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あふたーびーと

百合乃 初絆

11話

「私なんかのせいで、神楽坂さんが待ってないといいんですけど……」

「今日は、逆に遅れた方が良かったかも」

「それは、どういう意味ですか?」


 萌佳は、風に連れられて、命の居る場所まで来た。風は、ここで何が起きるのか萌佳に伝えていないようで、彼女の頭にははてなマークが浮かんでいた。


「もぉ〜二人とも来るなら連絡ぐらいしてよ〜!」

「白々しい演技ね。でも、間に合って良かった」

「風が時間を稼いでくれたお陰で、何とか運べたよ!」


 風は、命の姿が見える場所まで来ると、彼女が約束通りに動けていたことにほっとした。


「な、ななな、なんですか……これは!?」

「驚いたでしょう! これは、家から運んできたmyドラムだよ!」


 萌佳は、風と命が話している様子を後ろから見ていた。すると、命の後ろに何か大きな物があることを発見した。

 命は、昨日の夜に風と考えた作戦であるドラムを荷台に乗せてやって来る、を決行した。作戦が成功したかは分からないが、萌佳はただただ驚いていた。


「この荷台、ドラムの全装備が乗せられています……」

「姫嶋さんに、どうしても私たちの音楽を聴いてもらいたくて、学校に持って行こうと思ったんだ! 驚いてくれているなら、作戦の第一段階はクリアだね!」

「規格外すぎますよ!」


 萌佳は、荷台をぐるりと回ってみた。そこには、ドラムの性能を遺憾無く発揮するための装備が、余すことなく詰め込まれていた。

 朝から無茶をしたのに、あっけらかんと笑っている命に対して、萌佳はツッコミを思わず入れた。


(本当に良かったね、命。姫嶋さんは、ちゃんと命のドラムを見てくれているよ)


 風は、萌佳が音楽の話を避けていたことに気づいていた。だからこそ、昨日の夜に命へメールを送り、彼女の本心を丸裸にするために作戦をともに考えた。作戦が上手くハマった様子を見て、風は感慨にふけっていた。


「あぁ! お喋りしてたら、もうこんな時間になっちゃった! 早く学校に行かないと遅刻しちゃうよ!」

「本当だ。じゃあ、そろそろ行こうか」

「お、お二人とも待ってくださいよー!」


 命は、腕時計を見て、学校へそろそろ行かないと遅れることを言った。そうすると、風は命が持ってきた荷台の後ろを押しながら、早く学校へ向かおうとした。そんな2人について行こうと、萌佳は必死に後ろくっついて来るのであった。


「それじゃ、学校へGO〜!!」


 命の合図で、3人は歩き出した。昨日のぎこちない空気は、今の3人には見られなかった。


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