話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~

サァモン

20話 考察と魔法式

 最後の一つを書き上げる。




「よし。これで全部だよね」




「はい。これで[ライト]の魔法陣は全てです」




 一旦晩御飯と食後の運動を挟んで、全ての魔法陣を書き終えた。
 これで第一段階は終了だな。




「えーっと、全部で8個か」




 巻数が増えるにつれ、載せられている[ライト]の魔法陣の数も減っていった。[ライト]の魔法陣が載ってなかった巻もあったな。
 その事に気づいてからは、もう一度最初から、より丁寧に魔法陣を書き写し直した。
 結果的に、より時間がかかってしまったが……ま、いいか。




「こうして並べてみると色々と分かるもんだね」




 ずらーっと横に並べ、改めてその8種類の魔法陣を眺めると、明らかに何らかのルールに乗っ取っていると思われる箇所がいくつかある。




「まぁ過去の研究者の中にも、同じようにこうした人はいたらしいけど」




 『魔法陣集』の最後にはこれまでの研究成果や考察が長々と纏められていた。殆ど役に立たないようなものだらけだったが。




「ここに書かれているように、確かに八つの魔法陣全てに共通している部分があるね」




「魔法円に沿って均等に並べられているマスの数が全て4つですね。それに内円の中にある図形も四角です。これは私も存じ上げませんでした……」




 その考察の中に魔法記号に関する資料を見つけた。
 その資料曰わく、54種類の記号の存在が確認されているとのこと。その一覧もついている。
 ただサーシャが言った通り、この記号は単純に魔法円に沿って均等に並べられているのではない。いくつかの記号が集まって縦にならび、マスと呼ばれる一つの塊を形成している。そして、このマスが複数あり、魔法円に沿って均等に並べられているのだ。




 そして内円の中の図形についての考察も勿論あった。
 この図形は、マスの数に応じた多角形になると言われている。だがマスの数より多い頂点を持った多角形の魔法陣も沢山あるらしい。このような魔法陣は全て何も起こらないか爆発するという結果のどちらかになるとのこと。
 さらに、これはまだ確認されていないが、マスが一つの魔法陣はどうなるのかという話もあるらしい。今のところ確認されていないので、そんな魔法陣は無いという説が一番有力だ、と書かれていた。




「他に共通部分は無さそうだから、次は中心の模様で分けようか。渦巻き模様は上、放射模様は下に並べよう」


 
 この[ライト]の魔法陣の場合、正方形の中に、渦巻き模様と放射模様の二種類の模様が存在している。
 この八つの魔法陣の違いは魔法記号とこの模様だ。模様については他の魔法陣を見ると、まだまだ種類があるみたいだが、今は[ライト]の魔法陣に集中する。




「坊ちゃま。この渦巻き模様ですが、右回りと左回りがありますので、これも二種類に分けましょう」




「え……ほ、本当だね。なら、分けようか」




 一瞬言葉を失った。
 渦の巻き方は確かに右回りと左回りがあるが、平面で考えるときは表と裏の関係なのでこの場合は関係ない。
 現に『魔法陣集』には巻き方が違う事以外他は全て同じ魔法陣が載っており、共に同じ種類で同じ特徴を持った魔法を発現させているという結果が出ている。
 きっとこれはどちらの巻き方でも関係ないという作者の意図だ。もしこの二つが載っていなければ、その事実を知らない研究者を混乱させてしまう恐れがあるからだろう。




 ここでサーシャの言葉を訂正しようかと思ったが、六歳児に間違いを正されるサーシャの気持ちを考えて、突っ込まないことにする。
 また別のタイミングで『紙が落ちた時に偶然発見したんだー』とか言っておけばサーシャの面子も守れるし、間違いも訂正できるだろう。うん。そうしよう。




 上から順に右回り渦巻き模様、左回り渦巻き模様、放射模様と横に三列に並べる。




「んー。特に何か共通している部分は無いなぁ……」




 発現する[ライト]の特徴について書かれている部分を全て読み返しても、特に共通点は見つからなかった。




「坊ちゃま。お休みの時間が迫って来ていますのでそろそろ休憩されては如何ですか?」




「え、もうそんな時間?」




「はい」 




 窓の外を見たら真っ暗だった。
 いつの間にか結構な時間が経っていたらしい。




「なら、今日はここまでにするよ。明日寝坊したらアンナに怒られるし」




 広げたままの本や紙はまた明日使うからそのままにしといて貰った。
 その後はいつも通りサーシャの監視の下、ベッドの上で魔力を全部使い切った。




◇◆◇◆◇◆




 今日の訓練を全て終え、書庫にやってきた。




「あ、坊ちゃま。訓練が終わったんですね。お疲れ様です!」




 今日はサーシャではなくアンナが手伝ってくれるらしい。
 これから魔法陣を調べる時は、必ずサーシャかアンナのどちらか片方を手伝いとして連れて行くことを約束させられた。予期せぬ事故を防ぐためだ。
 僕が信用されていないからじゃなくて、純粋に僕の安全を思って言ってくれているのだろう。




 読書スペースに着き、昨日座った席と同じ席に座る。




「どうぞ!」




「ありがとう」




 さて始めるか、と思った絶妙なタイミングでアンナが羽ペンとインクを差し出してきた。ナイス。
 今日は、時間が足りなくて昨日出来なかったことをやる。
 それは、化学の考え方を応用することだ。
 『魔法陣集』の考察を全て読んでもこの考え方を試した人は、ほんの一握りしか居なかったようで、その人達も途中で諦めてしまったようだ。全く違う模様の魔法陣が何故同じ魔法を発現させるのか、また、模様が同じ魔法陣が何故別の魔法を発現させるのか、が説明出来なかったからだそうだ。
 まぁ確かにこの考え方だけだと魔法記号の謎を解けないからね……。
 他には昨日のサーシャのように、渦巻きを右回りと左回りで分けて、魔法記号は同じなのにどうして同じ魔法が発現するんだ! とか書かれていた。誰か教えてやれよ……。あ、ボッチか。この人ボッチなのか。ごめん。




