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僕のお姫様

七島さなり

日々に微笑う

 堂抜咲麻が科学部に顔を出すと、抜け殻のような科学部員達が彼を出迎えた。
 誰に何を聞いても「うー」とか「あー」としか返ってこないため、堂抜は黙々と作業に没頭する部長に声をかける。
「みんなどうしたの?」
「ん? ああ。彼女に振られたらしい」
 部長の声はどこか淡々としていた。
 興味がなさそうに部員達を一瞥してからまた自分の作業に没頭する。
「振られた?」
 しかし堂抜が改めてそう問いかけるとゆっくりとこちらに向き直った。
「薬の効果が切れたのだろう。それはひどい振られ方をしたらしい。居場所がなくここに来てはいるが、あの通り死に体だ」
 それを聞いてなるほど、と一人納得をする。
「部長はなんだか面白くなさそうだね?」
 堂抜としては科学部がなくなる心配はなさそうだと安心したところだったけれど部長はどこか不満げだ。
 そしてやっぱり不愉快そうに鼻を鳴らして腕を組む。
「当たり前だ。薬は奪われた挙げ句、効果がすぐ切れるような失敗作だった。改良を重ねたくともそれも叶わないとは……っ」
 ぶれないその姿勢に堂抜はあははと乾いた笑い声を上げた。
「……しかし、やはり小細工などしない方が良いということか?」
「え?」
「会長を落としたのだろう? 俺の薬に頼らずに」
 悔しげにそう呟いた部長。堂抜は自虐的な笑みを浮かべる。
「助けられはしたよ」
「?」
 不思議そうな顔を向けられたので曖昧に笑って誤魔化した。
 すると部長は少し口をへの字に曲げてから諦めたように「まあ、いい」と辛うじて生きている部員たちの方を見る。
「お前達、腑抜けてる暇があるなら咲麻から彼女の作り方でも盗めばどうだ?」
 するとその一言にゾンビのように部員達が立ち上がった。
 その様にぞくりと堂抜は背筋を震わせた。嫌な予感がする。
「かの、じょ……?」
「かっぷる? いいな」
「うらやましい……」
 うわ言の様にそう繰り返しながらジリジリと近付いてくる部員達。
「ひっ」
 堂抜は短い悲鳴を上げると逃げるように廊下へ飛び出した。
「待てぇッッ」
 と追いかけてくるゾンビ。
 駆け出した先には見回りの途中で出会ったのだろう。談笑する姫野凉那と宮間花楓の姿があった。
 花楓はこちらに気付くと表情を一変させて「廊下は走るな!」と恫喝の声を上げる。
「ごめんなさい!」
 堂抜の謝る声とゾンビの悲鳴。
 そして、微かに響く、凉那の笑い声。
 こうして今日も、日々は過ぎていく。

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