話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

55話 反省と情報収集

「はい。リトルグリーンウルフの討伐証明部位である尻尾、五匹分確かに確認しました。依頼の報酬をどうぞ」






「ありがとうございます!」






 ギルドに戻ってきてから、リトルグリーンウルフ五匹の解体をギルドの裏手にある広場を借りて行い、毛皮以外の全てを売り払った。毛皮を売らなかった理由は、魔道具作りに使用するからだ。
 そして今は依頼の達成料を冒険者ギルドの受付嬢であるミアさんから受け取ったところである。






「それにしても、大丈夫ですか?」






 唐突にミアさんが僕の右腕を見ながら、心配そうな顔をしてそう言ってきた。僕の服は右腕部分がリトルグリーンウルフに噛まれた時に出た血で、真っ赤に染まっているのだ。何も知らない人が見ても当然心配するだろう。ミアさんなら言わずもがな。






「大丈夫ですよ。すぐに回復魔法を使って傷を直したのでこの通りです」






 だから僕はそんなミアさんに笑いながら右手を動かし、大丈夫とアピールをした。
 しかしミアさんは、何故か眉を少ししかめながら怒った口調でこう言った。






「ラインさんは確かに魔法に長けていると存じております。ですが、無茶はよしてください。きちんと事前に討伐対象の魔物の情報を得てから、討伐に向かうことを私は強くお勧めします」






 どうやら怪我をしても大丈夫アピールはミアさんにはそれ程効果が無かったようだ。逆にお説教されてしまった。まぁ僕のことを心配して言ってくれていることは分かっているので言い訳などせずに、素直に頷いて返事をしておく。






「分かりました。次からは魔物についてしっかりと調べてから依頼に出かけることにします。ところで……その、魔物の情報を得るにはどうしたら良いのでしょうか?」






 ミアさんの意見を真面目に受け入れたはいいものの、僕にはその魔物の情報を得る手段が不足していた。
 今の僕が持っている魔物の知識は、家の書庫にあった魔物図鑑からの物だ。それには魔物の名前や絵、特徴などが事細かに記されていた。
 僕からすれば、それは怪獣図鑑のようなもので面白おかしく読むことができ、スルスルと頭の中に入ってきた。そのため魔物の名前と姿は一目見たら全て分かるという自信がある。
 だが、詳細などは全てではないが読み込んでいない。絵と名前を見て覚えるだけで満足してしまったからだ。
 それにその魔物図鑑は家の書庫に置いてきた。
 だから今の僕には魔物の情報を得る手段は無いに等しい。






「そうですね……。まず一番簡単なのは、やはり先輩冒険者に話を聞くことでしょう。もちろん私達ギルド職員に聞いてもいいですが、実際に戦闘を行ってきた彼等の話とは重さが全く異なります」






 ミアさんは僕の質問に一度考えた素振りを見せた後、そう言った。
 なるほど。たしかにそれは有効な方法だな。実際に戦った事がある人の話を聞けるのは、僕のようなひよっこ冒険者にはとても有益であることは間違いない。だけど、僕はあんな筋肉モリモリで武器をちらつかせている物々しい人達は少し苦手なんだよなぁ……。
 するとミアさんが二つ目の案を提示してきた。






「二つ目はこのギルドの二階にある資料室で調べる事ですね。そこに置いてある魔物に関しての資料は、この王都にある図書館と比べても遜色ありませんから」






 そういえばこのギルドは二階建てだったっけ。入ってきたドアのすぐ横に二階に繋がる階段があることは知っていたけど、一度も二階に上がったことなんてなかったな。だから二階に資料室があるなんて今初めて知った。
 それにしても魔物だけの情報とはいえ、図書館と遜色ないくらい資料があるのか。冒険者ギルドってすごいんだな。






「そうなんですか。それでは今度また依頼を受ける時は利用させてもらいます」






 今日はもう夕方なので時間がない。そのため次にここに来たときは一度覗いてみようかな。そう思い、さて帰るか、と思って回れ右をしようとしたとき、ミアさんは更に三つ目の案を提示してきた。






