魔法士は不遇らしい。それでも生活のために成り上がります
18話 ダイアナ達の戦闘
ダイアナの口から出た指示はカズトを抜いた者に対して行われたものだ。
それにはダイアナの中に存在する、魔法士は戦えないという常識が無意識に反映されていた。
そのためカズトは待機となり、ダイアナ、セリオ、そしてメイベルと呼ばれた女騎士の三人が早急に死体を貪っている魔物達の駆除を始めた。
(うーむ。なんだか腑に落ちないけど指示されたものは仕方がない。ここで観戦させてもらうか)
そんな中カズトは自分だけ除け者にされたような不満を感じながらも、周りを警戒しながら大人しく彼らの戦闘を観察することにした。
まずダイアナ。
彼女は亜空の腕輪から瞬時に青い両手剣を取り出すと、魔物達が群がっている中心に単身乗り込んでいった。
「いや、何やってるの王女さま!? あなた守られる側でしょ!」
カズトは思わずそう声を上げたが、その声はダイアナの耳には届かない。
今の彼女はただ目の前の敵を切ることだけに集中しているからだ。
だがそんなカズトの心配はなんのその。
ダイアナは魔物達が群がっている中心に立つと、その場で大きく円を描くように回転し、それと同時に剣を横に払った。
たったそれだけの動作で彼女の周りにいた魔物達の大半が二つに分かれ絶命する。
「うわぁ……。まじか……」
その非現実的な光景にカズトは思わずそうこぼした。
同時に自分と年がそう離れていなさそうなダイアナの強さを見て愕然とした。
だがダイアナの攻撃は終わらない。
むしろまだ始まったばかりだ。
彼女は上下真っ二つに別れた魔物の死体を飛び越え、その先の魔物達に向かって勢い良く剣を振り下ろす。
その剣は数匹の魔物を左右真っ二つに切り裂いて、さらにその勢いは衰えぬまま地面に激突する。
するとその瞬間、地面が衝撃に耐えられず、ドン! という音と共にその場に大きなクレーターが形成された。
当然その衝撃は周りの魔物たちにも伝播し、バランスを崩した魔物たちがまるで蟻地獄に引きずり込まれる蟻のようにクレーターの斜面を滑り落ちる。
そしてそのクレーターの底に待ちかまえているのは当然ダイアナだ。
彼女は先程と同じように剣を一振りするだけで斜面を滑っていた全ての魔物を切り裂いた。
そしてそこから飛び出ると、魔物達が多く残っている場所に向かって駆けていく。
それでもって一振りするだけで数匹の魔物を切り裂く剣を次々と振るうのだから、魔物達からしたらたまったものではない。
多くの魔物達はダイアナを脅威とみなし、蜘蛛の子を散らすように次々と逃げていく。
だが彼らは魔物であるが故に人間にとっては害獣である。
そのためダイアナから逃れることができたとしても、残りの二人が逃がすはずがない。
「はぁ!」
左手に盾、右手に剣を持ったいかにも騎士然としたセリオが魔物達の右外縁部から攻め立てる。
その剣は豪快に魔物の骨ごと断ち切るだけでなく、まるで舞踊のように滑らかに前後左右に動き敵を切る。
その様はとてもではないが盾と鎧を身につけている重装備のそれではない。
しかし一番に注目すべきはその剣の切れ味でもセリオの滑らかで素早い動きではない。
盾の使い方である。
彼はその盾をもってして攻撃を防ぐだけにあらず、打撃武器としても用いていた。
そう、彼は圧倒的な身体能力を生かして盾の角だけでなく平面部分で殴っても魔物を絶命させているのだ。
その様は剣と盾という攻防一体の装備をしているにもかかわらず、まるで鈍器と剣の二つの武器を持った荒々しい戦い方をしているのである。
対して左外縁部から魔物を攻め立てるのは女騎士、メイベルだ。
彼女は巨大なハルバードを持って疾駆する。
そして標的を攻撃圏内に捉えると素早くハルバードを突き出し絶命させ、次の瞬間にはそれをクルリと回転させてもう一匹を両断する。
そして横回転、縦回転と次々にハルバードを回転させ、その重量を活かしながら襲い来る魔物達を片っ端から斬り伏せる。
そのクルクルとハルバードを回転させながら戦う姿はセリオとはまた別の踊りをしているかのようだ。
だがそれでいて油断も隙も一切無い。
ただ淡々とハルバードを回転させながら魔物を両断していくだけである。
「すごいな……」
そんな三人の戦う光景を見て、思わずカズトはそうこぼす。
今のカズトの実力ではいくら相手が小型の魔物達だけとはいえ、ここまで派手に、そして圧倒的に戦うことは不可能であるためだ。
そのためカズトは三人の戦いを食い入るように眺めていた。
そして約十分後。
ダイアナがこの場にいる最後の魔物であるフォレストウルフを両断した。
「よし。これで終わったな。早速魔力の指針を使うぞ」
ダイアナは一度辺り一帯を見回し、生き残りの魔物がいないことを確認するとそう口を開いた。
