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隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

62話 ツインスネークとナイトオウル

 手元に魔法陣を作成するための準備をしながら僕はネイの問いにそう答えた。






「新しい魔法陣?」






「うん」






 するとネイが何やら気になったのか眼帯をつけたまま僕が準備している方へやってきた。……よっぽど気に入ったんだね、その眼帯。まぁそこまで気に入ってくれたのなら作ったかいがあるから良いんだけどね。
 そんなことを考えながら僕はネイに説明する。






「これから新しい魔道具……というか、魔道具に新たな機能を付けようと思っているんだ。その準備として、こうやって新しい魔法陣を作っているんだ」






 羽ペンの先にゴブリンの血液から作ったインクをつけながらネイに説明する。






「あ、ちなみにこれから僕が描くこの魔法陣と夜中に狩ってきた魔物達の親和性が高かったらその眼帯に新しい機能をつけることができるようになるから、その時はネイの分の眼帯もその機能をつけてあげられるよ。どうする?」






「そうなの!? お願い!」






 どのような答えが返ってくるかは半ば確信していたが、一応聞いておく。そしたらやはり案の定思っていた答えが彼女から返ってきた。
 まぁ、それもこれから使うツインスネークとナイトオウルの素材とこの魔法陣との親和性が高かったらの話なんだけどね。
 そんなことを思いながら僕はコンパスと定規を使って布に新しい魔法陣を描いていく。そして最後に[ストレージ]から目的のハンコを取り出してその魔法陣に押せば完成だ。






「……よし、できた」






 布に描いたインクが乾いていることを確認し、その布を持ち上げる。するとネイが質問してきた。






「それは何の魔法陣なの?」






 ネイが僕が持っている布に描かれた魔法陣を指差してそう言う。
 何の魔法陣、か。
 そういえば発現させる魔法のことはどんな風な魔法にしようか考えていたけれど、その魔法の名前までは全く考えていなかったな。






「これは、そうだな……[熱源探知]、かな。名付けるなら」






 正確に言えば赤外線探知なんだけど、それをネイに言っても何のことか分からないだろうからあえて分かりやすい名前にした。






「へぇ、[熱源探知]か……。えっと、熱を探すってこと?」






「……うん、まぁ今はその解釈でいいかな」






 うーん。この魔法陣の使い方によってはその解釈は間違っているような気がするけど、使ってみたら分かるだろう。今はそんなこと気にしないでおこう。
 そんなことを考えているとまたもやネイが質問してきた。今日は何やら魔法陣について積極的に聞いてくるな。






「それでその[熱源探知]の魔法陣は何の魔物の素材に使うつもりなの?」






「ツインスネークだよ」






 ネイの質問にそう返す。
 [ストレージ]からツインスネークの血液が入った瓶と木製のトレーを取り出してからあることに気づいた。
 ネイが急に大人しくなったことに。
 どうしたんだろ? と思いネイのほうに顔を向けると、彼女は目を見開いて口を少し開け、そのままの表情で固まっていた。






「おーい、ネイ? 大丈夫?」






 ネイの目の前で手を振り、彼女にそう問いかける。そうしてしばらくすると彼女は我に返ったようにハッとし、ネイの意識が現実に戻ってきた。だけど何やら口をパクパクさせ、指で僕のことを差している。本当にどうしたんだろ?
 そうやって僕が心配しているとようやくネイは声を出した。やっとコミュニケーションがとれる。そう思ったのも束の間、ネイは急に大声を出した。






「ツインスネークって青ランクの魔物よ! なんでそんな魔物を狩ってきたのよ!? というかあんたは大丈夫なの!? 本当に怪我してない!?」






 耳がキーンとする。一応この部屋には防音結界が張ってあるから他の部屋に迷惑をかけていないと思うけど……。あ、いや、それより今はネイに説明をしないと。






「怪我なんてしてないし、そこまで心配しなくても大丈夫だよ。ほら」






 そう言って体を適当に動かしてみる。するとそれを見てネイも落ち着いたのか一度ホッと息を吐き、安堵した様子を見せた。
 それから僕はネイにどうやってツインスネークを倒したかを嘘偽り一切なく話した。もちろん脚色なんかもしていない。
 そうして僕がツインスネークを倒したことをネイに詳細に話していると彼女は一つ頷いて納得した。
 まぁネイがそれだけ心配する理由も分からないでもないな。何せツインスネークの危険度ランクは青。今の僕たちの冒険者ランクよりも二つも高い相手なのだから。
 とまぁこんなやりとりがあった後、僕はツインスネークの血液をトレーに注いだ。そしてネイが先程作ったばかりの[熱源探知]の魔法陣をその中に漬けてくれた。






「魔法陣に魔力を流すね」






 ネイに一言断りを入れて、ツインスネークの血液に浸した魔法陣を起動させる。
 するとその血液はルビー色に輝きだした。ツインスネークと[熱源探知]の親和性が高い証拠だ。






「急に魔法陣から作り出していたから、まさかとは思っていたけど……。本当に一発で親和性の高い魔法を当てるなんて……。何で[熱源探知]がツインスネークと親和性が高いと分かったの?」






