エデン・ガーデン ~終わりのない願い~
7
「離してください、ティエル様!」
走り出したティエル。その時、ティエルはリンの手を引いてきていた。
「頼む、リン。俺に手を貸してくれ」
足は止めずに言う。
「嫌です」
しかしリンは静かに答えた。
「私は、犯人はエヴィ・F・エンドレスだと思っています」
それにティエルは足を止めてリンを見る。
「リン……」
喉から絞り出すように声を出すとリンは泣きそうな顔をした。
「ティエル様は資料を見てお気づきになられなかったのですか!?」
叫び声は廊下に反響する。
「この事件は! 彼女が、エヴィ・F・エンドレスが、目覚めてから起き始めているんですよ!?」
その瞬間、ティエルの手に焼けるような痛みが走った。咄嗟に手を離す。
「それだけではありません。ティエル様も証言していたではないですか。現場で指を鳴らす音を聞いたと! それと、彼女の魔法……っ」
リンはぎゅっと自分の手を掴むと、ぎゅっと唇を噛んだ。
そして、ふるふると力なく首を横に振る。
「彼女が犯人じゃない理由が、私にはわかりません。どうして、ティエル様もケーイ様も、彼女をそこまで信じるのですか……」
リンは初めて会った時からエヴィを疑っていた。そして、ティエルはそれも当然の反応だと思っていた。
だから、注意はしても信じることを強要しようとは思っていなかった。
きっとこれから交友を持つことでその疑いも晴れるだろうという思いがあったのだ。
でも、それはもう期待できない。
「ケーイはわからないけど、俺は信じるって決めたから。それ以外にないよ」
ティエルは納得してはもらえないだろうと思いながら口を開いた。
「確かにリンの言う通り、エヴィが犯人の可能性だってある。エヴィが犯人じゃないって証拠がないからな。でも、逆にエヴィが絶対に犯人だって証拠もないんだよ」
理屈も何もあったものではない。それでも、口を閉じることは出来なかった。
「それをはっきりさせるためには、リンは力が必要なんだ」
「ケーイ様の代わりとして、ですか……」
苦虫を噛み潰したような顔をしながらリンは呟く。
「?」
突然出てきたケーイの名前にティエルは怪訝そうに眉を寄せた。
「確かにケーイが居てくれれば心強いけど。違うよ。俺はリンにしかできないことを頼みたいんだ」
しかし、すぐに口調を改めて、真剣な表情をする。
「乗り気じゃないっていうならこうしよう。俺はエヴィが犯人じゃない証拠を探すために行く。リンはエヴィが犯人だって証拠を探せばいい。どっちにしても証拠は探さないといけないんだから。それなら、良いだろ?」
頼む、とティエルは頭を下げた。深く、深く。
「……わかりました」
すると俯いたリンが震える声で言った。
「本当か!?」
顔を跳ね上げる。
「はい」
頷いたリンは顔を上げると両手を目に押し当てた。そこからじゅうっという音が上がる。
「っ、リン!?」
驚いたティエルは思い切りそう叫んだ。
すると目から手を離したリンがじっとティエルを見る。目には見た限りではなんの異常もない。ただ、目の周りが泣いた後のように僅かに腫れて少し赤くなっていた。
「協力するにあたり、これだけは言わせてください」
リンは少しむくれたような声で言う。それと同時にずいっとティエルに近付いた。
すぐに目の前まで来たリン。灼けるように熱い手がぎゅっとティエルの手を握った。
「え……?」
戸惑うティエルをよそに、リンの顔がどんどんと近づいてくる。
そして――
「ばか」
リンはティエルの耳元でそう囁いた。
「へ?」
囁いたと思った時には、もうリンはティエルの後ろにいる。
「そうと決まれば、早くしましょう。善は急げと言いますし」
さっきの不機嫌さはどこへ行ったのか。振り返った時にはリンはいつもの固い口調に戻っていた。
走り出したティエル。その時、ティエルはリンの手を引いてきていた。
「頼む、リン。俺に手を貸してくれ」
足は止めずに言う。
「嫌です」
しかしリンは静かに答えた。
「私は、犯人はエヴィ・F・エンドレスだと思っています」
それにティエルは足を止めてリンを見る。
「リン……」
喉から絞り出すように声を出すとリンは泣きそうな顔をした。
「ティエル様は資料を見てお気づきになられなかったのですか!?」
叫び声は廊下に反響する。
「この事件は! 彼女が、エヴィ・F・エンドレスが、目覚めてから起き始めているんですよ!?」
その瞬間、ティエルの手に焼けるような痛みが走った。咄嗟に手を離す。
「それだけではありません。ティエル様も証言していたではないですか。現場で指を鳴らす音を聞いたと! それと、彼女の魔法……っ」
リンはぎゅっと自分の手を掴むと、ぎゅっと唇を噛んだ。
そして、ふるふると力なく首を横に振る。
「彼女が犯人じゃない理由が、私にはわかりません。どうして、ティエル様もケーイ様も、彼女をそこまで信じるのですか……」
リンは初めて会った時からエヴィを疑っていた。そして、ティエルはそれも当然の反応だと思っていた。
だから、注意はしても信じることを強要しようとは思っていなかった。
きっとこれから交友を持つことでその疑いも晴れるだろうという思いがあったのだ。
でも、それはもう期待できない。
「ケーイはわからないけど、俺は信じるって決めたから。それ以外にないよ」
ティエルは納得してはもらえないだろうと思いながら口を開いた。
「確かにリンの言う通り、エヴィが犯人の可能性だってある。エヴィが犯人じゃないって証拠がないからな。でも、逆にエヴィが絶対に犯人だって証拠もないんだよ」
理屈も何もあったものではない。それでも、口を閉じることは出来なかった。
「それをはっきりさせるためには、リンは力が必要なんだ」
「ケーイ様の代わりとして、ですか……」
苦虫を噛み潰したような顔をしながらリンは呟く。
「?」
突然出てきたケーイの名前にティエルは怪訝そうに眉を寄せた。
「確かにケーイが居てくれれば心強いけど。違うよ。俺はリンにしかできないことを頼みたいんだ」
しかし、すぐに口調を改めて、真剣な表情をする。
「乗り気じゃないっていうならこうしよう。俺はエヴィが犯人じゃない証拠を探すために行く。リンはエヴィが犯人だって証拠を探せばいい。どっちにしても証拠は探さないといけないんだから。それなら、良いだろ?」
頼む、とティエルは頭を下げた。深く、深く。
「……わかりました」
すると俯いたリンが震える声で言った。
「本当か!?」
顔を跳ね上げる。
「はい」
頷いたリンは顔を上げると両手を目に押し当てた。そこからじゅうっという音が上がる。
「っ、リン!?」
驚いたティエルは思い切りそう叫んだ。
すると目から手を離したリンがじっとティエルを見る。目には見た限りではなんの異常もない。ただ、目の周りが泣いた後のように僅かに腫れて少し赤くなっていた。
「協力するにあたり、これだけは言わせてください」
リンは少しむくれたような声で言う。それと同時にずいっとティエルに近付いた。
すぐに目の前まで来たリン。灼けるように熱い手がぎゅっとティエルの手を握った。
「え……?」
戸惑うティエルをよそに、リンの顔がどんどんと近づいてくる。
そして――
「ばか」
リンはティエルの耳元でそう囁いた。
「へ?」
囁いたと思った時には、もうリンはティエルの後ろにいる。
「そうと決まれば、早くしましょう。善は急げと言いますし」
さっきの不機嫌さはどこへ行ったのか。振り返った時にはリンはいつもの固い口調に戻っていた。
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