どうやら主人公はお節介が過ぎるようだ

ミルクプリン

1章 子供が寝てから

    ルーヴェルトが寝た後のことだ。ろうそくの灯りが細々と部屋の輪郭を映す。

「エイナ。僕は君に話しておかなくちゃならないことがある。」

「急にどうしたんですか?」

「僕が二ヶ月もの間帰ってこれなかった理由はこの家の当主になったからなんだ。」

「あら!    よかったじゃありませんか。」

    エイナは喜ぶがハイネマンの表情は暗いままだ。少しの間ルーベルトの寝息だけがいろのない部屋に刻まれた。


「僕も嬉しかったさ。でもね、この家に借金があるとは知らなかったんだ。父上も最後の最後まで黙っていたし、今思えば欲まみれの兄がこんな簡単に当主の座を明け渡すはずがなかったんだ。僕達以外もうこの屋敷にはいない。僕達をおいて夜逃げされたよ。王都の屋敷はもぬけの殻だった。王宮に行く継承の合間に闇金に行って話をつけてきた。丁度、半年以内に立ち退くか、耳揃えて全額払わなきゃならない。」

「どのくらいなんですか?」

「残り一億トロ」

    それは実に一般的な国民の二十一年分の稼ぎに該当する。

「い、一億!」

    それはもう驚くしかなかった。男爵の爵位の貴族は王から年に五十万トロ支給される。全て使わずに支払としても二百年近くかかってしまう。実際そんなの不可能だ。

「返済方法は今のままではなにもない。一晩。一晩じっくり考えて欲しい。僕は残らなきゃいけない人間だからここに残る。父上が勝手に結んだ契約が僕に移ってしまったんだ。でも君はそうじゃない。生まれたばかりのその子と自由にいきられる。よく、考えてくれ。」

    それだけ言うってハイネマンは部屋から出ていった。

    部屋に子と残されたエイナはそれでもハイネマンに着いていこうと決めていた。その上でこの煉瓦レンガで作られた二階建ての見栄を張った家も返済のために差し押さえられるんだなと少し寂しい思いになる。

    エイナが嫁いできて一年と少ししか暮らしていない家だけれども、それでも、愛着はある。何度も行き来した廊下。少し狭くて埃っぽい一部屋一部屋だけれども、離れがたいものがある。

    それでも、ハイネマンさんと今はこの子ルーヴェルトがいればいい。そうすれば何度でもやり直せる気がした。まあ、暫くの目標はこの家を買い戻すことかな。









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