私の主は魔法使い
2
「半分に分けた方が良かったんじゃねェか?」
途中まではひかるさんの風魔法を使って空を行き、獣道に入ってから私達は歩き始めました。
長時間魔法を使っていたはずなのにひかるさんは顔色一つ変えていません。
そんな彼が唐突にそう仰りました。
「へ?」
山道は足場が悪く、私は転ばないように慎重に進んでいました。そのため、前を向いた途端に足を木に取られて素っ頓狂な声を上げてしまいます。
するとそのまま転びそうになった体をいつの間にか近くに居たひかるさんが抱き止めてくださいました。
「荷物、半分にした方がよかったじゃねェの?」
その体勢のまま同じことを繰り返してくださいます。
すぐ近くで囁かれる低い声。自然と体温が上昇します。
それを悟られたくなくて慌ててそこから抜け出しながら私は首を横に振りました。
「い、いえ、ひかるさんにこんな物を持たせるわけにはいきませんから、これで良いんです」
そして守るようにリュックサックの肩紐に手を掛けます。
ひかるさんの助手として、私が出来るのはせいぜい傷の応急処置と雑用ぐらいです。ですから、荷物を持つのは私だけで良いのです。その方がひかるさんも動きやすいでしょう。
「お前は良くても俺は良くねェよ」
けれどひかるさんはそう言って私の体をひょいっと持ち上げました。
厳密には私の背負っているリュックを取り上げようと持ち上げたところ、私も一緒に持ち上がったのでしょうが。
「ちょっ!?」
「おも……」
じたばたと暴れる私にひかるさんが一言仰いました。
レディを持ち上げながらなんてことを言うのでしょうか、この人は。
「降ろしてください!」
「ならリュック降ろせよ」
「降ろしてくれないと下ろせませんよ! 落ちろと!? 落ちろと言うのですか!?」
大袈裟に騒ぎ立てるとひかるさんはようやく鬱陶しそうに降ろしてくださいました。
私も渋々リュックをひかるさんにお渡しします。
「行くぞ。転ぶなよ」
ひかるさんはリュックを軽々しく背負い、険しい獣道を歩き始めました。重いってさっきは言ったのに、今度は言わないっていうのはどういうことなんでしょうかね。
身軽になった私は「気をつけます」と小さく呟き、仕事を取られてしまったことを残念に思いつつひかるさんの後を懸命に追いかけます。
しばらく歩いていると、湖畔に出ました。どうやらここが目的地であるアトバ湖のようです。
山奥にあるからでしょうか、近付かなくても湖底が見える程に水が澄んでいます。
「相変わらずだな。このままでも飲めそうだ」
近くの木の根元に荷物を降ろしながらひかるさんは言います。
「神の加護がついた水ですよ? 何が起こるかわからないので飲んじゃダメです」
「わかってるよ。……でも、聞いた話じゃ川の上流だったら飲んでも問題ねェらしいな」
「それって湖に来るまでの間で神聖を帯びるってことですか?」
「さあな。でもここは神の土地だ。何が起きたって不思議じゃねェよ」
言ってひかるさんは小さく笑いました。同時に私の頭を軽くぽんぽんと撫でます。
「さて、広いからな、手分けして探すぞ。俺はこっち、お前はあっちに行け。あんまり遠くにいくなよ」
「はい、お気をつけて」
私は小さく頷くと、ひかるさんに言われた方へと歩き始めました。
途中まではひかるさんの風魔法を使って空を行き、獣道に入ってから私達は歩き始めました。
長時間魔法を使っていたはずなのにひかるさんは顔色一つ変えていません。
そんな彼が唐突にそう仰りました。
「へ?」
山道は足場が悪く、私は転ばないように慎重に進んでいました。そのため、前を向いた途端に足を木に取られて素っ頓狂な声を上げてしまいます。
するとそのまま転びそうになった体をいつの間にか近くに居たひかるさんが抱き止めてくださいました。
「荷物、半分にした方がよかったじゃねェの?」
その体勢のまま同じことを繰り返してくださいます。
すぐ近くで囁かれる低い声。自然と体温が上昇します。
それを悟られたくなくて慌ててそこから抜け出しながら私は首を横に振りました。
「い、いえ、ひかるさんにこんな物を持たせるわけにはいきませんから、これで良いんです」
そして守るようにリュックサックの肩紐に手を掛けます。
ひかるさんの助手として、私が出来るのはせいぜい傷の応急処置と雑用ぐらいです。ですから、荷物を持つのは私だけで良いのです。その方がひかるさんも動きやすいでしょう。
「お前は良くても俺は良くねェよ」
けれどひかるさんはそう言って私の体をひょいっと持ち上げました。
厳密には私の背負っているリュックを取り上げようと持ち上げたところ、私も一緒に持ち上がったのでしょうが。
「ちょっ!?」
「おも……」
じたばたと暴れる私にひかるさんが一言仰いました。
レディを持ち上げながらなんてことを言うのでしょうか、この人は。
「降ろしてください!」
「ならリュック降ろせよ」
「降ろしてくれないと下ろせませんよ! 落ちろと!? 落ちろと言うのですか!?」
大袈裟に騒ぎ立てるとひかるさんはようやく鬱陶しそうに降ろしてくださいました。
私も渋々リュックをひかるさんにお渡しします。
「行くぞ。転ぶなよ」
ひかるさんはリュックを軽々しく背負い、険しい獣道を歩き始めました。重いってさっきは言ったのに、今度は言わないっていうのはどういうことなんでしょうかね。
身軽になった私は「気をつけます」と小さく呟き、仕事を取られてしまったことを残念に思いつつひかるさんの後を懸命に追いかけます。
しばらく歩いていると、湖畔に出ました。どうやらここが目的地であるアトバ湖のようです。
山奥にあるからでしょうか、近付かなくても湖底が見える程に水が澄んでいます。
「相変わらずだな。このままでも飲めそうだ」
近くの木の根元に荷物を降ろしながらひかるさんは言います。
「神の加護がついた水ですよ? 何が起こるかわからないので飲んじゃダメです」
「わかってるよ。……でも、聞いた話じゃ川の上流だったら飲んでも問題ねェらしいな」
「それって湖に来るまでの間で神聖を帯びるってことですか?」
「さあな。でもここは神の土地だ。何が起きたって不思議じゃねェよ」
言ってひかるさんは小さく笑いました。同時に私の頭を軽くぽんぽんと撫でます。
「さて、広いからな、手分けして探すぞ。俺はこっち、お前はあっちに行け。あんまり遠くにいくなよ」
「はい、お気をつけて」
私は小さく頷くと、ひかるさんに言われた方へと歩き始めました。
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