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あふたーびーと

百合乃 初絆

35話

〜 〜 〜


 命たちは、数学の授業を無事に受け、残りの3時限も全て消化した。午前の授業を終えると、昼休みに入り、命たち3人は萌佳が居る教室まで足を運んだ。


「姫嶋さんー!! 一緒にお弁当食べようー!!」

「あっ、神楽坂さん……! それに、みなさんも!」


 命は、萌佳の居る教室をガラッと開け、来た目的を簡潔に伝えた。そうすると、萌佳は命の大きな声に気が付き、すぐに振り返った。萌佳のクラスメイトたちは、そんな嬉しそうに振り返る萌佳の姿を見て、普段とのギャップを感じさせられた。


「ねぇ、あんな笑っている姫嶋さん、初めて見るね……」

「うんうん。なんか、意外だね……」

「教室中の誰が誘っても、一向に首を縦に振らなかった難攻不落の要塞が、知らない間に一気に崩れ落ちたみたいだね……」

「ごめん、その表現はわからないや」

「えっ?」


 萌佳のクラスメイトたちは、ヒソヒソと会話をした。何故なら、萌佳という鉄壁の要塞が、1人の同級生によって、いとも容易く攻略されているからであった。


「あの……ここでは食べにくいので、他の場所に移りませんか……?」

「姫嶋さんが言うんだったら、私たちはどこでもいいよ」

「右に同じく!」

「左に同じく」

「ありがとうございます……!」


 萌佳は、クラスメイトたちの視線を背中からゾクゾクと感じ取り、ここではゆったりとした食事はできないと考えた。そして、命たち3人に、思い切って別の場所で食べようと言った。すると、風は物腰柔らかく賛成してくれ、命と氷菓もそれに引き続き賛成してくれた。萌佳は、少し前の自分と違うことを自覚した。それは、明らかな成長というものであった。


「それで、どこでお昼ご飯を食べよっか!」

「やっぱり、屋上とかかな」

「でも、確かあの場所は封鎖されていたような……」

「珍しい学校ですね。私が転校してくる前の学校では、屋上は封鎖されていませんでしたよ」

「いや、どちらかと言うと、こっちが普通だと思う。でも、こっちも屋上を開けることはできるよ」

「もしかして……」

「マイキーを作ってあるの」

「やっぱり、そうなりますよね……」


 命が、どこに行くかみんなに尋ねると、風が屋上に行きたい、と答えた。萌佳は、それに対して屋上は封鎖されているので、入れないのではないかと聞いた。すると風は、胸ポケットから小さな緑色の鍵を取り出した。


「風、それってバレたら怒られない?」

「大丈夫だよ。バレなかったら、……いいんだよ」

「今の間は何かな!」

「倒置法?」

「ごめんなさい! 倒置法の意味がわかりません!」

「午後に入って、お二人方はさらに勢いが増しましたね」

「黒雪さん、これはまだまだ序の口ですよ……」

「それは、楽しみです」


 命と風がコントを展開していると、まだ2人のペースに慣れていない氷菓が、午後だというのに疲れを感じさせないやり取りだと驚いていた。萌佳は、これはまだ序の口であると氷菓に教えた。すると、氷菓はひきつった笑みを浮かべて、楽しみだと言った。


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