あふたーびーと

百合乃 初絆

14話

〜 〜 〜


 命と風は、次に萌佳と会う約束の時間までに、荷台に積まれているドラムを回収しておかなければならなかった。

 命は、幸樹と話をつけるために、昼休みを利用して彼女のもとを訪ねた。


「失礼します!!」

「あら、神楽坂さん……それに蜂須賀さん。昼休みに二人が揃って職員室を訪ねるなんて、珍しいわね」

「先生!!」

「ど、どうしたの神楽坂さん!?」


 幸樹が不思議そうな顔で、2人のことを見ていると、命が突然前に出てきて、勢いよく頭を下げた。


「今朝、私から没収した荷台とドラム等を返していただけないでしょうか!! お願いします!!」

「私からも、お願いします」

「ちょっと、二人とも頭を上げて! 職員室に居る他の先生たちが見てるから!」


 命と風は、没収されたドラム等を返してもらうために、全力で交渉しに来た。幸樹は、彼女たちの真剣な姿勢に、少しばかり困惑している様子であった。


「もし、私たちの誠意が足りてないのであれば、こちらを受け取ってください!!」

「これは……ワイロ!?」

「どうぞ、中身を確認してください!!」


 命は、幸樹に銀色の鞄を渡した。いかにも怪しい雰囲気ではあったが、幸樹は恐る恐る中身を確認してみた。すると、そこには透明な袋に入れてある謎の粉が、複数並べられていた。


「これは、数量限定のお試し版なので、思う存分使用してください!!」

「使用できないよ!! なんで先生を薬漬けにしようとしているのよ!! こんな昼間から!!」

「健康になってもらうためです!!」

「悪健康だよ!! こんなもん!!!」


 幸樹は、鞄を命に投げ返した。


「あれ、風ちゃん、さっきと話が全然違うよ……」

「おかしいな。私が聞いた話だと、柏木先生は入浴剤とかの健康グッズに目がないって情報だったんだけどな……」


 命と風は、幸樹に聞こえない声で、コソコソと緊急会議を行った。どうやら、袋に入れられていたものの正体は、入浴剤であった。透明な袋に入れられていた理由は、都内のデパートで無料配布されていたものを、そのまま持ってきたからであった。


「こうなったら、私たちの作戦の全部を先生に伝えるしかない!!」

「命、声が大きいよ」

「先程から、何を二人で話しているんですか? 私も暇ではないので、要件があるのなら、早く言ってもらいたいです」


 命は、回りくどく攻めるよりも、一気に事情を打ち明けた方がいいのではないかと考えた。そんなことも知らない幸樹は、命の行動の真意に気づくことはなかった。


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