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あふたーびーと

百合乃 初絆

33話

〜 〜 〜


 4人は、全力疾走で学校の前までやって来た。学校の前では、先生たちがあいさつ運動をしており、その中には命と風の担任である幸樹の姿もあった。


「先生ー! おはようございますー!!」

「おはよう……4人とも元気そうで何よりです……」

「先生、顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」

「気にするな。これは、昨日飲み過ぎてただの二日よ……いや、なんでもない」

「ふへ?」


 幸樹は、生徒の模範であるべき先生が、二日酔いでダウンしているなど、決して知られてはいけないと思った。一度は、命に本音を漏らしそうだったが、プライドで本音を押し戻し、何もなかったかのような雰囲気で対応した。


「そんなことよりも、早く教室に行った方がいいと思いますよ」

「えぇ〜でも、先生のことが心配だし〜」

「私も、大人の女性です。自分のことは、自分で何とかできますので、神楽坂さんが気になさらずとも、大丈夫です」

「へへ、そうですね。あっ、でも……これをどうぞ」

「これは?」

「飴玉です」


 幸樹は、ボロが出ないうちに、4人を教室に行かせようとした。しかし、命は幸樹のことが心配だと言い、なかなか教室に行こうとはしなかった。だが、幸樹が大丈夫だと説得すると、命は納得して、教室に帰ろうとした。幸樹が安心していると、命はポケットから飴玉を出し、幸樹にプレゼントした。


「あ、ありがとうございます……」

「今日も一日よろしくお願いします!」

「はい。こちらこそ」


 幸樹の少し笑った顔を見ると、4人は教室まで駆けて行った。周りの先生たちは、2人の和むやり取りを一部始終見ていたせいか、幸樹を見てニヤニヤしていた。


「生徒に愛されていますね」

「そうみたいですね。こんな私でも、一緒に頑張ろう、と言ってくれる生徒が居るんですよね」

「柏木先生?」

「いえ、こちらの話です」


 他の先生たちが、幸樹は生徒たちに愛されている、と言った。そう言われると、幸樹は微笑んだ表情で飴玉を握り、何かを思い決めた様子であった。


 〜 〜 〜


「なんで、飴玉を先生に渡したの?」

「なんでかな? 自分でもよくわからないけど、先生が喜んでくれると思ったからかな」

「命らしいね」

「そうかな?」


 それぞれの教室に入った4人は、授業の準備をしていた。そんな中、風は命に質問をした。質問をされた命は、自分でもよく分からないうちに、飴玉を幸樹に渡したと言った。風は、人の気持ちを感性で汲み取れる命に、さすがだと思った。だが、当の本人は全く気づいていない様子であった。


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