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隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

39話 剣と盗賊

「剣?」






「そう。これくらいの短剣なんだけど……」






 僕が聞き返すと、少女は両手で短剣の長さを表した。それぐらいの剣ならさっき見た……ってそういえば盗賊が持ってたじゃん!






「その剣なら盗賊が持ってたよ。ここら辺に落ちてないってことは、多分持ったまま逃げちゃったんじゃないかなぁ。だから今頃は盗賊のアジトにあるかも……」






 そう言うと少女は端から見ても分かるくらい動揺し、顔を青くした。






「ど、どうしよう。せっかくお母さんに買ってもらったのに……」






 今にも泣きそうな少女。
 そんな彼女に対して僕は、見て見ぬふりは出来なかった。そんなことをすれば罪悪感が胸の奥から湧き出てきたのだ。
 それにこれから対人訓練がてら盗賊のアジトに乗り込もうと思っていた所だ。この子の剣がそこにあるのなら逆に都合が良いのではないだろうか。






「それなら、これから僕が取り返してくるよ」






「……どうやって?」






「もちろん盗賊のアジトに乗り込んで」






 僕がそう言うと彼女は間髪入れずに言い返してきた。






「ダメ! あんたはあの大人達より強いかもしれないけど、盗賊のアジトにはあと何人大人がいるか分からないのよ! そんなの絶対ダメ!」






 正論である。
 反論の余地のない正論である。
 だけどそれは普通の子供の場合であればの話だ。僕は彼女の肩に手を置き、安心させるように笑ってこう答える。






「大丈夫だよ。そのこともちゃんと考えてるから」






 しかしそう言っても彼女はなかなか納得しない。当たり前か。それから数分かけてなんとか彼女を説得し、僕が盗賊のアジトを襲撃する許可を得た。ただし彼女も同行するという条件付きで。
 ……思えばなんで僕は彼女の許可をもらったんだ? 別に貰わなくてもよかったのでは? いや、きっとこれは常日頃から何かをする許可をサーシャとアンナに求めていた癖だろうな。
 そんなことを考えながら盗賊のアジトがある方向に向かって一歩を踏み出す。






「まずは奴らのアジトを探す所からよね……。ねぇ、あいつらが逃げていった方向ってどっちか分かる?」






 すると彼女がそんな訳のわからないことを言ってきた。何を言ってるんだろう、この子。
 ……あ、そういえばまだ説明してなかったんだった。






「盗賊のアジトについては任せてよ。これを伝っていけばそこに付くはずだからさ」






 そう言って僕は彼女に手のひらを見せ、先ほどから使っていた魔法を不可視の状態から根元だけ僅かに色を変える。






「……何これ?」






「魔力で作った糸だよ。名前を付けるなら[魔糸]ってところかな。これを盗賊達の内の一人に付けといたんだ。だからこれを辿れば奴らのアジトに着くはずだよ」






 盗賊達が逃げる直前、後でアジトを襲撃する事を考えて[魔糸]発動した。そして先端部分だけを粘着質に変化させて、適当な奴の背中に貼り付けておいたのだ。
 盗賊達はそれぞれバラバラの方向に逃げたけど、必ずアジトに再集合するはずだからね。






「……これ、魔力で作ったって言ったわよね? 全然魔力を感じ取れないんだけど……」






「そりゃもちろんバレないように魔力隠蔽してるからだよ。途中でバレたら意味が無いからね」






 そう言うと彼女は何も言葉を発さなくなった。
 ……なんだか急に気まずくなったな。






「……とりあえず、行こうか」






 僕がそう促すと彼女は一つ頷いて後ろをついてきた。
 その後も彼女は何かをずっと考えているようで、時々僕から話しかけるも曖昧な返事しか返って来ない。どうしたものか……。














「……あたしはネイ。あんたの名前は?」






「……え?」






 しばらく歩いていると突然彼女から声をかけられた。あまりにも急だったので思わず聞き返してしまう。






「だから、あたしの名前はネイ。あんたの名前は?」






「……僕はライン。よろしく、ネイ」






 なんとか言葉のキャッチボールを返すことができた。さっきまでの何かを考え込んでいた様子は既に消え、今は当初のように普通に話しかけてくる。なんだかよくわからないけど、まぁいいか。
 彼女が普通に話すようになったから、僕も普通に話すことに決める。






「よろしく、ライン。ところで盗賊のアジトまで後どれくらいかかるか分かる? もう結構な距離を歩いたと思うけど」






「アジトの正確な場所までは分からないけど、確実に近づいてることは確かだよ。もう[魔糸]は伸びていないから、これを貼り付けた奴はもうアジトに戻ってると考えていいと思う」






「そう。ならここからはなるべく静かに移動したほうがいいわね。これからは小声で喋ることにしましょ」






「そうだね。分かった」






 そう言ってネイは声を落とし、足元に注意を払って歩くようになった。足音をなるべく立てないためだろう。
 僕も彼女にならい、足音をたてないように注意して歩く。






 そしてそれから体感で数十分程歩いた頃、[魔糸]が伸びている先から何やら男の声が聞こえてきた。僕とネイは顔を合わせ、ジェスチャーで会話をする。






(声が聞こえる。アジトは多分すぐそこだよ)






(そうね。なら、見つからないようにしゃがんで歩きましょ)