「最後はこの王都にある図書館を利用する事です」






 ……ん? 冒険者ギルドの資料室には図書館と比べても遜色ないくらいの資料が置かれているんじゃないのか?
 そう思っているとミアさんがその理由を説明してくれた。






「この冒険者ギルドの資料室にある資料は、全て魔物に関して詳細な事柄が載っております。ですがそれらは実戦を通して得られた資料ばかりです。主に弱点や狩る際のコツと言ったようなものが明記されています」






 ミアさんはそれに対して、と続ける。






「図書館にある資料はこの冒険者ギルドとはまた違った視点、例えば魔物の生態などの資料がたくさんあります。もし私が最初に申しました先輩冒険者に話を聞く、という選択をとられないのであれば、ここの資料室と図書館にある資料の二つを同時に利用することをお勧めします」






 狩人である冒険者から見た情報と、魔物の生態、つまり研究者達からみた情報の二種類を頭に叩き込んでいた方がいいとミアさんは言っているのか。
 それはどんな知識がいつ、どこで役に立つか分からない現実では実に理にかなっている、と僕は思う。






「分かりました。次からはミアさんの言う通り、図書館とここの資料室を利用させてもらいます。わざわざ説明していただきありがとうございました」






 僕はミアさんの目を見つめながらそう礼を言った。さっき言われたことを知らなかったら、そして実行しなかったらこれから先、僕は依頼中に命を落とすことになるかもしれなかったのだ。そう考えるとミアさんのアドバイスは僕にとって非常に有り難いものだった。




 帰り際、ギルドの受付から出口に向かうまでに情報収集の一環として魔力隠蔽をしながら[聴覚強化]を使う。
 しかしくだらない雑談や下品な話ばかり聞こえてうんざりしてしまう。こんな話ばっかりなら聞かない方が良かったかも知れない。
 そう思った時、一つ気になる話題を話している二人組の男がいることに気がついた。
 出口に向かう進路を急遽変える。そして酒場で空いている席、それもなるべくその男たちに近い席を見つけてそこに座る。そしてお冷やを一杯頼み、先程貰った依頼の報酬が入った袋を机の上に取り出す。あたかも報酬の確認をしている風を装っているのだ。
 そうして酒場のお姉さんが机に置いてくれたばかりのお冷やを飲み、袋の中を覗きこみながら、意識はしっかりと耳に寄せる。






「おい、ついに魔人が見つかったらしいぞ」






「まじかよ? どこでだ?」






「シンリョクの森だってよ。アカハのやつが言ってたぜ」






「アカハが言ってたのか。そりゃ信憑性が高いな」






 アカハという人は知らないが、この二人の男の話を聞く限りかなり信用されているようだ。
 それにしてもシンリョクの森でとうとう魔人が発見されたのか。ミアさんに言われた通り、近付かなくて正解だったな。






「で、アカハはどうしたんだ? あいつ、先週緑ランクに上がったって言ってたよな? その魔人を倒したのか?」






 アカハという人は緑ランクなのか。今の僕は最低辺の黒でその上が茶、青、緑……と続くから僕より三つも上のランクの人なのか。
 僕もそのアカハという人が魔人を倒したのか気になる。もし倒したならまたネイとシンリョクの森へ行けるし、実際に行くつもりだからだ。






「いや、倒してねぇらしい。まぁアカハの他のパーティーメンバーはまだ全員青だからな。たとえ一匹しかいなくても、危険度緑の魔人相手には、撤退するのが正しい選択だと俺は思うぜ」






 男はそういってゴクリゴクリと喉を鳴らした。エールでも飲んでいるのだろう。プハァという声が聞こえてきた。
 しかしアカハという人のパーティーメンバーはアカハさんを除いた全員が青ランクなのか。
 ……いや、それはどうてもいいな。
 それより今の話から気になる単語が聞こえた。危険度ランクなるものだ。
 さっきの会話での使われ方や字面から大方魔物の危険度を冒険者ランクで表した物だろう。次からはそれを意識して魔物と戦ってみるのもいいかもしれない。
 それからのその男たちの話題は段々と下品な方向に逸れていったので、[聴覚強化]を打ち切り席を立つ。




