あふたーびーと

百合乃 初絆

31話

〜 〜 〜


 美海がメールを送信してから、日が変わった。

 命は、いつもの通学路を元気よく歩いていると、ふと昨日のことを思い出した。


(そういえば昨日の夜、店長から変なメールが送られてきてたな。あれって、どういう意味なんだろう?)


 命が考え事をして歩いていると、曲がり角から凄い勢いで走って来る者にぶつかった。


「もぉ〜! 朝からなんなのよ!!」

「イテテ、ごめんなさい……考え事してて」

「こっちも、急いで走っていたから、前方不注意だったわ。こちらもごめんな……さい?」

「あれ、黒雪さん!? 今日は車じゃないの!」

「か、神楽坂さん!? どうしてここに」


 まるで少女漫画の展開のようなことが、2人の間に巻き起こった。


(も、もしや……これは運命なのでは? きっと、そうに違いないわ!)

「お嬢様、お待ちください。今日は降り込むと言っていたので、傘を持って行ってください」

「あっ、泉さんも来た! おはようございます〜!」

「これは、お嬢様のご学友の命様。おはようございます」

「むっ!」

(間が悪い時に来てしまったみたいですね……)


 氷菓が、命との運命を感じていると、自身が辿ってきた道を追って、専属メイドである泉が、今日は雨が降るからと言って、傘を持ってきてくれた。傘を持ってきてくれたのは有難いが、間が悪いと、氷菓は目に力を入れて、泉に伝えた。泉は、我ながら間が悪い時に来てしまった、と反省するのであった。そんな2人のテレパシーに気づいていない命は、朝から知り合いに会って嬉しいばかりであった。


「これから、風と姫嶋さんとの待ち合わせ場所に行くんだけど、黒雪さんも一緒にどうかな?」

「わ、私は……」

「お嬢様、ドライバーには、私から連絡を入れておきますので、どうぞご学友たちと行ってください」

「泉……」


 命は、会った勢いで、氷菓も一緒に学校へ行こうと誘った。だが、氷菓は専属のドライバーを待たせているから、と断ろうと思った。だがしかし、泉のナイスフォローのお陰で、氷菓は命たちと一緒に学校へ行けることになった。


「これで、一緒に行けるね!」

「は、はい……不束者ですが、よろしくお願いします」

「もう、今日の黒雪さんは堅苦しいな〜! さぁ、みんなが待っているから、走って行こう!」

「ちょっと、神楽坂さん!?」


 昨日とは違って、命にデレデレな氷菓は、グイグイ押してくる命におんぶされ、風と萌佳が居る約束の場所まで走って行った。


(いつまで経っても、お嬢様は……お嬢様なんですね)


 不器用そうに楽しく笑う氷菓を見て、泉は昔を思い出しながら微笑んだ。


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