 ネイはルビー色に輝いている血液を見てそうこぼした。この実験を初めて見せたときのような驚きは彼女にはもう無い。さすがにもうこの血液の色の変化を見るのには慣れたみたいだ。
 そんなことより彼女はルビー色に輝く血液を見て質問してきた。なので僕は魔物図鑑から得た知識をネイに説明する。






「ツインスネークは魔物の中でも珍しくて、魔法を使わないみたいなんだ」






 これまでゴブリンは個体によって常時使っている魔法が異なっていたが、それ以外の魔物、例えばコボルトなんかは[走力強化]を、ホーンラビットなら[跳躍力強化]を常時使っていた。それに対してツインスネークはそのニメートルを越す巨体を生かして獲物を絡め取り、絞め殺す。ツインスネークは主に小型の魔物を主食とするからそれだけの大きな体と力があれば他に魔法なんていらなかった。






「だから魔物図鑑にはツインスネークは夜に活動することから闇夜の中でも魔物を探し出せる魔法を常に使っていたんじゃないかって書かれていたんだ」






 そこで僕はピンときた。
 たしかヘビは赤外線を感知する器官があり、そこから温度を割り出して獲物を探し出すらしいということを。もちろん地球での知識だがこれは詳しくネイに話したりはしない。






「だから僕はツインスネークは[熱源探知]を使ったいるんじゃないかと思ったんだ」






 そうネイに説明してみたが、彼女はいまいち理解できていない様子だった。まぁ理解してもらわなくても、これを魔道具に新しい機能として追加したときにその便利さに驚いてもらえればそれでいい。
 さて、それじゃあ次はナイトオウルとの親和性が高い魔法を探すとしますか。






「[ストレージ]。ネイ、一端そこを退いてくれる?」






「……ん? あ、ごめん」






 いまだに頭にハテナマークを浮かべているネイにそう声を掛ける。すると若干のラグがあったものの僕の声に答えてくれた。どうやら彼女の中のハテナマークは相当しつこいらしい。
 だがネイにはこれから手伝ってもらうことにする。






「ネイ、これからナイトオウルの血液を使って親和性が高い魔法探しを始めるから手伝ってくれない?」






「……あ、うん。いいわよ」






 僕がネイに手伝ってもらうように頼むと彼女は再び若干のラグを見せた後、そう答えた。そして僕の隣に座る。どうやら彼女は僕の狙い通り頭の中に詰まっていたハテナマークを一旦端によけてくれたらしい。僕がトレーにナイトオウルの血液を入れるのをジッと見ている。






「それは何の魔物の血液なの?」






「ナイトオウルだよ」






 ネイがそう尋ねてきたので気楽にそう返すとまたもや彼女は固まった。あ、そういやナイトオウルもツインスネークと同じ青ランクの魔物だった。
 僕は先程と同じようにネイの意識を現実に戻し、ナイトオウルが森から出てきたところを偶然見つけて狩ったという説明をした。……さすがに魔人と合って一瞬だけども戦ったことは伏せておいた。そうしておかないと彼女の心が文字通り保ちそうにないと判断したからだ。






「ナイトオウルって基本的にシンリョクの森から出ずに小型の魔物を狩る魔物でしょ? それなのに森の外にでることなんてあるのね。やっぱりこれもシンリョクの森に魔人がいる影響かしら」






「う、うん。そうじゃないかな」






 まさかネイがここまで鋭い推理をしてくるとは思っていなかった。冷や汗を流しながらも僕はトレーに入れ終わった血液の瓶に蓋をする。






「[ストレージ]。じゃ、これを頼むよ」






「分かったわ」






 話を変えるためにも僕は[ストレージ]を使い、その中に入ってある魔法陣が描かれた布を取り出してネイに渡す。するとネイは僕が渡したそれをトレーの中に入ってあるナイトオウルの血液に浸してくれた。






「ありがとう」






 ネイにそうお礼を言って、僕は魔法陣に魔力を込める。






「あれ?」






「んー……微妙ね」






 しかし魔法陣が起動したにも関わらず、ナイトオウルの血液はあまり変化しなかった。それは僕だけではなく、ネイにも分かったらしい。どうやらネイも僕のこの実験を見てきたことにより大分目が肥えてきたらしい。
 するとネイが質問してきた。






「これは何の魔法陣なの?」






「[音響消去]だよ」






 僕は頭を回転させながらそうネイの質問に答える。
 ナイトオウルは奇襲を得意とし、その時、自分を中心とした周囲の音を消す事ができる。そのためナイトオウルと親和性が高い魔法は[音響消去]だとあたりをつけたのだが……。
 いや、まてよ。たしか同じような魔物でミッドナイトオウルというのがいたな。魔人に取って食われていたやつ。確かそれはナイトオウルの上位個体だったような……。もしかしたらそいつらとの親和性が高い魔法が[音響消去]かもしれないな。だとするとナイトオウルはもしかしたらその下位互換の魔法との親和性が高い可能性が……ある。






「[ストレージ]。……えーっとたしかこのあたりに入れていたような……」






 [ストレージ]から山程の魔法陣が描かれた布を僕が使っているベッドの上に取り出し、その中から目的の魔法陣を探す。






「そ、そんなに魔法陣が描かれた布を持っていたのね……」






 ネイが呆れたような、引いているような声を出しながらそう言った。それを聞きながら僕は山の中からその目的の魔法陣を探し出した。






「あった!」

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