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僕のお姫様

七島さなり

3.友達

 花楓と凉那はしばらく黙ってお互いを見つめ合っていた。
 その沈黙は重く、思わず堂抜と一ノ瀬も息を止めてその行方を見守る。
「一ノ瀬にここに呼ばれたんだけど……花楓も?」
 先に口を開いたのは凉那だった。言ってからきょろきょろと視線を彷徨わせる。
「ち、ちが、くて」
 ようやく口を開いた花楓の声は酷く消え入りそうだ。
「私が頼んで、呼んでもらったの」
「花楓が……?」
 そこでようやく凉那は花楓の様子がいつもと違うことに気付いたのか、眉を寄せて数歩ほど近付く。
「何かあった?」
 もう少し近付けばお互いに触れられそうな距離。
 凉那は遠慮しているのか、それ以上は花楓に近付こうとはしない。
「どうしても、言いたいことが、あって」
 凉那は何も言わずに続く言葉を待っているようだった。
 深呼吸を一つ。そして花楓は真っ直ぐ前を見据えた。
「今まで、ごめんなさい」
 小さく呟かれた言葉に凉那は目を見開く。
「私、一人になりたくなくて……、凉那のこと、縛り付けて、たくさん苦しめた。謝って許される事じゃないけど、本当に、ごめん。ごめんなさい……っ」
 深く頭を下げた。落ちた雫が床を濡らす。
「本当はもっと早く伝えなくちゃ、いけなかったのに……!」
 その姿を凉那はしばらく見つめていた。伸ばした手が宙を彷徨う。
「花楓が……」
 しかし意を決したように、花楓に近付くとそっとその肩に触れた。
 花楓はびくりと体を震わせて凉那を見る。
「花楓が謝る事は、一つもない」
 言葉を探すように辿々しく紡がれる言の葉。
「でも……っ!」
「花楓は何も悪くない」
 否定しようとする花楓に凉那は食い気味で言う。
「高校に入ってから、わかったことがたくさんあるんだ」
 その目元がふっと和らぐ。かつての凉那では考えられないような柔らかい表情。
「私は花楓に甘えてばかりで、色んなものと向き合って来なかったってことも、その一つ」
 その顔を見て花楓の頬をまた涙が伝った。
「だから、謝るのは私の方だ」
 震える手を両手で包み込みながら凉那は言う。
「いつも私の側にいてくれて、守ってくれてありがとう。花楓が辛い時、助けてあげられなくてごめんなさい……」
 ぼろぼろとこぼれ落ちる涙を拭う事もせず花楓は「す、ずな……っ」と肩を震わせる。
 凉那は鞄からハンカチを取り出すとその目元にそっと当てた。
 花楓は震える唇、喉を、懸命に動かして嗚咽交じりに言う。
「わ、わたし……っ」
「うん」
「また、凉那と仲良く、普通に話せる友達に、なりたいっ……!」
「私も、花楓と友達になりたい」
 間髪入れずに返ってきた返事。今度こそ花楓は声を無くして泣き出した。
 凉那は花楓が泣き止むまでその涙を拭う。
 その瞳にも僅かに涙が溜まっていた。

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