 先輩冒険者に聞いたり、冒険者ギルドの資料室や図書館で調べ物をする他にもこういう方法で情報を集める手段もあるな。後からそう気づいた。














「ふぅ。お腹いっぱいだわ」






「僕もだよ。おいしかったね」






 そう二人で喋りながらベッドにすわる。
 時刻は夜。僕がギルドから宿に帰ってきた時にはちょうど夕ご飯の時間だったので部屋に夕食を運んでもらい、魔力操作の訓練をしていたネイと一緒に食べた。
 その間、今日はどんな魔物と戦ったのか、とか、どんな風にして倒したのか、とか、色々と聞かれた。それらの質問に全て答えながら僕らは夕ご飯を楽しんだのである。
 ちなみに服の右腕部分に付いていた血は宿に入る前に魔法で洗い流しておいた。じゃないとネイが心配するだろうからね。




 そうして二人でたわいもない話をしていると話題が魔道具の話になった。






「ラインは今日も魔道具を作るの?」






 ネイが首を少し掲げながらそう聞いてくる。それに対する質問の答えは、彼女は聞かなくても分かっているだろう。






「もちろん作るよ。今日も新しい魔物を狩ってきたからね。[ストレージ]。ほら」






 そう答えて、[ストレージ]からリトルグリーンウルフ五匹分の毛皮を出す。それを手にとってまじまじと眺めるネイ。






「これがリトルグリーンウルフの毛皮か。見た目はモフモフしてそうなのに、触ってみると意外とゴワゴワとしているわね」






 そんなことを言いながら彼女は何度もリトルグリーンウルフの毛皮を揉む。
 そんな彼女を横目に僕は昨日も使った木製のトレー一枚と魔法陣が描かれた布を十枚、そして瓶に詰めた、オハラ草原で採取したリトルグリーンウルフの血液を取り出す。






「あ! 早速やるのね! あたしも手伝っていい?」






 すると僕が魔道具作り、正確にはリトルグリーンウルフと親和性が高い魔法を見つけ出すだけなのだが、その用意を床でしているとネイがそれの手伝いを申し出てきた。






「いいよ。というかいいの? また手が血だらけになるよ?」






 魔物の血というのは当然薔薇のような芳しい香り……なわけがない。人間や動物と同じ用な鉄の臭いがする。その臭いに僕は慣れているので問題ないが、彼女はまだ慣れていないだろう。あれは一晩で慣れることができるようなものじゃない。
 そう思い僕は彼女に確認をとった。






「そんなの関係ないわ! あたしはラインの手伝いができればそれでいいもの!」






 するとネイはそう意気込んで答えた。
 なんともまぁ、よくできた子である。この子の親御さんには感謝しなければ。
 このまま健全に成長してくれたらきっと立派な女性になるに違いない。そしてそう立派に育ったネイは僕の婚約者だから……おっと、思考が逸れてしまった。
 ネイが手伝ってくれるということなので早速始めたいと思う。






「まずはどの魔法陣からやるの?」






「[走力強化]からやろうと思う」






 [ストーンウォール]で壁を作り、五匹のリトルグリーンウルフを二匹と三匹に分断したとき、二匹のリトルグリーンウルフが思いの外早く三匹のリトルグリーンウルフがいたところに合流してきた。
 そのことから僕はリトルグリーンウルフはコボルトと同じ[走力強化]の魔法に高い親和性を見せるとみた。
 それをネイに説明するとなるほど、と言いながら、彼女は僕が渡した[走力強化]の魔法陣を、トレーに注いだリトルグリーンウルフの血液の中に漬ける。






「じゃ、魔法陣に魔力を注ぐね」






 僕はネイに一言そう言ってから、[走力強化]の魔法陣を起動させた。
 しかし……リトルグリーンウルフの血液は僕の予想に反して何の変化も起こさなかった。

「隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く