そして彼女は両手剣を亜空の腕輪の中に収納し、同じく亜空の腕輪から魔力の指針を取り出す。
それは丸く、地球にあるものでたとえるならば、羅針盤といった方がしっくりくる。
それを持って小型の魔物達に無惨に貪られたアームホーンゴリラの巨大個体、その死体だったものの前にやってくると、これまで観戦に徹していたカズトに顔を向けた。
「カズト、一応聞くがこれがアームホーンゴリラの巨大個体の死体でいいんだよな?」
「……あ、はい。そうです。その通りです」
これまで三人の非現実的な戦いを見てやや放心していたカズトは、ダイアナに話しかけられてから返答するまで若干のラグが生じた。
それでも自分が倒したアームホーンゴリラの巨大個体の死体は間違えるはずもない。
「わかった。魔力の指針にこいつの魔力の痕跡を覚えさせるためには少し時間がかかる。三人はその間に魔物の処理をしておいてくれ」
『はい』
ダイアナにそう言われた三人はすぐさま行動を開始する。
「では僕が魔法でここに穴を掘ります。その中に魔物の死体を入れてしまいましょう」
「ああ、そうだな。それなら俺とメイベルで魔物の死体を集めるとしよう。穴の方は任せた」
「はい。任せてください」
そう言うとセリオとメイベルは遠くにある魔物の死体を持ってくるために歩き出した。
カズトもすぐに穴を掘る作業を開始する。
それから一時間程が経過した頃。
アームホーンゴリラの巨大個体の死体を除く全ての魔物の死体を土の中に埋める作業が終了した。
ちなみにカズトはこの作業は時間がかかると予め分かっており、そしてダイアナ達に迷惑をかけないために魔石などの素材を回収することを泣く泣く諦めた。
(ま、まあ、僕が直接狩った魔物じゃないから別にいいんだけどね!)
そして彼らはダイアナの下へ行く。
ちなみに彼女は三十分程前に魔力の指針にアームホーンゴリラの巨大個体の魔力の痕跡を覚えさせ終わっていた。
その後からはなにやらジッとその死体を観察しながら考え込んでいる。
(この内部から破裂したような傷、魔物に食われたものではないのは確かだが、普通じゃないな。一体何をどうしたらこんなことになるんだ?)
そうやって考え込んでいる彼女の背中にセリオが声をかける。
「お待たせしました、殿下。全ての魔物の死体の処分が完了いたしました」
「うむ。ご苦労。カズト、最後にこのアームホーンゴリラの巨大個体の死体の処分も頼んだ」
「わかりました」
それにはダイアナの中に存在する、魔法士は戦えないという常識が無意識に反映されていた。
そのためカズトは待機となり、ダイアナ、セリオ、そしてメイベルと呼ばれた女騎士の三人が早急に死体を貪っている魔物達の駆除を始めた。
(うーむ。なんだか腑に落ちないけど指示されたものは仕方がない。ここで観戦させてもらうか)
そんな中カズトは自分だけ除け者にされたような不満を感じながらも、周りを警戒しながら大人しく彼らの戦闘を観察することにした。
まずダイアナ。
彼女は亜空の腕輪から瞬時に青い両手剣を取り出すと、魔物達が群がっている中心に単身乗り込んでいった。
「いや、何やってるの王女さま!? あなた守られる側でしょ!」
カズトは思わずそう声を上げたが、その声はダイアナの耳には届かない。
今の彼女はただ目の前の敵を切ることだけに集中しているからだ。
だがそんなカズトの心配はなんのその。
ダイアナは魔物達が群がっている中心に立つと、その場で大きく円を描くように回転し、それと同時に剣を横に払った。
たったそれだけの動作で彼女の周りにいた魔物達の大半が二つに分かれ絶命する。
「うわぁ……。まじか……」
その非現実的な光景にカズトは思わずそうこぼした。
同時に自分と年がそう離れていなさそうなダイアナの強さを見て愕然とした。
だがダイアナの攻撃は終わらない。
むしろまだ始まったばかりだ。
彼女は上下真っ二つに別れた魔物の死体を飛び越え、その先の魔物達に向かって勢い良く剣を振り下ろす。
その剣は数匹の魔物を左右真っ二つに切り裂いて、さらにその勢いは衰えぬまま地面に激突する。
するとその瞬間、地面が衝撃に耐えられず、ドン! という音と共にその場に大きなクレーターが形成された。
当然その衝撃は周りの魔物たちにも伝播し、バランスを崩した魔物たちがまるで蟻地獄に引きずり込まれる蟻のようにクレーターの斜面を滑り落ちる。
そしてそのクレーターの底に待ちかまえているのは当然ダイアナだ。
彼女は先程と同じように剣を一振りするだけで斜面を滑っていた全ての魔物を切り裂いた。
そしてそこから飛び出ると、魔物達が多く残っている場所に向かって駆けていく。
それでもって一振りするだけで数匹の魔物を切り裂く剣を次々と振るうのだから、魔物達からしたらたまったものではない。
