あふたーびーと

百合乃 初絆

29話

「き、急になんですか!?」

「まさか、探す前に見つかるなんて……」

「人生ってわからないもんだね〜!」

「はわわわ……!」


 氷菓は、いきなり大声をあげて驚いた美海に、少しドキッとして飛び上がった。そんな様子を見ながら3人は、意外な出来事に興奮していた。


「パンケーキって名前の子なんだよね! ぜひとも、うちのドラくんと一緒に見に行ってもいいかな!」

「話が飛びすぎて、何がなんやら理解できません! この私を助けないさい、泉!」

「了解致しました」


 美海は、氷菓の両腕を自身の両手でがっちりと掴み、瞳をキラキラと輝かせながら、パンケーキに1度会ってみたいと申し出た。氷菓は、グイグイ距離を縮めようとする美海に対して、若干の鬱陶しさを覚えた。氷菓は、そんな状況を打破するために、専属メイドである泉に助けを求めた。


「こちらが、御屋敷の住所になります。休日であれば、どの時間帯で来てもらっても大丈夫ですので」

「まぁ〜ご丁寧にどうも」


 泉は、美海の欲求を満たすことで、氷菓が解放されると考えた。その結果、大人しく美海に屋敷の住所を教えたのであった。


「ハァ……ハァ……。いったい、あの人はなんなのですか! 高貴な私の腕を掴み、鋭い眼で迫ってくるなんて!」

「あれ? この光景、どこかで見たことあるような……?」

「今朝の一件によく似ていますね」

「この町では、どうやら人質をよく取られるみたいだね」


 氷菓が、美海の態度に怒りを示していると、3人が後ろでコソコソと話していた。


(転校初日から、たくさんのお友だちを作る私の野望が、この女のせいで潰えてしまいました。ですが、今日のところは仕方ありません……ここは一度、体勢を立て直すべきです)


 氷菓は、美海の評価を危ない人だと位置づけた。そのような人間と関わることは、己にとって窮地だと思った氷菓は、出直すことに決めた。


「皆様方、不本意ではありますが、今日のところは帰らせていただきます」

「えぇ〜まだまだ一緒に居たいのに!」

「きゅん! ではありません!! これで、失礼します!」

「ご学友の皆様、残りの時間は、3人でお楽しみください」


 慌てて帰る支度を整えた氷菓は、自分は先に失礼することを言った。すると、命の口からは意外な言葉が飛び出した。どうやら、一緒におやつを食べたことで、心の距離が近づいたようであった。このことに名残惜しさを感じながらも、氷菓はモーニングから出て行った。泉は、3人に挨拶をすると、氷菓を追ってモーニングを出て行った。


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