 机の上に必要な物が全て揃っていることを確認し、気合いを入れるために手をポキポキ鳴らす……痛い。そういえば僕、まだ六歳だった。ポキポキ鳴らなかったわ。
 そして引き出しに入っている紙を適当に掴み、机の上に置く。……あ、紙を置いた時の風で魔法陣が書かれてる紙が飛んでいっちゃった。




 アンナが飛んでいった紙を回収してくれ、早速始める……前に『魔法陣集』を読んで、気になっていたことを確認する。ふむふむ。
 よし。じゃあやるか!
 まず、魔法陣をバラバラに分解する。あ、実際に切ったりするんじゃなくて、新しい紙に魔法陣のパーツを書いていくって意味ね。
 八つの魔法陣全てに共通している部分。魔法円と内円、正方形と魔石入れは一つに括っていいだろう。比較対象がないからね。
 そして渦巻き模様と放射模様を二つに分ける。ここまでは昨日やった範囲だ。
  最後に魔法記号。
 『魔法陣集』ではマスが十字の位置に来るように書かれていたが、これは等距離に配置するだけで良い。魔法陣は円形だから、見る場所によってXの字に配置されているようにも見えるからね。




 これで
 《魔法陣→[ライト]》
 から
 《(一括りにしたパーツ)+(模様)+(マス)→[ライト]》
 というような式を作ることが出来る。




 あ、ついでに[ライト]も形、色、性質、大きさの4つに分けておこう。なぜならサーシャから、魔法を使うときは主にこの4つを中心にイメージを固めると良いって教わったからだ。




 余談だが、毎日同じイメージで[ライト]ばかり使っていたら飽きるから、サーシャの訓練中に色々と工夫を加えて遊んでいる。勿論サーシャに許可を貰っているから、毎日どうどうと[ライト]を魔改造している。その時にこの4つを中心にイメージすると確かに成功する確率がグンとあがるのだ。
 ちなみにここ最近の傑作は[七色に輝くトリモチライト]だ。それをサーシャに強度実験と言って踏ませてみたら、足がトリモチライトから離れなくてパニックになっていた。ボーリングの玉ぐらいの大きさのトリモチを踏ませたんだから当たり前か。その後に仕返しで魔力を大量に流されるまでがワンセットだ。
 術者の制御下から離れた魔法はすぐに霧散するのでサーシャは無事にトリモチ地獄から脱したことをついでに言っておく。




 閑話休題




 《(一括りにしたパーツ)+(模様)+(マス)→発現する魔法の{(形)+(色)+(性質)+(大きさ)}》




 このような、魔法陣と発現する魔法のそれぞれの特徴と関係を表す式を魔法式と名付けた。




 そしてこれを基に八つの魔法式を作り、縦に並べる。
 これで何か見えてくる物があるはず……。




「お、このマスとそのマスは記号の並べ方まで全て同じだな」




 しばらくの間、色々と考えを巡らせながら謎を解くヒントになりそうな物を探す。




「……やっぱりこの模様の意味が分からなければこれ以上先に進めそうに無いな」




 模様の意味と魔法記号。
 二つの不明な点が一つの問題の中に存在すると、難易度は格段に跳ね上がる。
 こういうときは……




「不明な点を一つに絞るっと」




「……ぼ、坊ちゃま? 昨日坊ちゃまがサーシャさんと一緒に書き出した魔法陣の中には、今坊ちゃまが書かれた魔法陣はありませんが……。も、もしかしてそれって……」




「うん。新しく作った。とは言ってもこれは僕の部屋にある魔道ランプの魔法陣の模様を少し変えただけだから、危険は無いと思うよ」




「あの、その、そ、それをどうなさるおつもりで?」




「ん? これから起動させるに決まってるじゃん」




 アンナが小動物のようにプルプルと震えている。




「な、何を仰っているんですか! そんなことをしちゃダメですよ!  坊ちゃまは死にたいんですか!?」




「え、死にたくないよ?」




「なら何故そんなことを!」




「模様をちょっと変えたぐらいで爆発なんかしないと思ったから」




「何を言っているんですか! 坊ちゃまはサーシャさんから、未知の魔道具は爆発する危険があると聞いていないのですか!?」




「ちゃんと聞いたよ。魔道具実験刑なんてものがあるくらい危険なんでしょ?」




「そうですよ! それを知っていながら、何故そのようなことを仰るのですか!」




 アンナが顔を真っ赤にして大声でそう言ってきた。……初めてアンナが怒ってるのを見たな。




「僕も普通ならこんな危険な事をしないよ。でもこの実験に関しては大丈夫だとほぼ確信しているんだ。とりあえずこれを見て」




 こんな展開になることは予想していたため、先程用意した物を見せながらアンナを説得する。




「これは魔法式と言って、魔法陣と発現する魔法の関係を書いた式なんだ」




 そう言ってついさっき適当に名付けた式をアンナに見せる。




「それでこのマスを見てみてよ」




「……これがどうかしたんですか?」




 僕が説得を始めるとアンナも冷静さを取り戻したようだ。




「こうやって一つ一つ順番にパーツを書き出してて気付いたんだよ。このマスだけはここに書き出した八つの魔法陣全てに使われているんだ」

「隻眼の英雄~魔道具を作ることに成功しました~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く