多くの魔物達はダイアナを脅威とみなし、蜘蛛の子を散らすように次々と逃げていく。
だが彼らは魔物であるが故に人間にとっては害獣である。
そのためダイアナから逃れることができたとしても、残りの二人が逃がすはずがない。
「はぁ!」
左手に盾、右手に剣を持ったいかにも騎士然としたセリオが魔物達の右外縁部から攻め立てる。
その剣は豪快に魔物の骨ごと断ち切るだけでなく、まるで舞踊のように滑らかに前後左右に動き敵を切る。
その様はとてもではないが盾と鎧を身につけている重装備のそれではない。
しかし一番に注目すべきはその剣の切れ味でもセリオの滑らかで素早い動きではない。
盾の使い方である。
彼はその盾をもってして攻撃を防ぐだけにあらず、打撃武器としても用いていた。
そう、彼は圧倒的な身体能力を生かして盾の角だけでなく平面部分で殴っても魔物を絶命させているのだ。
その様は剣と盾という攻防一体の装備をしているにもかかわらず、まるで鈍器と剣の二つの武器を持った荒々しい戦い方をしているのである。
対して左外縁部から魔物を攻め立てるのは女騎士、メイベルだ。
彼女は巨大なハルバードを持って疾駆する。
そして標的を攻撃圏内に捉えると素早くハルバードを突き出し絶命させ、次の瞬間にはそれをクルリと回転させてもう一匹を両断する。
そして横回転、縦回転と次々にハルバードを回転させ、その重量を活かしながら襲い来る魔物達を片っ端から斬り伏せる。
そのクルクルとハルバードを回転させながら戦う姿はセリオとはまた別の踊りをしているかのようだ。
だがそれでいて油断も隙も一切無い。
ただ淡々とハルバードを回転させながら魔物を両断していくだけである。
「すごいな……」
そんな三人の戦う光景を見て、思わずカズトはそうこぼす。
今のカズトの実力ではいくら相手が小型の魔物達だけとはいえ、ここまで派手に、そして圧倒的に戦うことは不可能であるためだ。
そのためカズトは三人の戦いを食い入るように眺めていた。
そして約十分後。
ダイアナがこの場にいる最後の魔物であるフォレストウルフを両断した。
「よし。これで終わったな。早速魔力の指針を使うぞ」
ダイアナは一度辺り一帯を見回し、生き残りの魔物がいないことを確認するとそう口を開いた。
そして彼女は両手剣を亜空の腕輪の中に収納し、同じく亜空の腕輪から魔力の指針を取り出す。
それは丸く、地球にあるものでたとえるならば、羅針盤といった方がしっくりくる。
それを持って小型の魔物達に無惨に貪られたアームホーンゴリラの巨大個体、その死体だったものの前にやってくると、これまで観戦に徹していたカズトに顔を向けた。
「カズト、一応聞くがこれがアームホーンゴリラの巨大個体の死体でいいんだよな?」
「……あ、はい。そうです。その通りです」
これまで三人の非現実的な戦いを見てやや放心していたカズトは、ダイアナに話しかけられてから返答するまで若干のラグが生じた。
それでも自分が倒したアームホーンゴリラの巨大個体の死体は間違えるはずもない。
「わかった。魔力の指針にこいつの魔力の痕跡を覚えさせるためには少し時間がかかる。三人はその間に魔物の処理をしておいてくれ」
『はい』
ダイアナにそう言われた三人はすぐさま行動を開始する。
「では僕が魔法でここに穴を掘ります。その中に魔物の死体を入れてしまいましょう」
「ああ、そうだな。それなら俺とメイベルで魔物の死体を集めるとしよう。穴の方は任せた」
「はい。任せてください」
そう言うとセリオとメイベルは遠くにある魔物の死体を持ってくるために歩き出した。
カズトもすぐに穴を掘る作業を開始する。
それから一時間程が経過した頃。
アームホーンゴリラの巨大個体の死体を除く全ての魔物の死体を土の中に埋める作業が終了した。
ちなみにカズトはこの作業は時間がかかると予め分かっており、そしてダイアナ達に迷惑をかけないために魔石などの素材を回収することを泣く泣く諦めた。
(ま、まあ、僕が直接狩った魔物じゃないから別にいいんだけどね!)
そして彼らはダイアナの下へ行く。
ちなみに彼女は三十分程前に魔力の指針にアームホーンゴリラの巨大個体の魔力の痕跡を覚えさせ終わっていた。
その後からはなにやらジッとその死体を観察しながら考え込んでいる。
(この内部から破裂したような傷、魔物に食われたものではないのは確かだが、普通じゃないな。一体何をどうしたらこんなことになるんだ?)
そうやって考え込んでいる彼女の背中にセリオが声をかける。
「お待たせしました、殿下。全ての魔物の死体の処分が完了いたしました」
「うむ。ご苦労。カズト、最後にこのアームホーンゴリラの巨大個体の死体の処分も頼んだ」
「わかりました」
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