉ! ラインくん、よく無事に帰ってこれたね。大丈夫だったかい?」






 透明マントを使い、魔人モードから普段の姿に戻った僕は何気ない顔で王都の門前審査を受けていた。
 すると顔見知りの門兵のおじさんが僕の事を見つけて開口一番にそう言ってきた。






「えぇ見ての通り特に怪我はしてませんけど……何かあったんですか?」






 このおじさんと僕の関係は、普段は僕の心配などする素振りもなくただ挨拶したり、ちょこっと話したりするものだった。そのためこんなに心配されたことに対して驚いてしまった。
 僕が両手を軽く広げておじさんに大丈夫アピールをするとおじさんは何やら安心したような顔を見せた。これほどまでに普段は心配してくれていたのか……。全く知らなかった。
 それはそうとして、僕が何も知らない風を装いおじさんに何があったのか訊いてみる。






「あぁ。実はさっき魔人が正門を破壊して王都の中に入ってきたんだ」






「えぇ!? そうだったんですか!? 全く知りませんでした……。なるほど、だから正門がこんなに派手に破壊されてるんですね」






 正門前には多くの門兵達や冒険者、そして魔法で門を修理している人達で溢れかえっていた。その中には今僕が話しているおじさんのような立ち位置の顔見知りの人達が何人かちらほらといるのを見つけた。
 僕はそんな正門の様子を指差しながらそう言ってしらを切る。そしてさらに言葉を重ねる。なるべく自然な会話となるのを意識して。






「その魔人はどうなったんですか? ここから見える限りだと相当な被害があったように見えますけど……」






 正門が破壊されているせいで外壁の外から見れば門の中は丸見えだ。
 散らばっている門の瓦礫と血を流してその傷口を押さえている人、そして幾つもの潰れた建物の残骸。
 それだけ見れば魔人がどれだけここで暴れていたのかが手に取るように分かる。






「ラインくんの言う通りここから見た限りだと魔人は相当暴れたように見えるが、実際にはそれほど暴れちゃいなかった。この被害の殆どは魔人と冒険者ギルドのギルドマスターが戦ったことによる余波ででちまったものなんだ」






「え? そうなんですか?」






「あぁ」






 冒険者ギルドのギルドマスターって多分僕が駆けつけた時に大剣で魔人と戦っていたあのおじさんのことだよね。
 そのおじさんの名前は知らないけど、僕とネイが冒険者ギルドに初めて入った時に魔法を使うなと注意してきたおじさんだ。あの人、ギルドマスターだったのか。






「でも、もう大丈夫だ。魔人と冒険者ギルドのギルドマスターが戦っている最中に新しい魔人が乱入してきてな、そいつが暴れていた魔人を王都の外に蹴り飛ばしちまったのさ」






「へ、へぇ、そうなんですか」






 僕がギルドマスターに感心していると、門兵のおじさんはさらに言葉を重ねてそう言った。ある程度予測できていたが実際に新しい魔人、つまり僕のことを話に出されると反応に困るな。
 おじさんの言葉の返答に詰まってしまった事を流そうと、僕は咄嗟に浮かんだ疑問を投げかける。






「それでその魔人達はどうなったんですか?」






 うむ。咄嗟に出てきた言葉にしてはなかなかに良い質問ではないだろうか。
 おじさんも特に怪しむ素振りなどなく僕の質問に答えてくれた。






「さぁな。でもこの外壁の遥か上を超えて蹴り飛ばしたんだ。相当遠くに飛んでいったと思うぞ」






「この高い外壁の遥か上、ですか……。信じられないですね……」






 外壁を見上げながら僕はそう答える。もちろんあたかも信じられないと言った表情を作って。






「まぁ、そういうこった。どこか遠くに飛ばされたとはいえ、もしかしたらまた魔人は王都の近くに来るかもしれねぇ。ラインくんも依頼を受ける時は気をつけてな」






「分かりました。ありがとうございます」






 おじさんも忙しいのか僕にそう言ってさっさと正門の方に行ってしまった。どうやらおじさんも門兵として何かしらの仕事があるみたいだ。
 僕としてもこれ以上長話をしていたらボロを出す可能性があったので、早めに話を切り上げてくれて助かった。




 それにしても魔人とギルドマスターが戦っているときに割って入った僕のあの姿は周りから魔人と認識されているのか。
 こればかりは狙い通りなのでその魔人の事を僕と見破る人はいないだろう。いたらビックリだ。




 さて、門前審査も終えて王都の中に無事入れたので、ネイが待っている宿に戻るとしますか。






「うぅ……」






 あ、怪我人だ。
 魔力は門前審査を受けるまでに大分回復したし、夕食までにはまだまだ時間がある。帰るついでにあの人に回復魔法をかけて帰ろう。なんだか無視するのはしのびないからね。






「[ヒール]」






「うぅ……あれ? 痛くない」






 だけど回復魔法を使って目立つ事は避けたいので、透明マントを使いながらこっそりと回復魔法をかける。回復魔法は医者とかそっち系の人しか殆ど使えない魔法らしいからね。
 うむ。痛く無くなったようで何よりだ。
 さて、帰るとするか。






「腹がぁ……! 腹があぁ……!」






 あ、怪我人だ。
 この人もついでに治しておこう。






「[ヒール]」






 これでよし、と。
 さて、帰るとするか。






「誰か! 誰かこの子の治療を!」






「おばあちゃんが! おばあちゃんがぁ!」






「おい! しっかりしろ! もうすぐ医者がくるからな! ……くそ! 医者はまだか!」






 ……ああ、もう! 
 帰りたくても帰れないじゃないか!
 えぇい、こうなったら自棄だ!
 魔力が無くなるまで片っ端から回復魔法をかけていってやる!




 その後数時間かけて全ての怪我人をこっそりと治し終わった僕は、宿に帰るとネイにこってりと怒られた。せめて[念話]のリストバンドで一言言ってくれ、と。心配かけてごめんよ……。魔力の方は……まあ、吐くだけで済んだからよしとする。

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