 そうした会話を身振り手振りでし、背の高い草の陰を伝って隠れながら歩く事に決める。




 そのまましばらく歩いていくと徐々に声が音から言葉として認識できるようになってきた。相当近くまできたみたいだ。
 ネイと小声で話合う。






「男の声が聞こえる。声からして最低でも二人はいるね」






「そうみたいね。どうする? もう少し近づく?」






「……いや、一旦周りを見てここら一帯がどのようになっているか見てみるよ。それから進むかどうかを決めよう」






 僕がそう言うとネイは頷いた。それを確認してから、僕は中腰になる。そして草と草の間から覗き、周りがどのようになっているか確認する。すると少し先に木々に囲まれた少し開けた場所があり、そばに洞窟があるのが確認できた。そしてその洞窟の前には三人の男達が集まり何やら立ち話をしている。






「三人の男達が洞窟の前で何か話してる。こっそり近づいてその内容を聞いてくるから少しの間ここで待ってて」






「わかったわ。気をつけてね」






 心配してくれる彼女に了解の意を込めたグッドサインを返し、慎重に草を掻き分けながら前に進む。念の為に魔力探知を使ったが周囲には洞窟前にいる盗賊達と後ろのネイ、そして僕以外の魔力はない。他にある魔力は洞窟の奥にいる盗賊達のものくらいだ。
 後ろから盗賊が出てくることは無いと分かったため前方に意識を集中させる。
 そしてそのまままっすぐ進み、近くの木に隠れて盗賊達の会話を盗み聞きする。






「さっき帰ってきた奴らに聞いたんだけどよ、ザンゲとカロンがやられたらしいぞ」






「あー、俺もそれさっき聞いたわ。まぁザンゲのやつは図体がデカいだけで、アーツも使えないただのパワーバカだからしょうがないだろ。カロンは頭がアレだったからなぁ」






「お前らなに冷静になってそんなこと言ってんだよ! 仲間がやられたんだぞ!? わかってんのか!?」






 お? 仲間割れかな?
 それなら僕たちに都合がいいからもっとやってほしい。
 それとザンゲとカロンは大男とチンピラのことか。ま、これはどうでもいいな。
 あ、そうだ。あだ名は……いや、やるなら三人纏めてやらないと奴らの仲間に僕らが来たことを悟られる。だから付けなくてもいいか。
 それから僕は適当な所で区切って、ネイの下へ戻った。






「どうだった?」






「僕が倒した二人について話してるみたいだったけど、なんだか仲間割れしているみたい」






「そう。それなら……どうする? というかラインはどうするつもりだったの?」






「ん? 何が?」






「何がって……これからのことよ。どうやって盗賊のアジトに乗り込んで、あたしの剣を取り返すつもりだったの?」






 そう言われてしばし考える。流石に真正面からお邪魔して適当に盗賊団を壊滅させるつもりだったとは言えない。
 あ、そうだ。あれがあったからあれを使おう。






「これを見て。[ストレージ]」






「えぇ!? あんた[ストレージ]も使えるの!? あたしなんてつい最近やっと[ボックス]ができたばかりなのに……」






 僕が[ストレージ]と唱えるとネイが小声で驚いた。
 いや、僕が見てほしいのはそれじゃなかったんだけど……。
 というかネイは[ボックス]が使えるんだね。[ストレージ]の下位互換の魔法だったような気がするけど……十分ネイもすごくない? たしか使い手はそれほど多くないってサーシャから聞いた覚えがある……って今はそんなこと関係無かった。






「[ストレージ]じゃなくてこれを見て」






 そう言って僕は[ストレージ]から目的の物を取り出す。






「なにこれ? 筒?」






 ネイがこれを見てそう思うのも仕方がない。
 僕が取り出したのは端から見れば手のひらに乗る程度の黒い円柱なのだから。






「これは魔力発煙弾と言って、煙を発生させる魔道具だよ」






「魔道具? 魔道具って普通もっと大きいやつのことを言うのよ?」






 一般的に普及している魔道具は全てが大きく金属製だ。そのためネイが魔力発煙弾を見てそう言うのも無理はない。






「ま、そんな細かいことは気にしないで。とにかくこれは起動させてから十秒後に白い煙を吐き出すんだ。それも大量にね」






「……ふーん。で、それをどうするの」






 ネイは半信半疑のようで僕の言っていることをあまり信じていない様子だ。これなら説明するより見せた方が早いだろう。






「まぁ、実際に使ってみるからそこで見ててよ。あ、その前に外にいる三人を始末してくるね」






「待って。私もラインについていく」






「わかった。それじゃ音を立てずに慎重にね」






 そう言ってネイがついてくることを許可する。そして二人でソロリソロリと移動を始める。




 そうして僕らは大きな音や不自然な音をたてることなく、洞窟から見て左側にある背の高い草むらに移動し、姿を隠した。






「僕はここからならあの三人組みと洞窟から出てきた盗賊達の両方に攻撃できる。ネイは?」






「あたしもできるわ」






 お互いに攻撃が可能かどうかを確認しあう。僕もネイもこの場所から攻撃できると分かったので、早速盗賊退治に移るとする。






「なら、まずはあそこの三人組を僕が始末するね」






「わかったけど、あたしは何をすればいいの?」






「……そうだな。僕が合図を出すから、外に出てきた盗賊達に攻撃してくれればそれでいいよ」






「盗賊達が外に出てくるのね?」






「うん」






「……わかったわ」






 まだ何か言いたいことがあるみたいだったが、既にここは盗賊団のアジトのすぐ近くである。それを分かっているためかネイはそれらを飲み込んで了承した。
 これから行うのは実に単純な作戦だが、僕の魔道具の効果を疑っている彼女にそれを話してもあまり意味が無いだろう。だから必要最低限な指示だけを出して後は待機させる。






「それじゃあまずはあの三人組を片付けるとしますか」






 そう言って僕は右手を上げ、三人組に狙いを定めた。

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