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あふたーびーと

百合乃 初絆

25話

〜 〜 〜


 風は、萌佳を教室まで送り届けると、命と一緒に自分たちの教室に行った。


「はぁ……やっと落ち着ける」

「風ちゃん、お疲れ様」

「本当にお疲れ様だよ」


 席に着くと、風は大きな溜息をした。そんな疲れている風に、命は労いの言葉を送る。そうすると、風はドヨンとした顔で疲れたことを命にアピールした。


「皆さん、席に着いていますね。今日は、突然ですが転校生を紹介します」

「えっ、転校生?」

「そんな話聞いてなかったよね」

「いったい、誰なんだろうね」

「コラコラ、皆さん静かにして! それでは、黒雪さん入ってください」


 教室に幸樹が入って来た。幸樹は、朝礼をする前に、転校生を紹介すると言い始めた。クラスメイトたちは、いきなりのことにテンションが上がり、そこらじゅうでヒソヒソ話が聞こえてくる。そんなクラスメイトたちを静めるように、幸樹は注意をした。教室が静かになると、幸樹は聞き覚えのある名前を呼んだ。


「黒雪? ……そんな、もしかして!?」

「どうしたの風ちゃん? 急に立ち上がって」


 風は、黒雪という苗字を聞くと、先程までの会話が脳裏に過ぎった。ある程度の予想はついていたはずなのだが、いざ現実としてやって来ると、いつも冷静な風であっても、驚きを隠せない様子であった。


「愚民の皆様方、この私……黒雪 氷菓が、南の島からはるばる来てあげましたよ。大きな声援と拍手で出迎えなさい!」


 ポカーン……。


「あの子って、さっきの!?」

「やっぱり、泉さん……そういう事でしたか」


 氷菓の自己紹介は、あまりにも命令形であった。いきなりお嬢様がやって来たクラスは、ポカーンと静まり返り、何をどう言えばいいのか分からない状況であった。しかし、命と風だけは違った。何故なら、先程同じような光景を目にしていたからだ。


「こ、コホン……。それでは、黒雪さんの席は、神楽坂さんの隣になります。神楽坂さん、黒雪さんに色々と学校のことを教えてあげてくださいね」

「は、はい!」


 何の因果か、氷菓の席は、命の隣に決まった。堂々とした態度で近寄って来る氷菓に、命はオドオドしていた。


(あの命がオドオドしている。きっと、今朝起きたことがショックだったんだね……)


 席にカバンを置き、隣に居る命に対して、氷菓はニヤリと笑った。それを見た命は、ガクブル状態であった。あまりにも不審すぎる命に、風は哀れみしか向けられなかった。


「今日から、よろしくお願いしますね。お隣さん」

「こちらこそ、よろしくお願いします!!」


 氷菓に挨拶された命は、きっちりとした姿勢で、挨拶を返すのであった。


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