あふたーびーと

百合乃 初絆

06話

〜 〜 〜


(嫌な空気だ……)


 風は、命に誘われて猫カフェに行くことになった。もちろん、萌佳も同行しており、予定通り3人で行動していた。

 命と萌佳は、付き合いたてのカップルのように会話が特になく、どこかぎこちない様子で歩いていた。その空気感に、思わず風も微妙な感情を抱いてしまった。


「そういえば、姫嶋さんに私たちのことをまだ知ってもらってなかったね!」

「どうしたの……突然?」

「いや〜仲良くなるためには、相手に自分たちのことを知ってもらうことが重要かな〜って思ったの!」

「これまたストレートな発想だね。でも、間違いではない。具体的に、何を話すの?」

「そ、それは〜」


 命は、思い切って話し始めた。どうやら、自分が誘った手前、気まづい空気になっているのが嫌だったらしい。だが、思い切りで始めた会話のせいか、特に何を話すかは決めていない様子であった。


「あ、あの……失礼でなければ、お二人が担当している楽器について教えてもらえませんか」

「ありゃ、まだそんな大切なことも言ってなかったけ? なら、改めて言うべきだね! この私、神楽坂 命は、ドラムを担当しています! 音楽教室とかにも通っていて、知識や技術はそれなりにあるよ!」

「こう見えて、ドラムを小さい時からお父さんに教わってたみたいで、それなりとか言っているけど、実力はかなりのものなんだよ」

「そ、そうなんですか」


 萌佳は、命がドラムをやっていることを知ると、何やら彼女の性格について納得した様子だった。


「そして私、蜂須賀 風は、ベース担当だよ。私も命と一緒で、小さい時から音楽教室に通っていて、そこでベースを教えてもらっていたの。命とは、音楽教室で何度も組まされていて、高校に入ったらバンドを結成しようって言い合ってたの」

「とても素敵な関係ですね。憧れます」


 萌佳は、クールな雰囲気を持つ風のことを知ると、憧れの眼差しを向け、心の底から尊敬の念を持った。


「私たちのことについては、だいたいこんなものかな。次は、姫嶋さんのギターについて知りたいんだけど、いいかな?」

「わ、私ですか!? ひ、暇つぶし程度のお話になると思いますが、それでもよければ聞いてください」

「うん、分かった」


 風は、上手い具合に萌佳の懐に迫った。萌佳のことを焦らせないように話運びをする風は、いつもの数倍頼もしく感じた。


「私は、四歳の頃から、ギターを弾いていました。誰に教わることもなく、我流で引き続けていました。ですが、六歳の誕生日を迎えた日、私の家のお隣に、とてもギターが得意なお姉さんが引っ越してきました。私は、お姉さんのギターへの好奇心から、よくお家へ遊びに行っていました。お姉さんはとても優しくて、私にギターのことを沢山教えてくれました。お二人のような、同期の音楽友達はいませんが、私も小さい時からギターを教えてもらっていました」


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